8 1日目―秘密
「あっつ!・・うん、まあまあだな」
見た目とは裏腹にアルマンは豪快に魚に齧り付いている。
「食べられないこともないし、贅沢も言ってられないからね」
[俺様にもくれ!]
ルタが欲しがったので、一番小さい魚を渡してあげた。
アルマンとウィリアムスの2人は、文句を言いつつも食べる手を止める様子はない。
魚の骨に注意しながらゆっくりと食べていく。美味しいがやはり塩ぐらいは欲しいところだ。
串に刺した魚は1人2匹ずつ食べられる数を焼いていたが、みんなお腹が減っていたのか、すぐ食べてしまった。
「こっちの香草焼きも食べてみましょうか」
大きな葉の包みを開くと、爽やかないい匂いが充満する。
「お、いい匂いするじゃん!いただきー!・・・うん、ウマイ!」
アルマンは体型に似合わず結構な量を食べるのか、どんどん胃の中に収まっていく。
「うん、これはまあまあかな」
「・・・・・・・・」
ウィリアムスもまずいとは思っていないのかどんどん食べ進めていく。
ドーキンスは何も言わないのでどう思っているか分からないが、みんな満足してくれているようだ。
(時間がそれほど経ってないからまだ分からないけど、多分人にに悪影響を与える野草は入ってないみたい・・・)
もちろんそんな事は口にはせず、みんなが食べるのを確認してから自分も手をつける。
こんなこと知られたら殺されそうだな、なんて思いながら自分も食べてみると、特にえぐ味や苦味を感じる野草はなかったらしく、野草と絞った酸っぱい果汁、魚のおかげで良いダシがでている。
魚の臭みも消えており、とても食べやすい。
[なぁエイダ、そっちも食べていいか?]
「いいけど。数がないから半分こだからね」
私はそろそろお腹がいっぱいになってきたので、フォークで骨を取り残りをルタに渡す。
[そこら辺のモンで作ったにしては上出来だな]
気に入った味だったらしく、ルタは勢いよくどんどん食べていく。
「あとは明日の朝に残しておきましょうか。ウィリアムスさん、鍋って作れますか?残りの魚を使ってスープでも作ろうと思いまして・・・」
「もちろん作れるけど。スープにするならスープを入れる容器も必要だよね、あとスプーンも。ちょっと待って」
魚の香草焼きは4人で分けられるように魚を8匹使って作っていたので、3人が2匹目を食べる前に手を止めさせる。
ウィリアムスは食べ終わったあと杖を手に取り軽く振ると、どうやら蔦の下の土から必要な元素を取り出して、先ほどまではなかった鍋をどんどん形成していく。
あっという間にできた両手鍋はフタまで作ってくれている。
そのあともスープボウルとスプーンも作ってくれたが、5個ずつ作ってくれていてルタの分も用意してくれた。
「ありがとうございます。助かります」
魚にはもう火が通っていて今から煮込む必要はないので、魚と魚から出た煮汁を鍋に移す。
煮汁は味が良かったのでスープにしても美味しいだろう。
明日の朝に水を足して煮込めばいいので、とりあえず今日はこのまま鍋にフタをして端の方に寄せておく。
食事が終わりひと息つくと、急に眠気が襲ってくる。
今日は朝から休む暇もなくここまで来たので疲れたようだ。
[どうしたエイダ?眠いのか?]
「そうみたい・・・・あの、みなさん、すみませんが今日は疲れたので先に寝ます。何かあればルタが対応するのと思うので・・・・」
「はあ!?ちょっ!」
アルマンが何やら不満げな声を発しているが、私は靴を脱ぎ、眠るためにお尻に敷いていたタオルを広げ、体にかけて横になる。
タオルは体全体を覆う大きさはなく足が出てしまっているが、寒くないので気にはならない。
近くにあったリュックを引き寄せ、まくら代わりにして瞼を閉じるとすぐに眠りに就いた。
―――――
「・・・・こいつ、まじで寝やがった。てか寝るのはえーな」
アルマンがエイダの顔を覗いてみると瞼はしっかり閉じており、すやすやと眠っている。
「まぁいいんじゃない?それを召喚し続ける限りは魔力もずっと消耗している状態だろうし、疲れてたんでしょ」
ウィリアムスはエイダの傍にいるルタームを見ながらそう言い放つ。
[まぁな。エイダはそれなりに魔力は高いけど今日はずっと歩きっぱなしで休んでなかったし、バンを呼び寄せるために俺様が転移魔法を使ったりで疲れてたんだろ。こうなったらエイダは朝まで起きないからな]
「なんだか珍しいよね。普通は本人が召喚すればいいのに、君が魔法を使って呼び寄せるっていうのは」
[エイダは魔力はあっても使うのは下手クソだからな。というか全く使えねえ。だから俺様が代わりにエイダの魔力を使って、召喚魔法で呼び寄せてるってわけよ。エイダは契約してる俺なら召喚できるけど、幻獣のバンとは契約してないから召喚魔法で呼べれないってことだ。もちろん転移魔法なんてもってのほかだ、使えるわけがねえ]
「なるほど、おもしろい関係だね。それに君はただの"ピクシー"じゃないだろう?普通のピクシーは簡単な魔法は使えても転移魔法なんて高度な魔法は使えないはずだ。それに君は呼べるのに他の魔法が使えないっていうのもおかしいよね?なんで?」
[・・・それは俺様が超天才的なピクシーだからだ!そこら辺にいるのと一緒にされてもな。格が違うってもんよ。エイダはまぁ・・・ちょっと変わったやつなんだよ。てか時間はまだ早いけど、お前らもさっさと眠らなくていいのか?オーガの奴ら、いつ襲ってきてもおかしくねーんだから休めるうちに休んどけよ]
「なんかはぐらかされた気がするけどなぁ。何か隠してるよね?・・・まぁ、僕に害がなければ別にいいんだけど。君の言うとおり、確かにあと2日試験はあるし、休めるときに休んだほうがいいかもね」
「さすがにオーガの気配が近くにきたら分かるだろうし俺も寝るわ。もしオーガが近くに来て、まだ寝てたら起こしてくれよ」
アルマンがそう言いながら横になる準備をする。
「もし自分で起きなかったら君はオーガのエサになるんだから、頑張って起きたほうがいいよ。他人に頼るんじゃなくて自分の身は自分で守りなよ」
「・・・言っとくけど、俺が死んだらお前ら全員失格だからな?それでもいいなら俺はずっと寝てるぜ?」
「お前は俺が蹴り起してやるから安心して寝ろ」
ウィリアムスの言葉にアルマンが脅迫めいたことを言うが、すかさずドーキンスが答える。
「いや、安心できねえだろ!?」
[・・・・どうでもいいけどうるせーからさっさと休めよ。見張りは俺様がしてやるから。俺はお前らは起こさねーけどエイダは起こす。でもお優しいエイダちゃんはお前らを起こすだろうから安心して休め。ま、そこに魔力を察知するのが得意なやつもいるし、全員がオーガのエサになっちまうことはねーだろ]
「・・・・・確かに」
アルマンがしぶしぶルタームの言葉に従う。
「それじゃあこの話は終わろうか。明かりを消すから、各自適当に休んで」
ウィリアムスがそう言うのと同時に杖を振ると、辺りが真っ暗になる。
3人はそれぞれ寝る体勢を整えて瞼を閉じる。
辺りはとても静かで、エイダの寝息が聞こえるだけになった。