第十八話;追い求める者達
後輩の言葉に固まる愛・・・
「ほ、本当に?」
「だから〜いつまでもいじけてちゃヤバイですよ!!!」
愛はそんな後輩の話をシカトして美術室を飛び出した。
なぜだか分からないが嫌な予感がする・・・。
涼蘭は単なる嫌がらせで諒に近づいたんではない気がした。
もっと・・・別の理由で・・・。
「す、すみません!!」
愛は体育館中に響くでかい声で叫んだ。
バスケ部の人達もこれから諒を探しに行くらしく、慌しくボールの片付けをしている。
「あなたは確か・・・」
「あの新藤先輩のご友人さまだよ!!」
「って事は近くに新藤先輩が!?」
バスケ部の後輩がざわついていると諒の同じクラスの男の子が近寄ってくる。
「君も諒を探しに来たのか?」
「そうだけど、諒君昼休みここに顔出してないの!?」
「ああ・・・用事あるとか言って・・・」
「分かった、ありがと!」
愛は再び駆け出す・・・。
その後も諒の行きそうな所を探したが、諒の姿は見当たらない・・・・。
「諒君、どこなの!!諒君・・・!!!」
愛の悲痛の叫びが校舎中に響く・・・。
<こんだけ探してもいないなんて・・・校舎にはいないのかな・・・>
愛が息を切らしていると昼休み終了のチャイムが鳴った・・・。
愛はだっと駆け出し、靴を履くと外に飛び出す。
校門まで行くが・・・鍵がかかってて開かない。
「この・・・やろ!!」
愛は無理矢理よじのぼり道路側へ降りた。
「諒君!!諒君!!」
愛の声が誰もいない道路に響いた。
しかし次の瞬間、愛の足元に何かが刺さる。
・・・光の剣だ・・・
愛は呆然と見ていたがそれをそっと手に取った。
「光の剣だかなんだか知んないけど私に力を貸して!!諒君が・・・諒君が今危ないかもしんないの!!だから・・・だか・・ら・・」
愛の涙が剣に落ちる・・・。
「私もちゃんと戦う・・・もう逃げない・・・。だから・・・あなたの力を私に貸して・・・一緒に戦ってよぉぉぉぉ!!!」
愛が涙ながらに叫んだ時だ。
剣が愛の思いにこたえるかのようにどんどん輝きだす。
それはまるで泣かないで、と愛に呼びかけているようだ。
「光の・・・剣・・・。」
愛はぎゅっと剣を握り締める。
『‘イースト”と唱えて・・・行きたい場所を思い描きながら・・・』
そんな声が一瞬聞こえたような気が愛にはした・・・。
それが光の剣の声なのかは愛にも分からない・・・でも・・・
<諒君を助けたい・・・諒君のいる場所へ・・・!!>
やるしかない・・・!!
「‘イースト”・・・!!!」
すっ・・・
愛は光の剣の輝きに包まれながらその場から消えた・・・・。
そのころ3−Aは愛がいなくなった事で大騒ぎしていた。
「春花!!愛どこに行ったか知んない!?」
クラスメイトが聞くが春花は思わず顔を反らす。
「あんな奴・・・また‘諒君”とか言って浮かれてんじゃないの・・・」
「春花・・・愛の事心配じゃないの?」
春花のそんな態度に見かねた女の子がそっと聞く。
春花は何も言わない・・・。
「春花は愛の事嫌いじゃないでしょ?」
「そ、それは・・・」
「仲直りのきっかけになるかもしんないし、一緒に探そ・・・―」
「た、大変だぁぁぁぁぁぁ」
クラスの男子がいきなり声をあげる。
「鈴崎の奴、もしかしたら校外に出て桜井と高倉を探してるかも!!おれの後輩が校門よじ登ってる所をみたらし・・・いぃ!!?」
男子生徒が話してる途中で春花がその子を壁に叩きつける。
「高倉って・・・そいつもいなくなってんの!!?」
「そ、そうだけど・・・」
春花はそれだけ聞くと教室を飛び出した・・・。
後ろでクラスメイトが叫ぶが耳に入らない・・・。
「・・・のバカ!!あれほど涼蘭に近づくなって言ってるのに!!」
春花は一目散に学校を飛び出した・・・。
「あでぇ!!!」
愛がべちゃっと床につぶれた。
「いったぁぁぁ・・・ここどこ!?」
愛が辺りを見渡すとお茶の道具やらお花の道具が置いてある・・・。
<ここはもしかして・・・>
「ようこそ・・・高倉家へ・・・」
涼蘭の声がどこからか聞こえてくる・・・。
愛はばっと立ち上がり、剣を持ち直す。
「た、高倉さん・・・!!諒君は、諒君は・・・!?」
「それなら・・・」
いきなり目の前のふすまが開いた。
そこの部屋ぎりぎりに書かれた魔法陣・・・。
そしてその中心には諒が横たわっている。
「諒君・・・!!!」
「鈴・・・崎・・!こっちに・・・来るな・・・」
諒が顔を引きつらせらが言う。
<な、なんで!?>
愛がその場で固まっていると背後に何者かが立つ。
振り返るとその顔を思い切り叩かれた。
愛はどうする事も出来ず、床に倒れこんでしまう。
「・・・っ!!」
愛が顔をあげるとそこには黒いコートを着た涼蘭が・・・。
「ここの屋敷には光の力を抑える札が貼ってあるの。ここではチカラも使えないしなおかつ、ラウンのいる部屋は儀式をおこなう私以外は体すら動かせないのよ?」
涼蘭がくすくす笑う。
この状況を見れば涼蘭の正体がすぐに分かった。
「高倉さん・・・いや、クローゼと呼んだ方がいいかな?」
愛がきっと涼蘭を睨む。
よく考えたら涼蘭のあの笑みはクローゼとそっくりだ・・・。
そもそもなぜ態度が急変した時に気づかなかったのだろう・・・。
「別に好きに呼べば?私は今からラウンを取り込んで今よりもっと強い魔力を手に入れるの・・・あんたを倒すために・・・!!」
「そんな事・・・私がさせない!!!」
愛が剣をかまえる。
「やっと仇が討てるわ・・・これで死ねたら本望ね・・・」
涼蘭も手を出す・・・しかし愛は涼蘭のある言葉に引っかかりを覚えた。
仇が討てる・・・
確かにそういった・・・。
「待って・・・今、仇が討てるって・・・」
愛が涼蘭に聞くと涼蘭は歯ぎしりをする・・・。
「私は・・・あんたを殺すためにこの死と隣り合わせの戦場に立つ決意をしたの。それがなぜだか分かる?」
涼蘭は憎しみのこもった目で愛を見た。
「あんたに私の家族も友達も私の暮らしてた村もみんな消されたんだっ!」