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4 1日目―ルターム



[・・・・・やっと呼んだのかよ、待ちくたびれたぜ!4日ぶりだなぁ?のろまで愚図のエイダちゃんよぉ!]


「ごめんねルタ。学校に来るまでの道のりは他の人の迷惑になるかもしれないし、一緒に連れて行くことができなかったの。またよろしくね」


「・・・・・俺が言うのもなんだけど、こいつ口悪いな。しかもめちゃくちゃ不細工だし!」


「確かに、この世のものとは思えないくらい美しくないね。見た目のいい使い魔なら他にもたくさんいるだろうに」


アルマンとウィリアムスが言うように、魔法陣から現れたのはお世辞にも見た目が良いとは言えない妖精のピクシーで、体長は20センチぐらいと小さく、全身が硬そうな赤黒い皮膚で覆われている。

姿形(すがたかたち)は豚に似ていているが、目つきは鋭く全体的に重量感があり、可愛さなど一切ない。

真っ黒の羽も生えていて、見た目からして悪魔の使いと言われてもなんら不思議ではない。


「・・・えっと、この子は召喚したピクシーのルタームです。私はルタと呼んでいて、普段は召喚したまま一緒に過ごしています。見た目も口も悪いですが人に危害を与えるような子ではないので見逃してあげて下さい。ただ、イタズラが大好きなので何をするか私にも分からないんですけど・・・」


[お前ら俺様のことを散々(けな)しやがってよ!ぶっ殺してやろうか!?あ゛ぁ!?]


ルタはさっそくアルマンとウィリアムスの顔の近くまで飛んで行き、2人を交互に睨めつけて(あお)っている。


鬱陶(うっとう)しいからとりあえず焼き払ってもいいかな?」


ウィリアムスは右の手のひらに青白い色の炎を出現させるとルタに投げ付けようとする。


「時間の無駄だから、さっさとソイツを使って目的地まで案内しろよ」


今まで静観していたドーキンスだが、この茶番に苛々し始めたみたいだ。


「・・・すみません。ルタ!こっちにきて」


名前を呼ぶと、しぶしぶといった感じでルタが戻ってきた。


「ルタ、この辺りに不枯花が咲いる場所があるか見てきてほしいの。ちょっと上まで飛んでみてくれる?」


[あ゛?・・・しゃーねーな、ちょっと待ってろ]


ルタは鬱蒼(うっそう)と茂る木々の隙間から上手に空まで抜けていき、それほど待たずに再び私たちの元へ戻ってきた。


「ありがとう。どうだった?」


[上から周りを見たけど不枯花が咲いている場所は分からなかった。だけど何かの花の匂いはどこからか漂ってきてるみたいだ。(かす)かだけど匂いがする]


「それじゃあこいつの言う通り、"不死の丘"に不枯花が咲いている可能性はかなり高いよな。でもなんで上から見ても発見できねーんだろ?」


アルマンがうーん、と首をかしげながら考えている。


「可能性としては2つ。1つは人目に付きにくい場所に咲いているか、もう1つは見つからないように魔法で隠しているか・・・まあ後者の方が可能性としては高いよね」


ウィリアムスは冷静に物事を分析している。


「俺もこいつの意見に賛成だ。さっきから位置は分からないが、ずっと人間が魔力を使っているのを感じる。強い魔力を使った魔法のようだし試験を受けに来た人間の仕業じゃない」


(この人すごいな・・・私には何も感じないのに・・・)


「お前そんなこと分かるのかよ。すげーな」


ドーキンスは魔力を察知するのが普通の人よりも優れているみたいで、これにはアルマンも驚いている。

自分の近くにある魔力を察知することは誰でもできるが、自分から遠くなるにつれて自分以外の魔力を感じることは難しくなる為、ドーキンスのような人間は珍しい。


「それじゃあ上から探すのは無理だよね。どうやって探そうか・・・いっそのこと森を全部焼いていってもいいんだけど・・・」


「それは無茶苦茶だと思います。やめましょう」


ウィリアムスの物騒すぎる提案は即座に却下した。


「ではこうしませんか?不枯花の匂いをたどって"不死の丘"まで行くんです。ルタが匂いを察知できたということはそれほど遠くはないみたいですし、歩いても行けると思います。ルタ、"バン"を呼んでくれる?」


[おう、ちょっと待ってな]


ルタは私から少し離れるとポンッと右手に杖を出し、杖で空中に右回りに円を描いた。

すると円を描いたところが真っ黒な空間になり、そこから1匹の幻獣が現れた。


「バン!4日ぶりね!元気にしてた?」


バンと呼ばれた幻獣は四足歩行で狼のような姿形をしているが、狼とは違い頭が4つ存在している。

体長は私の身長とほぼ変わらないくらい大きく、4つの口から覗いているたくさんの鋭い(きば)で一斉に襲われでもしたら、ひとたまりもないだろう。

しかしそんな雰囲気を全く感じさせずに、勢いよく尻尾を左右に振りながら駆け寄ってきたバンの黒い毛並みを、私はしゃがんでそれぞれ4つの頭を優しく交互に撫でてあげる。


「この幻獣、君が飼っているの?これって絶滅種のヘルハウンドだよね?どこで手に入れたの?」


バンを撫でていると、ウィリアムスが私の後ろからぐいぐいと詰め寄ってきた。


「ほとんどの国で売買が禁止されているよね?もしかして密輸してきたとか?高値で取引されているよね?」


「もちろんそんなことしていませんよ。たまたま家が幻獣のブリーダーをしているだけです。それよりも幻獣について詳しいですね。ヘルハウンドの中でもこの種族についてはあまり知られてないのに」


「・・・まあ仕事柄そういう珍しいものをたくさん見る機会があってね・・・・」


それ以上は話さないのだろう。ウィリアムスは、すっと後ろに下がってしまう。


「ふーん、こいつ高く売れるのか・・・」


アルマンがバンをじーっと怪しい目で見つめている。


「売ったらだめですよ?バンは嗅覚がとても優れているので、不枯花の匂いの元まで連れて行ってくれると思います。ルタ、バンに不枯花の匂いのする場所に案内してくれるように頼んでくれる?」


ルタにそう頼むと、ルタはバンにテレパシーを送る。

人間と幻獣とでは互いにコミュニケーションをとることはできないが、ルタのような魔物と呼ばれている魔獣や妖精などの(たぐい)は、テレパシーを通じて幻獣たちとコミュニケーションをとることができる。


[よし、バンに伝えたぞ。このまま案内してくれるらしいから付いて来いってさ]


「ありがとうルタ、それにバンも。案内よろしくね」



こうして私たちは不枯花の匂いを辿り、"不死の丘"を目指した。






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