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107.新世代魔導具1―ナノマシン

「ナノマシンですか? それを魔術で?」と正明が聞き返した。

「なのましん? ってなんですか?」とミラーディア。アイーダも、何それという表情だ。



 史郎と話をしているのは、魔導具開発グループと自分たちで呼んでいるグループ、つまり、アイーダ、ミラーディア、正明の三人だ。


 アイーダは本来の専門が魔法陣と魔導具なので、ぜひ史郎と議論がしたいと参加。


 ミラーディアは王女でありながら、上級ポーションの作成ができる創薬士のライセンスを持つのだが、史郎にポーションは魔導具の一種だと聞いて、魔導具に興味を持ち始め、参加。


 正明はもともとファンタジー魔導具に興味を持っていたし、地球にいた時には史郎にあこがれていた。この三人は魔導具話で盛り上がり、自然とグループが作られたのだ。



 今日は、史郎の魔導具作成の様子を見に来ているのだ。


 もちろんミトカ、シェスティア、琴音は常に史郎といっしょにいる。


 美鈴と真琴はそれぞれ別の場所で訓練を続けている。エミリア、アリア、アルバート、スティーブンもそちらのグループだ。




「ああ、ナノマシンというのは、まあ、ある意味科学ファンタジーと言うべきか、俺がそう呼んでいる物の魔術版だが、要は、非常に小さい、分子レベ……、いや、それこそ粉末のひとつひとつの粒のような大きさの、機械だな」と史郎は説明した。


 この世界の人間には、まだ、分子という概念が知られていないので、簡単な言い方に直す史郎だった。


「で、精霊魔術は知っているか?」と史郎は聞いた。


「はい、それは分かります。精霊と呼ばれる存在にお願いして、精霊に魔術を発動してもらう形の魔術ですね」とミラーディアが答えた。そうそう、とアイーダ。



「そうだ。ここで、俺が作ろうとしているのは、ウイルス除去のためのナノマシン、だ。でだな……」と史郎は言い、説明を続ける。



 エンティティ化された物は、大きさの概念が外れた性質を付加できる。なので、粉末に対して、プロトタイプ書き込みで、魔術式を埋め込むというようなことができる。


 大きさは1ミクロン単位以下。赤血球より小さい。体内に入って、サーチ&デストロイのウイルス除去が目的だ。透明化パラメーターで、抗原抗体反応を引き起こさずに、体内を巡回できる。


 付加する魔術は、たとえば、パターンに一致するウイルスを見つけ、そのDNAを破壊し、除去する。お互いにぶつからないように移動、見つからなくなったら終了して戻るとする。というようなコードだ。


 そして、それらを制御する精霊を作り、精霊魔術によって、精霊に魔術を行使してもらう。制御は階層化することによって分散化する。



「つまりは、外部精霊魔術による、大規模HLSL精霊魔術実行システムの、名付けて、『外部精霊大規模精密HLSLモジュール』というものだ。パーティクルエンジンともいう」と史郎は言った。


「史郎先輩、それって結局粉末の粉、一粒一粒で精霊が魔術を発動するということですか?」と正明が簡潔にまとめた。


「なるほど」とミラとアイーダがうなずく。


「……そうだな。うまくまとめたな。 ……あー、これの制限は、シンプルな魔術に限るってとこかな?」と史郎は答えた。


「で、具体的に言うと、これが、腕輪型管理コアだ。大本(おおもと)の制御だな。そして、これは、5つの実行コアによる【高度精霊魔術言語実行環境】と【神術超精密魔力操作】の自立起動が可能だ。実行コアあたりの精霊の数16384。この特殊精霊一つあたりの魔術発動は1024。つまり、実行コア一つあたりのパーティクルの数は16777216、約1600万のパーティクルが、単純処理ではあるが魔術を起動できる。そして、これを最大5つ。約8億のウイルス除去の処理を、使用者の魔力消費なしで行える」


 聞いていた正明とミラ、アイーダは、よくわからないながらも、すごいのだという表情をした。


「ちょっと、簡単なデモといこう」


 そう史郎は言うと、腕輪が光だし、無数の光の粒があふれ出す。そして、周りに光の粉が帯状に広がり、幻想的な雰囲気を醸し出した。


「きれい」とシェスティア。


「おー、これはすごいですね。ここまでの数、光のひとつひとつが魔術発動ですか?」と正明が聞く。


「そうだ。ひとつひとつが簡単なライト・ボールを発動している」と史郎。


「この術を論文にするだけで、博士号が3つほど取れる」とアイーダ。


「さすが使徒様。素晴らしいです」とミラーディアはうっとりとした表情でデモを眺めた。



「HLSLで記述できる程度の処理のみだが、超並列処理が可能。時代は超分散処理の時代だよ!」と史郎はうれしそうに話すのであった。


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