四話目 魔属に会おう!
………、
「……ということだな。」
クライスが解説を交え、話終える。
大体わかった、……が少し気になることがあった。
「なるほど。……だけど、何でこんな辺鄙な土地に来たんだ?」
土地の開墾をする方法を調べに来るにはあまりにも田舎な地域に来るじゃないか。
「我々だって王都に行って情報を得たいが、あそこには城や城下町を囲う壁があるだろう?……城下町を通る門には門番が配置されていて、私では到底入れない。」
「まあ、その翼じゃあな……」
横幅3メートルはあるぞ。
「翼はまだいい、マントで隠せるからな。だが……この角が邪魔なのだ。」
忌々しそうに呟く。……ああ、帽子じゃ納まりそうにないですもんね、その角。なんとかターバンで隠すにしても、端から見たら物凄い脳勃起してるみたいに見えるだろう。
「我々エスタ党の中で一番人間に近いのはエスタ様だが……、まだ人間語を覚えてきれてなくてな、侵入できても情報を仕入れられんのだ。」
エスタがキョトンとしているのを見て額に手を置く。
……ご苦労さんです。
まあ、『イケメンは苦しめ』のモットーを持つ俺にとってはいい気味だとしか言いようがない。
………と、思っていたのもつかの間、嫌なことをクライスが思い出す。
「そういえばだが、ハルヤ、……貴様の股間部に刺さった槍はどうするのだ?」
「……ああ、あれね。」
口元がひきつった。
思わず、クライスを殴らないように自分の拳を押さえる。
俺の股間と『一体化』した、あの槍のことですか、
あの槍、名を魔具クーベルブルとか言って、『ものを槍と一体化させる技能』を持つ。
ちなみに魔具とは魔属が持つ特有の武器のことを指すのである。それには、『技能』と呼ばれる特殊な力がある。
「……ホント、なんで股間なんだ……、」
槍は元の俺の●●●に収まるくらいにはクライスの持ってきたナイフでカットされてはいるが、俺の●●●には槍の固さが加わり、常時勃起してるみたいになっている。
『技能』を解くのはその魔具を作った者にしかなし得ない。つまり、俺はシュガンテイトに行かないといけないのである。
あ、そうそうカットされた魔具は魔力によって構成されているので、持ち主の魔力を注げば元通りになる。
お得ですねー。
……チクショウ!!あのクソ魔具を誰か封印してくれッ!!!!(切実)
「あ、あの時は必死で姫様を守ろうとしてて、手元が狂ってしまい。……本当にすまない……、」
すまなそうに、何度も頭を下げる。
……が、俺は更に追い討ちをかけた。
「ハツカダイコンも、全部食べられたし……、」
……あのあと調べたのだが、生き残っているハツカダイコンは一人もいなかった。
……数え方が違うって?
それでいいんだよバカ野郎……、
「弁償もする!!……それに、姫様も旨かったとおっしゃっている。十分名誉なことだぞ!?」
励まされているようだ。
いや、しかし、……十分名誉って、どこで自慢するんだ?
……王都か?
ぶっ殺されるわ。『魔王軍の手先ー』とか言われて。
「……で、そのシュガンテイトに着いたら元に戻して貰えるんだな?」
「……あ、ああ、うちの党には腕利きの魔具制作者がいるんだ。」
「そうかそうか、それなら安心だな。」
困った顔のクライスに向け、ニヤーと俺は笑う。
「貴様、この状態をよもや楽しんでないか!?」
悔しそうに声を荒げるクライス。
エスタは楽しそうにそれを見つめる。
「……え、そう見え――」
………バン!!!
――るか?という言葉は何処かに飛んでいった。
更なるおちょくりを開始しようかと思ったが、勢いよく開かれた音でそれが中断される。
……ちょ、エスタがクライスの影に隠れてビクビクしてるんですが……、
クライスもクライスでゴクンと唾を飲み込むほどに緊張している。
「おう、帰ったぞ。……ん、なんだその二人は?お見合いでもしてんのか?」
アッハッハ(棒)………笑えない冗談だ。
「お帰りなさい。……『父さん』」
「「オジャマシテマス。」」
ド下手な人間語が耳をつく。
……皆さん、王のお帰りです。
「なんだ、あの御仁は。まるで、歴戦の武人のようだった。」
「……ああ、実はそうなんだ。」
歴戦というか、市場のせりで戦っているというか。
……なんにせようちの親のオーラは半端ないことをここに記しておく。
多分スーパーサ●ヤ人3位までならなれるんじゃないかな?
完全体セ●ならイチコロ。
「……一度手合わせしたいものだ。」
と、感動したように拳を握る。
いや、あんたらがぶん殴ったら親父は死ぬんじゃないかな……
言っちゃえば、オーラだけだからな。
いつか戦いを挑まれるかもしれない親父に冥福の祈りを捧げておく。南無ー。
「……でだ、シュガンテイト?……ってところに行くのには許しを貰えたのはいいけどさ、この後ってどうなるんだ?」
はっきり言って名前しか分かってない国に今から行くような感じではないが、一応予定を聞いておくことに間違いはないだろう。
しかし、国を出て、他の国に行くまでにはどれだけの日数がかかるのやら……
と解決が遠退いていくのが目に見えて分かる。
「……どうって……、荒れた土地の開墾の情報収集はもう行ったので直ぐにでも帰ろうと思うんだが……、」
情報収集ねぇ……、
改めて見ると、クライスの姿は情報収集には向いてなさそうだ。それにエスタだって言葉は分かるのだろうか?
「……ちなみに、情報収集って何をしてるんだ?」
「荒れ地でも育つような作物の種を買い、良さそうな土壌の土を集めている。」
豆とか芋ばっかになりそう……、栄養不足の次は栄養の偏りが問題になるかもしれない。
ま、まあ、土壌が整ったら他の作物育てれば良いだけの話なんだけどさ。
「……さて、シュガンテイトに行くぞ、……そこの草むらまでついてこい。」
クライスがちょいちょいと手招きし、俺とエスタが草むらに隠れるようにしゃがみこんだ。
「魔具テレミネイを使う。これは、私達がシュガンテイトに行くまでの時間をたった一秒にまで短縮できる。」
「……おお、テレポート出来るのか!!」
なんか、感動する。近未来系の小説好きだから超能力とか憧れてしまう。
「「てれ、てれぽーと?」」
エスタやクライスが首をかしげながらおうむ返しに呟く。やっぱ俺の元いた世界特有の言葉は通じないみたいだ。
「……まあ、聞いたこともない人間語だが、少ない時間に遠い距離を移動できることには違いない……。」
その言葉に俺はノリノリだったが、エスタが深呼吸して息を落ち着かせているのが俺の目には入らなかった。
「……が初めての奴は多分凄く酔う!……なので、ハルヤは私やエスタ様には間違っても吐くんじゃないぞ、手洗いは目の前の屋敷の扉を抜け突き当たりを右だ。……よし、行くぞ。」
――――――え?ナニイッテンノ?
「……え、ちょっと待て、いきなりそんな―――」
俺の制止の声なぞ耳にも貸さずクライスは黒いペンダントのような者を取り出し。大きな声でいい放つ。
『ゲートッ!!』
どうやら、それが魔具を発動させるためのキーワードらしく、一瞬で世界が訳のわからん空間に飲み込まれ、
オロロロロロロ……――――――!!