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第二十五話;城に居座る者

『何?姫様が皮肉れた?』

ディオが書類を整えながら家政婦達を見る。

『あの悪戯好きの姫が静まったのならそれはそれでいいだろ?おもちゃ代も掛からないし我々に何のデミリットもない』

・・・。

この人に心というものはあるのだろうか。

家政婦達はあまりの腹黒さに言葉を失う。

この前のディオは優しかったのにぃ・・・・。

『しかし、ディオ様。姫様はリニアの死以来まともに食事もせず、部屋にいても電気もつけずに一人泣いておられるのですよ?』

『それはいい事だ。食費も削減出来るし、電気代もかからない。』

・・・。

もう一度いう・・・

こいつに人の心という物はあるのだろうか・・・。

家政婦達は不審の目でディオを見る。

ディオはその視線に気づき慌てて咳払いをした。

『じょ、冗談に決まってるだろ!?』

・・・冗談に聞こえない・・・

家政婦達が更に不審の目でディオを見た。

『まぁ・・・手はうってある。』

『本当ですか?』

家政婦達の目がいっきに輝きを増した。

ディオはふっと笑う。

『私の友人で姫様と同年代の子供を持つ者がいるんだ。そいつは国境付近の村に住んでいて、いつ戦争に巻き込まれる分からないといっていたから引越しの準備もかねてその子供をしばらく預かろうと思ってる。そういう面倒な荷は同年代の子供に任せるのが一番いい・・・』

はーっははははは・・・・

ディオの悪代官ぷりに家政婦は言葉を失った・・・。



[数日後]


クリスが一人で廊下を歩いている・・・。

その手にはリニアから貰ったテディーベアーが握られていた。

≪リニア・・・さん・・・≫

クリスがいつの間にかテディーベアーを力強く抱きしめていた時だ。

『あっ!!姫様がこんな所にいました!!!』

≪・・・・・は?≫

クリスが後ろを振り向いた時突然、家政婦達がリニアを連れ去った。

クリス・・・呆然。

『は、離せぇぇ!!!』

『姫様にお客様が来られたのですよ!!』

『そんな事知ったことか!!』

クリスが怒鳴るが家政婦達はおかまいなしにクリスを連行していく。

家政婦のにやけた顔がとても気持ち悪い。

『ディオ様のお知り合いらしく、ぜひ姫もお会い・・・―』

『いい迷惑だ!!ディオだけ会えばいいだろ!?』

『そういうわけには参りませぬ!!だって・・・』

家政婦はにやっと笑い客間を指差した。

クリスの身体が再び床につく。

『だって姫を待ちながら、10人分のケーキを召し上がっておられるのです!!』

『ここで姫がその方と会っていただけなければ元も子もありませんわ!!』

・・・・・。

≪結局はそこかよ!!!!≫

クリスが心の中で叫ぶ。

ここは本当にケチな奴らの塊だ・・・(特にディオ)

『私はそんな奴と会いたくもない!!勝手すぎ・・・―』

『ディオ様!!姫様が会いたくて仕方ありませんそうですぅ〜!!』

『おぉい!!!!!!!』

勝手に事を進める家政婦達にクリスがつっこむ。

しかし、家政婦達はにっこり笑ってクリスを見た・・・。

クリスは困惑の色を隠せない。

『・・・無理矢理でも会わせる気か・・・』

『はい・・・!』

『少しは否定しろ・・・バカ・・・』

クリスは深く息を吐き、ドアに手をかけた。

後ろで家政婦達の視線が感じる。

≪会ってやるだけ・・・会ってやるだけ・・・≫

クリスはぎゅっとテディーベアーを抱きしめドアを開けた。


・・・・・・・・


クリスの目に飛び込んで来たのはディオとその前に座っている女性・・・

後・・・クリスと変わらないぐらいの一人の少年・・・。

『おお、来ましたね姫様・・・・』

ディオがにやっと笑う・・・。

クリスは初めて見た同年代の少年から目が離せない。

『あら、噂以上にかわいいお姫様ね・・・。ほら、ラウン!ちゃんと名前言って!!』

『う、うん・・・』

お母さんらしき人に背中を押されたラウンは席を立たされるとオモチャの兵隊のように手と足をカチンカチンにしながらクリスの前に行く。

クリスは思わず後ずさり・・・

『お、おれは・・・そ、そのぉ・・・』

『バカ!!自分の事は‘私”って言うの!!』

『あ、あ、あ、あ、あそ、そうだ・・・』

お母さんに小声で怒鳴られラウンはピシッと立つ。

『わ、私はラウン・カーウィンと申します・・・・』

ラウンの声は極限まで震えていた。

手にヘンな汗が流れているのがクリスからでも分かる。

『わ、私はクリス・ルーンベルト・・・です』

最初は強気だったクリスだが、予想もしていなかった来客に戸惑いを隠せない。

そんなクリスの肩にディオが手をのせられた。

『ラウンの家は国境付近の家らしくて、いつ闇の軍勢が攻めて来てもおかしくない状況なんです。だから引越しの準備が出来るまでラウンをここにおいてもよろしいですよね?』

『私は・・・別にかまわな・・・くない!!!』

クリスは流れに沿って‘Yes”と答えそうになったが慌てて否定する。

ラウンはクリスの声にビクっと震えあがった。

『だいたいこの私がなぜこの貧弱男と共に暮らさなければならんのだ!!こんな奴がいたらまともに呪文の練習すら出来ないだろう!!?』

『・・・・ひ、貧弱!!?』

ガビーン・・・!

ラウンがショックを受け、動かなくなった・・・。哀れ・・・

しかしディオは顔色一つ変えずに決めの一言を・・・。

『ラウンがいるいない以前に姫様はまともに呪文の練習した事ないでしょ』

・・・・。

『と、とにかくだなぁぁ!!』

クリス、一瞬たじろいだ・・・。

この時ラウンは内心‘逃げた”と思ったらしい・・・。

『こんな奴がいても体術の相手にもならんし・・・!!』

『あ、おれ・・・多少なら出来ますよ?』

『た、体術が出来てもまれに人が備わるという魔力がなくては訓練になら・・・―』

『姫様にはかないませんがそれなりの魔力は持っています。』

『ま、魔力が備わっていようとも使いこなせなければ・・・―』

『ある程度の基本呪文なら使えますが?』

『そ、そんな事いってじつは成績が一番悪・・・―』

『はい、一番良かったです・・・!』

・・・・。

恐ろしいほど完璧人間・・・。

クリスは言葉を失った・・・。まるっきり弱味がない。

『ひ、姫様・・・。お・・・いや私は姫様に迷惑をかけないようにしますから・・・ですからここで厄介になってもいいですか・・・?』

ラウンの心配そうな顔にクリスは顔が赤くなっていくのが分かった。

口をパクパクさせているのだが言葉が話せない・・・。

『か、勝手にしろ!!!』

クリスはそう叫ぶと乱暴にドアを閉め、出て行った。

≪なんなんだ・・・アイツ・・・!≫

クリスの顔を赤めながら扉の向こうにいるラウンの気を感じ取っていた。

ラウンが目に入ってから調子が狂いぱっなしだ・・・。

嫌がらせのつもりなのにどうも上手くいかない。

『ぜ、絶対追い出してやる・・・・!!』

クリスはボソッとつぶやいた。

幼いクリスの戦いは、はたしてそう上手く行くのだろうか・・・








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