第1話 始まり
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―――ブゥン―――
漆黒の闇の中、1つの青白い光が浮き上がった。大きさにして大体30センチ四方……パソコンの画面だ。
『電脳時空ゲート1 開放』
『コード 1100101011110001010……11100100100001』
青白いディスプレイに、文字が走っていく。キーボードもカタカタと音を立てているが、肝心な人間が、パソコンの前にはいなかった。
『31番ポート 開放 プロバイダ座標逆探知中…』
『コード 001010110000100101011……001011010』
―――キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン―――
『座標探知完了、電脳時空ゲート2〜38 同時開放』
『コード 10100010101110110010……0101001』
『転送 開始』
刹那、そこらじゅうの空間一体に、稲妻が発生した。
先程のパソコンが黄色い火花を散らし、物言わぬ無機質の塊となる。
ドサリ、と何かが落ちる音。
しかしどこにも光は無く、それが何かさえ、確認できない。
静寂。
一拍。
どこか近くで、学校のチャイムとおぼしき合成音が響いた。
†
「さーて、部活に行くとしますか……」
明るい光に満たされている教室。ようやく授業やホームルームから開放されて気が抜けたクラスメイト達が、雑談やら追いかけっこやら格闘技やらを満喫していた。
僕は一人さっさとかばんを片付け、着々と部活へ行く準備を整えていた。
―――別に友達がいないとか、雑談やら追いかけっこやら格闘技やら掃除道具野球大会やら箒チャンバラやら何やらや何やらがつまらない低俗な遊びだと思っているわけじゃあない。
そもそもそんなちょっとした遊びが出来ないくらいじゃあ一介の中学生失格だろ、と僕は思う。
ただただ気分がさっさと行こうと急かしているだけで。
「じゃ、行ってくるわ!」
「じゃーな、ビル!」
「ビルさんアデュー!」
ビル……僕のニックネームである。パソコンが得意だと言う僕の特徴(と、言うと何だか実験動物かなにかの観察対象にされてる気がしないでもないのだが)から、大手ソフトメーカーであるマイク●ソフトの会長の名前の一部をとったらしい。
仕方が無いと言えば仕方が無いことだ。
なんせ僕は、さわやかーな見かけによらずパソコン部などやっている身なのだから。
校舎の北棟4階、視聴覚室よりあと10メートル弱。
さぁてさっさとレポートを仕上げてネットゲームでもやってようか。
あと5メートル。
ポケットから部長から預かっていた鍵を取り出した。
あと3メートル。
キィ挿入まで5秒前、4,3,2,1――――――。
僕はふと動きを止めた。
焦げ臭い。
まさか――――――火事!?
慌てて鍵を差込み右にひねり、勢いよく引き戸を開け、
……僕は固まった。