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第十九話;陰なる者の苦悩

『あんたに私の家族も友達も私の暮らしてた村もすべて消されたんだ!』


涼蘭の言葉に愛は硬直する。

<わ、私が涼蘭のすべてを奪った・・・?>

困惑する愛をしりめに涼蘭は憎しみに満ちた目をこちらに向けている。

「あの時の事は14歳になった今でも夢で見るわ・・・。炎で巻かれた村、そして光の国の兵士によって殺されていく私の友達や家族。あんたが命令したんでしょ・・・あんたは自分の手を汚さずに私の村を滅ぼした・・・そして私のすべてを奪った・・・違うの!!?」

「わ、私は・・・・私は・・・」

愛は涼蘭になんと話せばいいのか分からずただ首を横に振ることしか出来ない。

頭の中が真っ白になり、すべての思考を止まってしまったかのようだ。

しかし、一つだけ分かる事がある・・・それは、

今の涼蘭はリリースの部下として愛を殺そうとしているのではなく・・・

すべてを奪われた被害者として愛を殺そうとしている事だ。

「クローゼ・・・」

諒が顔をしかめながらこっちに話しかける。

「お前の村が滅ばせたのは姫の命令じゃない・・・。姫様はそういう命令は出した事は一度もなかった。」

諒が言うと涼蘭はキッと諒を睨みつけた。

「光の人間なんて信用出来るか!!お前らみんなウソの塊だろ!!」

「クローゼ、まず話を聞け・・・!」

「うるさい!光の人間はすぐに自分の責任を他人に押し付ける・・・!」

「話を聞け・・・って!!」

「光の人間の話なんて誰が聞くか!!!」

涼蘭と諒がものすごい会話をしていると愛はそっと涼蘭に触れた。

涼蘭はビクッと体を震わせ、慌てて飛びのく。

「クローゼ・・・いや涼蘭。私は何も知らない・・・でも涼蘭は私が覚えてないだけでつらい目にあったんだよね。つらかった・・・でしょ?」

「分かったような口利くな!!」

涼蘭が愛に向かって手を前に出すが愛はじっと涼蘭を見ている。

その目は堅い決意で溢れていた。

「涼蘭・・・今から一対一で勝負しよ・・・。」

「な、何いってんだ!!殺されるぞ!?」

諒が怒鳴るが愛は無視している。

「もし私が勝ったら諒君をあそこから出してあげて!そしてもうこんな戦いもやめて!」

「じゃあ私が勝ったら・・・?」

涼蘭が聞くと愛は光の剣を握りしめた。

「私を殺して・・・でも諒君は助けてあげて。」

愛の言葉に涼蘭は少し驚いたように愛を見た。

今の愛が涼蘭にかなう訳がないのは愛だって分かってる。

しかしそれでも勝負に持ち込んだというのは死ぬつもりか奇跡にかけた事となる。

「鈴崎!!バカな事考えるな!お前は死んでいい人間じゃない!!」

諒の声が部屋中に響くが愛は顔をうつむいたまま涼蘭に剣を向けた。

涼蘭もゆっくり手をあげる。

「言っとくけど私本気であんた殺すつもりだから・・・」

涼蘭は楽しんでいるかのように笑いだす。

愛はそんな涼蘭をただ見ていることしか出来ない。

「死ね・・・‘セシル”!!」

涼蘭の手から黒い光が飛び出した。

愛は横に倒れ込み何とかかわす。

後ろの方で爆発音がして振り向くと後ろにあったふすまが見る影もないほどに灰と化している。

愛はぶるっと震えあがった。

<もう少しずれていたら殺されてた・・・>

<いや・・・殺される・・・!!>

愛はさっと横にずれる。

黒い光がさっきまで愛のいたところに放たれた。

畳がぷすぷすと燃えている。

「逃げてるだけじゃ私は倒せないよ・・・!」

涼蘭が笑いながらこちらに向かってくる。

愛はさっと剣をかまえ涼蘭に駆け出した。

「ああああああああああ!!!」

愛が剣を思い切り横に振った。

ブン・・・

光の剣が宙を斬る。目の前に涼蘭の姿がない。

<消え・・・た?>

愛がそんな事を思った時、背後に気配が立つ。

「これで終わりだよ・・・」

涼蘭の声が愛の背中に響いた。


「‘セシル”」


ドォォォォォォォォン・・・・

愛が屋敷の外に弾き飛ばされた・・・。

庭に愛が転がる。

「ゴホッ・・・・うっ・・グ・・・」

愛が体中の痛みに耐え切れず、涙が出で来た。

愛が倒れていると目の前に涼蘭が立つ。

その手には、さっきの衝撃で吹き飛んだ光の剣が握られていた。

「さようなら・・・光の姫・・・」

涼蘭の手に握られた光の剣が振り上げられる。

愛がぎゅっと目を閉じた。

<殺される・・・!!!>

・・・しかし刺された感触がない。

愛が恐る恐る目を開けると光の剣が顔に刺さる直前で止まってる。

剣先がカタカタ震えていた。

涼蘭の顔が引きつっている。


『お母さん!!!お父さん!!!』

‘涼蘭が炎の中で叫んでる・・・。”


涼蘭の手がぷるぷると震えている。


『いややぁぁぁぁぁぁぁ』

‘涼蘭が泣き叫ぶ・・・みんなが死んでいく・・・みんなが・・・―”

‘何もできなかった・・・見ているだけだった・・・。”

‘逃げ惑う人達もこうやって剣で刺し殺された・・・”

‘自分のしてる事はあの村を消した奴らと同じだ・・・・”


カラーン・・・

涼蘭の手から剣が落ちた・・・。

「す、涼蘭・・・」

愛は呆然と涼蘭を見ている・・・。

涼蘭はうつむいたまま手を震わせていた。

「す、涼蘭・・・」

愛がもう一度涼蘭の名を呼ぶ。

愛が涼蘭に触れようとした時涼蘭の手がいきなり飛び上がった。

涼蘭が涙目で愛を睨みつける。

「私は・・・許さない・・・ぜ、絶対こ、殺して・・・」

涼蘭が呪文を言おうとした時だ・・・。

愛の前に誰かが滑り込む。

・・・春花だ。春花が息を切らしながら愛をかばうかのように手を横広げた。

「は、春・・・花・・・」

「あ、愛のバカ・・・!!何やってんの!?」

春花が横で愛を睨みながら言う。

涼蘭はそんな二人を呆然と見つめる。

「ど・・・どうしてあ、あなたが・・・」

「それはこっちのセリフよ・・・。何が狙いで桜井諒を連れ出したの?それに愛まで・・・」

春花の言葉がその場に響く。

涼蘭は何も言わない。

愛はそんな二人をただじっと見つめていた。




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