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僕の彼女は1人でいい  作者: 楽原 幽
2/6

入学式

是非皆さん読んでください。

「チリチリチリ」


 目覚まし時計の音がする。


「すっきりしたー」


 そう言いながら時計を確認する。


「えっと今は7時40分ってええぇぇぇ」


 起きるはずだった6時からは1時間以上遅れている。


 僕が行く学校は家から電車で約一時間半かかる。入学式が始まるのは9時、今からは絶対に間に合わない。


 何でこんなに遅れているんだ、まさか目覚まし時計が壊れたとか。


 そう思い携帯の時計をみる。そこにはやはり7時40分という文字が。


「くそっ」


 近くにあった椅子を蹴り倒す。


「あーーもうくそっ」


 階段を駆けおり、父と妹を起こす。


「起きろー!」


「あれ、もう朝か?」


「お兄うるさいー」


「早くしろ!!」


 僕がこれまでに発したことのないくらい大きな声で言うと、二人はすぐに立ち上がった。


「もう7時過ぎてる」


「「えっ」」


「もう間に合わないよ、とにかくすぐ着替えて行くよ」


 そして、僕らは8時に家を出た。



 「はぁはぁ」

 

 今は9時20分、駅から全力で走り、僕らは校門の前にいた。校門には[新入生はこちら→]とかかれた貼り紙がある。


 その貼り紙に従い右に行くと、そこには花で飾り付けられた通路が。そのままその通路を歩いていくと、[入学式会場]とかかれた看板が体育館と思われる建物の前にあった。 

 中からは誰かがしゃべっている声がした。

 

 急いで前にあった引きドアを開ける。


「えっ軽い」


 ドアが思ったより軽く、勢いよく開けてしまったので、体育館にドーンという音が響く。


「あ、やべえ」


 体育館が静まり返った。後ろをみると父と妹の呆然とした顔が。


「すみまへん」


 やべえ噛んじまった、どうしよう。

 僕の耳にに話し声がぽつり、ぽつりと聞こえる。

 

「あれ誰?」


「入学式に遅れてくるとかマジないわ」


「私、あいつと友達には絶対なれない、顔キモいし」 


「すみまへんって何?すみまへんって」


 僕は思った、僕の高校生活は輝かしいものにはならないと。


 そして後悔が押し寄せてくる。何で寝坊してしまったんだ、何でもっと注意してドアを開けなかったんだと。もうこれで俺が作った計画も何もかも無意味になった。


 そこまで思うと、次は別の感情が押し寄せて来た。だがこの感情には浸るな、そしたら涙がこぼれてしまうから、そう決心し何とか涙をおさえ込む。

 

 その時声が聞こえた。


「静かに!! とりあえずあなたは座りなさい」


 その声を放ったのは前に立っている先生であった。あなた、というのが自分だとわかり、僕は何とか平静を装い席についた。

 

 席についてしばらく話を聞いているうちに心が落ち着いてきた。さっきまで父と妹は気まずそうに僕の様子を伺っていたが僕の心が落ち着いてきた事が分かったのか、今は普通に話を聞いている。

 

「乗丸、お前どの子が好みなんだ?」


 落ち着いてきたと言っても、よく今そんな話ができるなーと我が父ながら思う。


「まぁどうせ俺に彼女なんか出来ないだろうけど、あの子と、あの子と、後あの子もいいなぁ」


 僕が指を指して答えた子は1人は中学校の時の同級生、後の2人は始めてみる人だ。


 中学校の時の同級生の子の名前は斎藤静香、髪は首まで、優しそうな目でいつもにこにこしている。中学生のときは活発で外でよく遊んでいたが、彼氏はいなかった。僕が話したことはほぼないが、暇さえあればいつも彼女を見ていた。


 残りの2人は、1人は茶髪でロングヘアーの可愛い小学生みたいな女の子、もう1人はショートカットの美少女で無表情だ、だがその無表情さがたまらない。


「ふーんそうなんだー」


「なんだよその返事は、自分から聞いといて」


「ロリも好きなんだなーと思っただけ」


「ロリコンじゃねーよ、あの小さい子以外はロリじゃねーし」


「はいはい分かったよ」


「その言い方むかつくー!」


「あの、少し静かにしていただけませんか」


 父とそんな話をしていると、隣の席の人からキリっとした声で注意される。

 眼鏡をかけていて少しきつめの顔をした女性がそこに座っていた。様子を見る限りだと先生のようだ。


「「すみません」」 


 何で今日はこんなに運がないんだと思いながら父と共に謝った。



 入学式の後、僕は家にすぐ帰った。

 そしてお風呂に入りながら今日のことを思い返していた。


「あー何で僕ってこんなに運がないんだろう」


 そう言った僕は涙をこぼしていた。そして泣きつかれると、入学式での自分に対しての悪口が思い返された。

 これで僕の高校生活は終わりだ、そう考えるともう何もかもが憎たらしくなってきた。


「誰もかもみんな死んで、もうこんな世界なんてなくなってしまえ」


「こんな世界なんて消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ!」


 小さかった声は次第に大きくなり、最後には怒鳴っていた。


 その後もそんな怒りは押さえられず、今日も僕は寝れなかった。

 

読んでくださった方ありがとうございます。

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