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第二十九話;破滅へ向かう光


――あの頃から8年という月日が流れた・・・。

  14歳を向かえ、精神面でも成長したクリスとラウンは一体どうしているのだろう・・・。



『おい!ラウン!!返事ぐらいしろぉ!』

・・・クリスが声を荒げながら城内を歩いている。

幼い頃は姫らしくドレスを着ていたクリスだが、今は黒い服の上に白のコートを羽織っている。

恐らくこの8年で光と闇の戦いが悪化していて、ドレスなど着ている場合ではないのだろう。

しかし、前までは短いおかっぱだったが今では髪をのばしていてポニーテールにしている。

せめてもの乙女心か・・・?

≪・・・あっ・・≫

クリスの足が止まった。

・・・中庭でラウンが何やらディオと話している。

≪何話しているんだろ・・・≫

クリスは窓からじっとディオとラウンを見る。

別にやましいことなんてないのに、足が進まない。

するとディオはポンとラウンの肩を叩き、どこかへ去っていった。

クリスは窓から外に飛び降りて、そっとラウンに近づく。

『・・・姫様?』

ラウンが前を見たままかしげる。

クリスの魔力を気配で感じとったのだろうか・・・。

『”姫様”じゃないだろ・・・人に行き先も告げずにこんなところにいやがって・・・』

クリスはぶつぶつと文句を言いながらラウンの隣りに座る。

ラウンが苦笑しながらクリスを見てきた。

その顔は8年前の面影を思わせる。

『だってディオの奴に呼び出しをくらったんですよ?』

『呼び・・・出し?』

『えぇ、軍隊の監督役にならないかと・・・。ディオはおれをどうしても自分の手駒にしたいらしくて・・・。

 まぁ、まだ14なんで15か16ぐらいになったら考えておくと一応言っときました。』

ラウンの言葉にクリスは固まる。

たった14歳で一隊任されるなんて・・・。

それほど魔力が強いのか、またはそれほど魔力の有無で出世が決まるのかのどちらかだ。

≪14で・・・出世なんてありえ――・・・≫

『っていうかありえませんよねぇ・・・』

ラウンが手をアゴにあてて考え込む。

クリスは思わずギョッとしてしまった。

『な、何がだ?』

『ディオですよ・・・ディオの奴、おれが6歳の頃から容姿が全然変わっていない気が・・・』

≪そっちかよっっ!!バカかお前!≫

クリスは心の中でツッコむが、はぁっとため息をついた。

ラウンの言うとおりディオの容姿は変わっていない。

まるで18、19歳から時間が止まってしまったかのように・・・。

『・・・バカ。ディオはアレ以上年をとらないんだ。8年もいてまだ知らなかったのか?』

クリスは平然と答える・・・。

ラウンはクリスの言った言葉が理解できなかったかのようにあぜんとしている。

『年を・・・とらない?』

『あぁ。あいつは何故かわからないが、あの容姿でずっと生きている。その証拠に私の・・・母の写真に

今と変わらぬ容姿で写っているんだ。家政婦達の間じゃこの光と闇の国が出来た頃から生きていると言うバカげた噂をする奴もいたな・・・』

『じゃぁディオっておれの兄さん的存在だったけど・・実はじぃさん?』

『・・・ディオの前で言ったら国外追求だけではすまないぞ・・・?』

クリスが呆れたようにラウンを見た。

当たり前の事をあえて言うラウンの心がわからない。

『とにかく、そんだけ生きてるからこそ王家とのつながりが使いのかもしれないな。側近と言う立場にあがっているのもそのためだろ・・・あいつも魔力を持つ一人とは言え、後ろに大きなチカラがないとあそこまでいかないな』

そういうとクリスは立ち上がり大きく背伸びする。

ラウンはその様子を不思議そうに見ている。

光の剣を腰にしっかり固定し、戦場に行く気満々だ。

『もう、行くのですか?』

『私はお前と違ってヒマ人じゃないからな・・・』

クリスは意地悪そうに言うがラウンは顔色一つ変えない。

『っていうか、そのヒマ人じゃない姫様がなんでおれの所に来たんです?』

・・・。

クリスの中の時間が止まった。でも冷や汗は止まらない。

『ひ、人のあげあしをとるな!!よ、よ、よ、用件が・・・あるからにき、決まってんだろ!?』

クリス・・・動揺しすぎ。

『じゃあ、用件をどうぞ?3・2・1・ハイ』

『はぁ!?え、えぇっと・・・そ、そうだ!4年前からリリースと一緒に現れるクローゼと言う女のことを調べろと言いに・・・―』

『・・・そんなもん、おれが4年前に調べたけど何も出なかったですよ?またおれに同じものを報告しろと?』

・・・。

『ち、違う!・・・けど。そ、そういえば!この前、闇の国へ攻めた時お前クローゼを追い詰めておきながらなぜとどめを刺さなかった!?‘敵に情はいらない”と昔から言ってるだろ!?』

『それを言うなら姫様だってリリースがスキを見せたと言うのになぜセシルをぶっぱなさなかったんです?姫があそこで強力なセシルをはなてば間違いなくリリースは倒せましたよ?』

・・・あーいえば、こーいう・・・。8年と言う月日でラウンはある意味強くなっていた。

クリスが喉に言葉をつまらせながら何か言おうとするとラウンもすっと立ち上がる。

『分かった!!姫様、まぁ〜た寂しくなっておれを探してたんでしょ?』

『なっな!?何言って・・・』

ラウンの言葉にクリスの顔が真っ赤になった。

・・・まさしく図星・・・。

『そ、そんな訳ないだろ!?だ、誰がお前の事・・・―』

『誰って・・・姫様じゃないんですか?』

『ち、違――っ』

クリスが顔を赤めながらラウンを殴ろうとする・・・が石か何かに足を引っ掛けてしまった。

身体の重心が前へとずれる。

『きゃっ・・・』

クリスが思わず声を上げると何かが自分を支える。

温かく・・・力強い腕がクリスに巻きついている。

『・・・姫が石に躓くなんて・・・何をそんなに動揺していたんです?』

クリスの顔の真上にはラウンの顔があった。その顔は必死に笑いをこらえている。

『お、おまっ・・・』

クリスは頭が真っ白になり何を話せばいいのか分からない。

心臓が高鳴り、顔もヤバイくらい赤くなっている。

≪ち、近・・・近すぎ・・・!!!≫

クリスはほぼ無意識のうちにラウンを突き飛ばした。

ラウンが思い切り尻餅をつく。

『いってぇぇ・・・』

『ば、バカか!?ひ、姫に、た、た、たいしての無礼ゆ、許さんぞ!!』

『無礼って・・・おれは姫を支えただけじゃないですか?あのままだったら怪我してましたよ?』

『う、うるさい!!この貧弱め!!バカ!あほ!死ね!!』

クリスは一方的に悪態をぶちまけると慌てて司令部の中に逃げ込む。

未だに心臓の音が鳴り止まず、顔の赤みが抜けない。

≪ば、バカか私は・・・。≫

クリスはそっと近くにあった柱に寄りかかる。

≪ラウンごときで何を取り乱してるんだ・・・。ドキドキして・・・アホじゃん≫

『アホくさ・・・』

クリスはぼそっとつぶやく・・・。

姫とその部下が想いを伝えることなんてけして許されない・・・。

ましてや、ラウンはどうせクリスのことなんて口うるさい姫君ぐらいにしか思われてないだろう。

だけど・・・だけど・・・――

≪それほど・・・ラウンの事が・・好きなのかな≫






そんな同時刻・・・異変は静かに起きた。


ザ、ザァー・・・ジ、ジィー・・―

――『こちら、国軍最高司令部。闇の国の現在の状況をどうぞ?』

国境警備隊の監視塔にそんな通信が入る。

しかし、本来なら通信受手係がいるはずなのに誰もいない・・・

いや・・・―― 誰もいないわけではなかった。

無数の死体がその場を血で汚している。

鉄臭い匂いが鼻をついた。

『な、なぜ・・何故あなた様が・・・。――ぐぁわああぁぁぁ!!』

軍人の痛々しい悲鳴が響き、奥のほうで血が飛び散ったと思うと悲鳴が消えた・・・。

奥のほうから血で手を汚した男がゆっくり通信機へ歩み寄る。

――『どうした!?何が起きた!?おい、応答しろぉ!!お・・・――』

ガシャン・・・男の手が通信機を見事に砕いた。

すると、いきなりもう一つの通信機を手にとる。

『・・・リリースへ伝えろ。光の国を潰すなら今だと・・・。まぁ、信じるかはそちらへまかせよう・・・』

男は闇の国に通信してるのだろうか・・・

男は微笑すると再び通信機をぶっこわし・・・立ち去る。

残されたその場には通信機の壊れたような耳障りな音が響いた・・・・


ザ、ザザザァァ・・・・ザザザ・・・ザザザザザザァァァァァァ―――




     ブチッ!!!



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