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第三十話;増大な罠

・・・国境付近での出来事を知らないクリスは、一人屋上で涼んでいた。

下の庭ではラウンが他の軍人と共に軍人訓練に励んでいる。

クリスは柵に顔をよりかからせながらそっとラウンを見ていた。

『・・・ヘタクソ』

クリスの口からほぼ無意識のうちにこぼれる。

ラウンはどうしても”剣”と言うような武器類を使うのが本当に苦手なようだ。

現に今も先輩の軍人に指導を受けている。

何でも出来ると思っていた奴が変な弱点があるとわかると本当に楽しい。

≪あいかわらず上達してないな・・・ああいうのを‘バカ”と言うんだ≫

クリスのの顔が思わずほころぶ・・・。

・・・っというより、自分の顔がにやついている事に気づいていない。

『人の失敗しているところをみて、そ〜んなにおもしろいんですかぁ?』

突然、背後からラウンの声がする。

振り返るとついさっき庭にいたはずのラウンが後ろで苦笑いしていた。

・・・クリス・・・硬直・・・

『ど、どぉしてぇぇ、お、お前が!!!?』

『・・・そんなに驚かなくても・・・。姫様が屋上にいるくらいすぐにわかりますよ。だいたい訓練が始まる頃になるといつも屋上でおれのヘタクソ〜な姿見て笑っているんですもん』

ラウンの言葉にクリスの顔が真っ赤になっていく・・・。

≪バ、バレてた・・・≫

≪いつも気配消してバレないようにしていたのに・・・≫

クリスの中でどこでばれたのか必死に検索するがまったく思い当たらない。

なんでラウンは知っているんだろう・・・

『ぶ、部下が訓練で怪我したら大変だろ!?だからこうして見ていたんだ!う、動ける手駒は多いほうがいいからな!!』

クリスがプイッとそっぽをを向き声を荒げる。

しかし、それを聞いたラウンはなぜか黙り込んだ。

『手駒、ですか・・・それもそうですね・・・』

ラウンがぼそっと言う・・・。

いつもならどこか笑みが混じっているのに今は違う。

どこか悲しそうで・・・切ない横顔。

『ラ、ラウン?』

クリスはいつもと様子の違うラウンに戸惑いを隠せない。

『・・・なんでもありません!さーて訓練に戻ろうかなぁ』

ラウンは苦笑いするとクリスの元を去ろうとする。

≪な、に・・・?私なにか傷つけるようなことでもいったけ?≫

『ちょっ、待っ――』

クリスがラウンの手を掴もうとした時だ。

・・・―― 突然、軍人達の悲鳴が二人の耳をつく。

クリスとラウンはほぼ同時に屋上の柵へ飛びついた。

   ・・・目を、疑った・・・

司令部の庭がまるで大きな鍋の中のように黒いヘドロがボコボコと湧き上がってくる。

そのヘドロは徐々に膨れ上がり、変形し、不細工な人型へ化けていく。

『邪魂!?ど、どうしてここに・・・!!』

クリスが思わず金きり声を上げてしまう。

国境には軍人がいたはずだ・・・なぜなんの通信もなかったのだろう。

ここにいる邪魂は恐らく千体は超えている。

ましてや、光の力でないと倒せない邪魂は本当に面倒な存在なのに・・・。

『姫様!!』

『あ、ああ・・・わかってる!!』

クリスは腰から光の剣を引き抜いた。

ここに邪魂がいる、つまりリリースやクローゼもいると言うことだ。

『お前はすぐ、司令部の者に緊急時を知らせろ!各司令部からも至急応援を!!』

『はっ!!』

ラウンが屋上を飛び出した。

クリスもラウンが行ったことを感じると屋上を出ようとするが・・・

その足が止まった・・・。

真後ろにリリースが黒いコートをたなびかせ突っ立っている。

クリスはキッと睨み付け、光の剣を向けた。

『探す手間がはぶけた・・・礼を言うぞ・・・』

クリスが言うとリリースはふっと鼻で笑う。

『お前に礼を言われるなんて思っても見なかった』

リリースも腰から闇の剣を抜いた。

『今日こそお前を殺す・・・』

『それはこっちのセリフだ・・・!!』

クリスがだっと駆け出した。

リリースの顔がにっと笑う。


『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』




同時刻、ラウンの前にも黒い影が現れる。

『お久しゅうございますわ・・・ラウン殿・・・』

クローゼが仮面の奥でにっこり微笑む。

ラウンは足を止め、挑戦的に微笑んだ。

『お前がここにいるって事は、リリースもいるってことかぁ・・・。絶対お前はここで倒してやる・・・』

『あらあら、女性相手に怖いですこと・・』

クローゼはさっと足を後ろに引くとラウンに突進していく。

ラウンはきつくクローゼを睨み付け、手を前に出した。



期って落とされた戦いの火蓋・・・だがこれはこの光と闇の戦いの他ひそむ見えない敵の増大な罠だったなんて・・・



知るはずもない・・・



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