プロローグ
綺麗な、綺麗な、雪。
私はお母さんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私はお父さんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私は小母さんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私は叔父さんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私は叔母さんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私はお婆ちゃんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
私はお爺ちゃんに「可愛い」と言われて嬉しかった。
嬉しかった。
綺麗な、綺麗な、雪。
みんなは雪を見ようともしないで私を褒めた。
綺麗な、綺麗な、雪。
無視されて可哀相。私のせいで、可哀相。
綺麗な、綺麗な、子。
私の家に来た。そして、『道に迷ってしまって・・・。』とか言っていた。
私は、この子も雪みたいに無視されると思った。
そう思ったから、聞いた。
綺麗な、綺麗な、子。
この子は本当に雪みたいに無視されるかしら?みんなが私じゃなくてこの子を褒めたらどうしよう?
私の方をちっとも見ないまま『綺麗』って言ったらどうしよう?家に入れたらだめだ。私が雪になってしまう。
そう思ったから、聞いた。
綺麗な、綺麗な、子。
私は聞いた。
「なんで目が蒼いの?」
その子はハッと眼を見開いて走り去った。
私に残ったのは少しの喜びと大きな後悔でした。