第三話;手放す物
愛は、この日不思議な夢を見た・・・
‘愛はどこか宮殿に立ってる・・・。
しかし宮殿と言っても和やかではない。宮殿は炎に包まれ、悲鳴や
銃声が響いているだけだ・・・。
愛はそっと振り返ると黒いコートを着て、仮面をつけた女性が血の
ついた剣を愛に向けていた。
その剣は愛が拾って来た物とうりふたつだが、色が黒い。
<コイツが私の両親を奪った・・・
城の皆を殺した・・・
そして・・・ラウンを・・・>
愛の中に強い憎しみが溢れ出す・・・。
いつの間にか手には、あの拾って来た剣が握られていた。
「リリースゥゥゥ!!!」
愛は声を荒げながら、女性に向かって行く・・・”
はっ・・・、愛が目を覚ます。
<何・・・さっきの夢は・・・>
愛は疑問を覚えながらもゆっくり起き上がった。
なんの夢かも分からないが、何かが引っかかる。
「気のせい・・・だよね?」
愛は、そうつぶやきながら剣を見た。
今は夢のことでうじうじしてる場合じゃない。
昨日の変な化け物の方が重要だ。
<やっぱ・・・これのせい?>
愛が、サッと剣を持ち上げた。
今まであんな化け物に襲われた事なんて普通にない。
・・・まぁ、あった方がすごいが・・・
「確かに・・・この剣のおかげで助かったけど・・・」
もう、あんな化け物に襲われるのはごめんだ。
<学校に行く途中、元の場所に戻してこよう・・・。>
愛は、そう決め制服に着替え始める・・・。
守ってもらって、再び捨てるのは心が痛むが命には代えられない。
「ごめんね・・・」
愛は、そうつぶやくと剣を無理矢理バックにつめて部屋を後にした。
・・・「・・い!愛ってば!」
春花が、ずいっと愛に顔を近づけた。
「は、春花!!ど、どしたの!?」
「‘どしたの”じゃないでしょ!!さっきからぼーっとして。」
春花の言葉に愛が、ドキッとしてしまう。
あの剣を捨てたのはいいが、どこか罪悪感を覚えてしまうのだ。
「う、うん・・・。ちょっとね・・」
「どーしたのよ!恋への悩みなら相談にのるけど?」
「ち、違うって!!」
愛がブンブンっと苦笑いしながら首を横に振る。
「ほんと〜?愛が黙り込むなんて恋への悩みぐらいじゃん」
春花が怪しむかのように愛を見た。
まだ恋の悩みの方がありがたい・・・っと愛は思う。
「まぁ、家庭の事情すっよ」
愛はそういうと立ち上がった。
この後、代表委員会があって美術部の部長である愛は出席しないと
いけない。
「じゃあ、私委員会行ってくるね。春花、悪いけど部員の出席・・」
「分かってるって!!じゃ、達者でな!!」
春花がビシっと敬礼したので、愛も笑いながら敬礼する。
愛は、くるっと向きをかえ生徒会室に向かっていく。
<私には春花や家族がいるんだから、いつまでもあの剣事気にしちゃ
だめだよ・・・。>
愛はそっと生徒会室のドアに手をかける。
「忘れよう・・・」
愛はぼそっとつぶやきドアを開けた。
はたして愛はこれですべて事が終わったのか・・・
それはまた次のお話である・・・。