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超・初心者(スーパービギナー)の手引き  作者: くらげマシンガン
最終章 超・初心者の手引き
172/174

L167 初心者の選択

 リリザ、フィーナ、レオ、ロイス、チーク、ベティーナ、ガング、エト先生。フルリュ、ササナ、キュート。


 キュートが真っ先に攻撃された。ロイスが胸を撃たれ、チークが飛んで来た。エト先生が倒れ、マウスがやられ、レオが逝き、ベティーナが後を追いかけ、ガングは破壊された。


 追い掛けるように、ササナとフルリュが。


 今の今まで俺を見ていた『紅い星』が、驚きに目を見開いて混沌とした戦場を見詰めた。俺も、その唐突な事態に唖然とした。


 突如として、増えたのだ。『境界線』を越える程に大きな魔力反応。今、『市民』に囲まれているあの場に残っているのは、リリザとフィーナだけのはずだ。


 しかし、魔力反応は三つ。


「……戦力を再計算」


 そう呟いている間に、俺は『紅い星』から離れた。


 同時に、小規模の爆発が巻き起こる。群がるように集中攻撃を仕掛けていた『市民』は吹き飛ばされ、今まで隠れていた姿が露わになった。


 ――――来て、くれたのか。


 初めに見えたのは、リリザの防御結界。既に魔力尽きたのか、リリザはその瞬間に結界を解き、その場に崩れ落ちた。肩で息をしていた――……その後ろで祈るように両手を組んでいるフィーナと、その頭を掴んでいる、もう一人の存在がそこに立っていた。


 誰も、気付かなかった。……いや、気付く筈が無かったのだ。彼は今まで誰にも悟られずに、様々な場所で情報収集をしていたのだから。


「……本当に、世界の終わりで再会する事になるとはなァ。俺も焼きが回ったもんだ」


 呆れ顔で俺を見ている男がいた。右手が淡く光っているのは、フィーナと何かを交信しているからだと分かった。テイガ・バーンズキッドは薄く笑みを浮かべて、しかし珍しい事に緊張しているようだった。


 テイガの周囲で、多数の蝙蝠が羽ばたいていた。


「何だ? それは……我々が知らない技術が、まだ存在していたとは……」


 俺は、テイガの下へと走った。倒れた『市民』達は不自然に動きながら、地面をのたうち回っている――……これは、感電? 例えるなら、そのような動きに見えた。


 唐突な事で、『紅い星』も何かを調査している。俺は走り、膝をついたリリザを庇うように、最前衛に立った。そうして、テイガに耳を傾ける。


「時間がねえ、ラッツ。よく聞け。『奇跡』が起こせるのは、一度だけだ。……それ以上は、どうしようもねえ」


「…………『奇跡』?」


 問い掛けると、テイガは頷いた。一体何の『奇跡』なのか、俺には分からなかったが。辺りの『市民』も、立ち上がり始めていた。詳細を打ち合わせする余裕など無い、僅かな時間の猶予。目眩ましに近いのは、元からそういう効果を持つスキルなのか、それとも『紅い星』を取り巻く周囲の環境がおかしいのか。


 調査を終えたのか、『紅い星』が動き出し、その口を開いた。


「そうか。これは――……文献の無い、過去に行われた『禁忌』の魔法か。道理で我々には理解出来ない内容の筈だ」


『紅い星』がそう呟いた瞬間、テイガの表情がふと不敵な笑みに変わった。


「キヒヒ。……あったさ、文献は。生き残る為には、強くなれ。強くなる為には、情報を集めろ。……俺も、てめェと同じ考えだったぜ。だが、一つだけ違ったようだ。俺ァ、過去に行われた阿呆共の『間違い』を中心に情報を集めていた。てめえら『機械』は、そうではなかったみたいだなァ」


 以前テイガが使っていた、完全に姿を消す魔法。そういえば、<ハイドボディ>はそんな魔法では無かったようにも思える。テイガは独自のルートから情報を集め、誰も知らない魔法についての知識を粛々と蓄えていたのかもしれない。


 誰にも悟られずにその場所に存在出来るのなら、どんな犯罪も可能になってしまう。そのように危険な魔法は、自然と文化から淘汰されて行くものだ。


「生きとし生ける者の、全知の神よ。我が前に今一度、天啓の導きを与え給え」


 膝を付いたフィーナから、詠唱が聞こえる。


 ――――『奇跡』?


 禁忌レベルの魔法。テイガから伝達されているようにも思える……リリザの防御結界。フィーナが今まで攻撃に参加せず、護られ続けた理由。それだけの長い詠唱だとしたら。……それらから、総合的に導き出される答えは一つだった。


 ……可能、なのか? そんな魔法、聞いた事も無い。或いは、古代の魔法に詳しいテイガだからこそ知っている魔法なのかもしれないが――……


 いや。考えている場合じゃない。一先ず、テイガの戦略はそれで間違いないだろう。


 今度は、俺の番だ。


 逆転のジョーカーは一枚。それは、『紅い星』を倒す為の決定打には成り得ない。


 どうしたって、エースは俺が引くしか無いんだ…………!!


 薄ら笑いを浮かべ、冷や汗を流したテイガが、自身のこめかみを人差し指で叩きながら言った。


「元から最強の奴とは、頭の出来が違ェんだよなァ。……過去に死んで行った奴にはな、生き残る為のヒントがあるもんなんだよ」


「成る程。……覚えておこう」


 それだけ呟いて、『紅い星』は、跳んだ。


 数秒にも満たない攻防、再び状況は元に戻る。テイガ・バーンズキッド一人駆け付けた所で戦況は変わらず、その強大な魔力を一際強く輝かせて、中心に存在するものは俺達に攻撃を仕掛けようとしていた。


 起き上がった『市民』達も、身体の拘束を解いていく。そうして、俺達に向かって走って来る。無機質な銀色の瞳。感情を持たない不気味さ。その、動く死体とも呼べるような何かは。


「だが、所詮は悪足掻きだ。圧倒的な力で押し潰してしまえば、もう抗う事は出来ない。……そうだろう?」


 一斉に、俺達へと向かった。


 幾つもの機械は、まるで屍を貪る亡者のように牙を剥く。しかし、『市民』に気を取られていては駄目だ。


「大丈夫だ……!!」


 仲間を信じろ。


 リリザが朦朧とした動きで、再び結界を張った。周囲の『市民』は、押し潰す程の物理攻撃で俺達を今にも喰い殺す勢いだった。


 地上を見渡せば、視界を埋め尽くす程の『機械』の群れ。


 空中には、『紅い星』。


 この世の物とは思えない光景は、俺達の目の前にあった。テイガが柄にもなく、カタカタと歯を鳴らしていた。


「――――おい、くそヒーロー!! お前にここ一度だけ、『経験』を与える!! 俺はお前に賭けるからなァ!!」


 弱音を吐くことは、許されなかった。


 テイガは一度として、『強者』に抗った事はない。……それは、本当の意味で俺に未来を託したという事を意味していた。


 命を背負う、重み。俺は唇を引き結んで、どうにかして解答を導き出そうと思考の渦に飛び込んだ。


 牙が。……上空の、『紅い星』が!!


 リリザの防御結界が、破られた。


『紅い星』は空中に浮かんだまま、小宇宙のような漆黒の塊を大空に出現させた。……時空間の魔法か? 見た事が無い。たった一つ理解出来るのは、それが途方も無く危険なモノだという事だけだった。


 その強大な魔力は、俺達如きを押し潰すには充分過ぎる量のように思えた。人間には、一度に放出できる魔力量にどうしても制限が付いて来てしまう。その制限さえ無い奴等は、『境界線を越えた俺』以上の攻撃を俺達に仕掛ける事ができる。


 それは、『生物』である以上、どうしようもない事だった。


 ――――来る。津波のような魔力が、一気に。


「ぐおおっ――――!!」


 結界が破られ、俺達は『市民』に腕を、足を捕まれた。


 無数の牙が、俺達を襲う――――――――


 どうする。


 テイガの働きを、無駄にする訳には。


 目の前の闇にも似た魔力の塊は、結界の破られた、あまりにも無力な俺達へと向かって、近付いて来る。


 心拍が、跳ね上がった。頭痛にも似た痛みは、心臓を握り潰す程に強く。


 時間が、ゆっくりと、進む。


 どうすれば。




「やはり、『魔力』は偉大だ」




 或いは。


 奴が最後に言い放った一言が無ければ、俺はそのまま何も出来ず、『紅い星』の攻撃を真正面から受けて、死んでいたかもしれない。


 どうにか腕を伸ばして、フィーナを護る。ついに詠唱を終えたフィーナの頭上に、黄金色の鐘が現れた。それは一際強く、無骨な機械達が関節を動かす音の中、大草原に澄んだ音色を響き渡らせた。


 目を閉じていたフィーナが、その双眸を見開く。


 ――――――――そうだ。


 この絶望的な状況を無に返し、戦う術を手に入れること。それは正に、『天啓の導き』だった。閃いた手段は俺に行動を与え、何よりも先に身体を動かしていた。


「<魂の再降臨リザレクション>――――!!」


 そんな事をして、良いのか?


 僅かな疑問は、脳裏を掠めた。


 生物滅亡の時だ。誰に許可される必要もない。俺は、目を閉じ――――誰もが『市民』に押さえ付けられる中。


 空中から俺達に飛び掛ってくる『紅い星』と、それに対抗するように黄金の鐘を鳴らしたフィーナを、視界から消した。


 既に精魂尽き果てて崩れ落ちたリリザと、目を見開いて恐怖しているテイガを、視界から消した。


 伸ばせ。


 意識は一点に集中される。限りない魔法公式の海に身を投じるように、もう一度。意識だけでも、飛ばす事は可能だろうか。


 可能だ。


 場所は、分かる。俺の魔力を、導く事さえ出来れば。


 フィーナの創り出した黄金色の鐘は、目を閉じても視界へと飛び込んでくる。その周囲を飛び回る、幾つもの天使達が見える。


 すまんね。


 急いでいるんだ。


 通り過ぎ、大空へと飛び立ち。今一度、その次元の向こう側へ。




 ○




 真っ白な空間の向こう側には、俺のよく知る人物の姿が見える。


 何処までも続く地平線。大地も空も白いのに地平線の場所が分かるのは、遥か遠方に僅かな暗い部分が存在している為だ。


 音はしない。匂いもない。風も吹いていなければ、視界も何処か朧気で、夢の領域を出ていないようにも感じられた。


 俺の両手には、捨てた筈の指貫グローブが装着されていた。見れば、苦楽を共にしてきたゴーグルも何処か綺麗で、まるで新品のような雰囲気があった。


 昔着ていたカーキ色のジャケットと、身体に不釣合いな程大きく、そして沢山のモノが入っているリュックサック。


 俺は、前方に見えるその男と、正面から向き合った。


「おう。……準備はできたかよ」


 背の高いボサボサの茶髪に、俺は不敵な笑みを浮かべて言った。


 どうせ、意識など共有されているのだろう。俺は一個人の領域を抜け、この星の魔力と同化しているのだから。その男は苦笑して、いやあまいった、と頭を掻いた。


 薄汚れた白衣。内側に見えるシャツは、破れていた。左胸に光る、不死の証。


 しかし、それは俺が最も身近に感じている存在を、鮮やかに映し出した鏡に過ぎない。


「……本当にやるのかい? ……しかし、大変なことになるぞ」


 本当のトーマス・リチャードは、もうこの世には居ないのだ。だがきっと、その想いは受け継がれていたのだろう。


 俺にもきっと、受け継がれていた。


『若しかしたら、ラッツ。お前は出来ないと思うかもしれない』


 でも詳しいからこそ、出来ない事がある。踏み切れないことも。


 トーマス・リチャードは、踏み切れなかったんだ。


 それこそが俺に託された、たった一つの想い。人々に未来をもう一度見せる為の、僅かな希望だったのだろう。


 俺は、その存在に向かって歩いた。無言のままで彼と、彼が立っている領域の先へ。一歩、足を進める。


「大変な事なんて、ひとつもねえよ。今までと同じだ」


 その言葉に、少しは安心して貰えただろうか。瞬間、背中に居る彼が笑ったようにも感じられた。


「前に進むための、道を切り開く。……馬鹿だとか阿呆だとかモラルがどうこうとか、そんな事は後回しでも良いだろ?」


 いつものように、勿体ぶった台詞回しでそう呟いて。


 俺は前を向いた。


 もう、振り返る事はない。


「――――ありがとう」


 背中の存在は、消えた。見ずとも分かった。俺は真っ直ぐに、地平線へと向かって歩いて行く。


 足取りは、やがてペースを上げていく。


 そうして、走り出した。


 迷わなくてもいい。俺達が求めているのは『幸福』なんだ。そこに、何を縛られる必要もないんだ。


 俺は。


 俺の、願いは。


 大きく右腕を振り被り。『自由』に、背筋が震える。歓喜の瞬間に心は躍り、引っ切り無しに鼓動している心臓は、生存の証明を俺に与えてくれる。


 伸ばした右腕は、未来へ。




 ○




『紅い星』は頭から草原に突っ込み、地面を転がった。俺達を取り囲んでいた『市民』は動きを止め、嘘のように沈黙していた。


「えっ…………」


 リリザも、フィーナも、テイガも。皆、唐突に訪れた静寂に対処し切れていないようだった。


 それもその筈だろう。俺は『市民』に捕まり座り込んだ状態から、突如として何事も無かったかのように、『紅い星』の顔に真正面から拳をめり込ませたのだから。


 フィーナが発動させた<魂の再降臨リザレクション>は、既に効果を発揮した後だ。俺は周囲に転がっている仲間達を見て、タイミングを間違えていない事を確認した。


 成功だ。


 その結果に、一点の曇りもない。


「――――くっ」


 歯を食い縛り、俺は笑った。


 笑いが止まらない。もう動く事はない、無数のガラクタに囲まれながら。起き上がり、困惑して辺りを見回している『紅い星』を見て、そのあまりに人間的な表情に。笑わずには、いられなかったのだ。


「何だ……!? 何が起きた!?」


 そうだよ。それだよ。俺が聞きたかった声色は。


 始めに起き上がったのは、レオだった。血だらけの服を見詰め、自身に異常が無いことを確認して、どうした事かと目を丸くしていた。……ロイス。チーク。皆、何が起こったのか分からず、ただ自分の身体だけを眺めている。


 真紅のシルクハットを被った、少し生意気そうな青年の姿があった。騎士のような服に身を包み、自分の身体に起きた異変に対処し切れていない様子だった。


 ガングは――……包帯を、解いた。


「――――見える」


 驚きを、隠せないのだろう。


 マウスとガングは、元の姿に戻っていた。……肉体が再生されたのだから、当たり前か。テイガの限りなく禁忌に近い魔法も、大した効力を持っているものだ。


 俺は自身を掴んでいるガラクタを外し、立ち上がった。ジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、憐れにも尻餅を付いたままで周囲を見回している『それ』を、見詰める。


 ――――優越感を覚えずには、いられない。


「よう、『神』。気分はどうだ?」


 感情が備わっているというのは、すごいな。爺ちゃんを始めとする過去の人間は、生物を何処まで研究していたのだろうか。


 俺は、爺ちゃんが残して行ったメッセージの事を思い返していた。


「なっ……何をした!? 効果範囲は……何故、予備のバッテリーに切り替わっている…………!!」


 なるほどね。多数のガラクタと化した、元『市民』が動いていないのに、お前だけが動いているのはそういう理由か。抜け目がないと言うと、どうにも人間的だ。


「幾ら探しても、答えは見付からないと思うぜ。……特別に、教えてやろうか」


 そう言って、俺は天空を指差した。


 誰もが、俺を見ていた。起き上がった仲間達も、『紅い星』も。自身に起きた変化に、まだ気付いていないのだろう。


 これが、俺の解答だ。




「――――今!! 『全世界』に存在する『魔力』は『消滅』し、其れを必要としない世界に組み変わった!!」




 時間が、止まる。


『紅い星』は、呆然と俺を眺めていた。……事実確認の為の時間だろうか。それとも、若しかして『呆気に取られて』漠然と俺を眺めている姿なのか。……まあ、どちらでも俺に影響はない。


 理解出来ないようだから、説明してやろう。


「この世界の全ての『生物』は、存在する為に必要としていた『魔力』そのものを別のエネルギーへと置き換えさせてもらった。爺ちゃんの残して行った資料には、『人体』についての情報があったもんでな。……驚いたか?」


 驚いているかどうかは、顔を見れば分かる。


 まあ、その殆どは『境界線』の働きによる効果だったりするが。


 信じられないと言った様子で、『紅い星』こと『神』は、俺を見詰めていた。そのあまりにも間抜けな表情に、堪らなく笑いが込み上げてくる。


「…………『魔力』を、消しただと?」


「おう。これでお前はただの鉄の塊だな。見た所、この世界に適合する為に旧時代の『武器』を捨ててきたとみた」


「分かっているのか……!? お前が実行した事によって、全世界からたった今、『魔力』の概念が失われたんだぞ……!?」


 俺は徐ろに歩き出し、座り込んでいる『紅い星』へと向かった。


「黙っていたら死んじまう世界に用はねえや。大丈夫、真実を知れば誰も文句は言わねえって」


 じき、皆の間から消されていた『記憶』も元に戻るからな。


 ようやく事情を理解した仲間達が、それぞれ確認を始めた。『魔法』。その一切が使えないという事実は、紛れも無くそこにあった。


 星の『魔力』と同化した化物。改良を重ねてきたと言うなら、さぞダメージは大きいだろう。それが証拠に、『紅い星』の移動速度は今までとは比較にならない程、遅い。


 最も、これで俺達も超人並の速度は失われてしまったが――……今まで鍛えてきた拳があれば、充分だ。


「貴様――――!! この星の叡智を!! 敢えて『退化』を選択する愚か者が居るか!!」


「あァ、知らねえな」


 つまりこういう事だろう、爺ちゃん。あんたに出来なくて、俺に出来る事と言ったら。


 他所から現れて『魔力』のエネルギーの大きさに気付いてしまった爺ちゃんは、どうしてもその『概念』を消す所まで、踏み切る事が出来なかった。


 だが、それは爺ちゃんの失敗だ。その時に踏み切っていれば、或いは爺ちゃんもこの世にまだ、存在する事が出来ていたかもしれない。


 ……いや。或いは『紅い星』が、まだ魔力に適合していない時代で、旧時代の武器を持っていたという可能性もあるか。


 だからこそ、その判断は俺に託されたのだろう。


 俺は笑みを消し、真っ向から『紅い星』を見下ろした。僅かに恐怖の色さえ浮かべている生物ではない何かは、形勢が逆転した事を悟ったのだろう。


「てめえらプロの『常識』は、俺には通じねえ」


 神に近付き過ぎた男は翼をもがれ、地に落とされるという。


 俺は拳の骨を鳴らし。ありったけの敵意を込めて、言った。


「――――初心者だからな」



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