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功労者になろう!  作者: ホールインワン
7/12

七話目 美少女と話そう!


「『トーク!』」


そう唱えると、耳が暖かいものに包まれるような感覚に襲われる。

とはいっても、心地よい感触なのでずっと続いても良いくらいだ。

そんなことを考えていると、十二時の方向から声をかけられる。


「……ハルヤ、わたしの言ってること分かります?」


エスタが俺と同じ人間語(?)を話しているように聞こえる。その声は鈴がなるようなよく通る良い声だった。


これが魔具チューピッチの技能。


『半径一メートル内の相手と自分の意志疎通ができる技能』


これなら魔属語しか使えないエスタでも話せる。

「……あぁ、分かるぞエスタ」

上目遣いに尋ねるエスタに俺は首を縦に振りながらグーサインを返す。


彼女はニコッと笑い、両の掌を合わす、

「なら、よかったです。 あ、……すいません。わたしったらお茶も出さず……!」

チューピッチの技能を使うまでやたらそわそわしていたエスタが確認を済ませたことでいつもやってるのかお茶を出していないことを思い出したらしい。


いいのに、そんなこと。


気長に構えていると、エスタは申し訳なさそうな顔になり、そそっかしく、手をわちゃわちゃさせる。

……なんだこの悪感情清浄機。


……アンデットも浄化されそう!


本気でそう思えた。

なので俺はいつもとは違った、落ち着いた返事を返せる。

「いいよ、お構い無く」

「分かりました、では絵画でも眺めてくつろいでいてください。」

そう言って、ふんわり笑う。

「あ、うん……」

あ、いや、社交例示とかではなく、本当にお構い無しでいて欲しかった。

エスタは紅茶でも取りにこの屋敷の厨房にでも行ったのだろうか、そのまま部屋を出る。


素直そうな子だから、流石にこのままおいてけぼりってことはないだろうが、エスタがもどってくる間は俺は“アイツラ”の視線を独り占めしなければならないのだ。


……やーアハハ、困ったなー。


わっはっはっ……と笑い、頭を掻く。

苦笑しかでねーや(苦笑)


豪華そうな壁にはその一面に色んな種類の絵画が飾ってあるエスタの部屋に、俺はやって来ていた。

勿論、絵画というのは全てクライスの言った『ペット』である。廊下にあった絵画よりこっちの方が五倍くらい多い。

その全てが一点にこちらを眺めてくるものだから居づらいと言えば居づらい。


一方そのクライスは一日の修行を怠ると実力が戻るのに三日かかるというのでそのまま何処かへ行ってしまった。


気づけば、何故か壁に張り付いている絵画のほとんどが萎縮して隅に固まっている。……何か怖いものでも見たんだろうか?

少し近づくと、声が聞こえてきた。

チューピッチの技能のお陰だろう。

『怖い、怖いよーっ!』……泣き叫ぶような声である。


「………、」

……なんだろう、不安になってきた。


若干ね。クライスにはいてほしい気持ちもあったけど、真面目な性格も現在に関しては嬉しい限りだなー。



……だって、可愛い女の子と二人きりだなんて、良いじゃないですか。


さっきまでは野郎二人だけの会話って感じでしたもんねー。


エスタが戻ってきたら、ほのぼのした感じにしましょう。

……きっと、それがいい。


頭上に感じる威圧感を出来るだけ感じないように、そんなことを考える。


―――ぴちょん。


「……んんッ!?」


背中に大粒の雫が一つ垂れる。

背中がびしょ濡れだ。大汗かいたみたいになってる。


……ヤバいなー、ワキ汗より恥ずかしいなーこれは!!


こうなったら意地でも頭上を見たくはなかった。

……そんな情けないプライドが唯一俺を支える精神安定剤として起動していたのである。


―――びちょん。


「ん、んんー?雨漏りでもシテルノカナー?」


俺のおとぼけも最早ここまでである。窓の外には晴天が広がっている。雨など降ろうはずもない。

我慢できずに天井を見上げる。


―――ぴちょ、ぴちょん。

「……あ、ああああああッ!?」


頭上に落ちる雫。


それは、『唾』であった。

………では、それは何の?


……その正体を見て、絶叫を上げる。

皆さん、突然だが……、天井に動物が描かれている神社仏閣をご存じだろうか?


あれを思い出してほしい。


中には鹿だとか猪だとか「うまいなー、職人」ですませられるものもあった。


俺の頭上にあったのは天井一枚を埋め尽くす一つの絵画。それは何処かで見たかのような荘厳な一匹の竜がこちらを見下ろしている。


……ふーふー、と息は荒く。口を開けたり閉めたりを繰り返している。


「こんなの……」


コイツはただの絵じゃない……。生きてるんだ。


「……こんなの……、」


あの大きな雫もこのデカイドラゴンの唾だったら納得出来るっていうか、……臭い!!


俺は叫ぶ。


いっせーの、で!


「………くつろげるかあああああああああああぁッ!!!!」






「すみません!!すみません!!後でキツく言っときますんでっ!!」

エスタが上司に謝る部下のように見える。

というのも、後で唾まみれになった俺をドラゴンを宥め連れ出してくれたのだ。


「いいって、別にエスタは悪くないんだし、」


ガウン一枚を羽織った俺は逆に申し訳なくなる。

しかし、唾まみれて……ちょっとエロい。……けど、嬉しくない。


「とりあえず、これはお洗濯に出しておきますね?……ハルヤはそこのお風呂に入ってこの服に着替えてください。……すみません。」

と、一通り言い残し、エスタが唾まみれの服を持ち、何処かに去ろうとする。


そのとき、「何度も言ってるのに……」と困ったように呟く。

だんだん出会ってからその面持ちが悪くなっているのは気のせいだろうか。


何度も言ってるってことはあのドラゴン、客が来る度こんなことやってんのか……?


エスタが俺に対して気まずい感情になることを考えてここまでやってるんならあのドラゴンは策士だな、としか言いようがない。


やんわりとワンクッション入れて持ち直さなければ……


「……あぁ、頼むよ。……あのさ、俺……別にあの竜が嫌いって訳じゃあないんだ。ちっと怖いってだけでさ……」

「……怖い??……うん、可愛い??」


エスタは自分が聞き間違えたのかと思っているのか、……可愛いで納得しちゃいました(白目)

あのドラゴンですら可愛いと言えるその姿勢、スゴすぎるわ。






……なんとなく、風呂というのは久しぶりに入った気がする。

この世界は、たまに水遊びをして……


『よし、綺麗になった。』

って感じなんだよなぁ……


親父なんて週に一回洗ってるか厳しいし、レガーリアの工房のハリスさん達はなんかもう考えることすら危うかった。


……だからこそ、日本という風呂好きの国から来た俺は風呂という娯楽を味わえるときに味わっときたい。


「長風呂しようかなー。」

上機嫌でタオル片手に、脱衣場から風呂への『男』と書かれたドアに手をかける……。


ガチャリ……


「……何故、貴様らが今日に限って全員参加なのだっ!!」


あれー?クライスいるじゃん。

どれ、様子を見るか……

入るのを止めて、ドアの隙間から中を見る。



「……きゃーん、こんなとこで会っちゃうなんてワタス達って相思相愛!?」


「ほーんと、偶然ヨ!まさかワタス達が偶然にもクライスちゃんのトレーニングプランがぎっしり書かれたメニュー表をゲッチュ☆しちゃうなんてェ!!」


「やらないか?」



「あの時なくなったメニュー表、貴様らだったのかッ!!……お、おい、待て!!話をしようッ!!……ギャアアアアアアアアッ!!??」



「……ひぃッ!?」


思わずその熱烈な空間を見たくなくてドアを閉じました。

口も閉じ、息を殺す。

いや……お楽しみのとこ悪いっていうかね……うん。屍は拾うよ……


俺はまだガウン姿でしょうがなく散歩でもしようかな……


そう思って、脱衣場の籠からガウンに手をかけたとき、肩に手を置かれる。



「あれ、貴様ら、ウホとか言ってた奴はどうした……?」

「さぁね、ドアの外にいるチェェルィボォーイを食べに行ったんじゃナーイ?」

「……それよりも、クライスちゃんよ、ハリ子!!」

「……それもそうね。」


「……ギャアアアアアアアアッ!!」



ドアの向こうからさらに断末魔が聞こえる。

つまりだ……、ということはだ……、

ゆーっくり、後ろを振り向く。


「やらないか」

「オワタ\(^o^)/」


「ひにゃああああああああっ!!??」



このあと、滅茶苦茶めちゃくちゃされた。





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