第十三話;決められた道
「おはよー・・・!!」
「おはよう!!」
みんなの笑い声が通学路に響き渡る・・・。
愛はその中を一人歩いていた。
この間の大怪我のせいで約一週間、入院していたのだ。
そして今日からいつもの日常が再び始まる。
愛はそっと歩きながら手のひらを見つめた。
・・・あの時・・・‘セシル”を自分にも打ち込めた事実が重くのしかかっている。
自分は本当に姫なのか・・・
異界の人間なのか・・・
そして・・・今までの記憶はウソなのか・・・
思う事も色々ある・・・。
<気にしちゃだめ・・・今現在を大切にしなきゃ・・・>
愛はブンブンと首を横に振った。
と・・・その時誰かが愛の頭の上に手を乗せる。
「一人で首振ってると怪しいぞ?」
諒が隣に来てそっと微笑んだ。
しかし、まだ体中に痛々しい包帯やら巻いてある。
「諒君!!!・・・ケガ・・・平気なの?」
「まぁ・・・普通に生活してる分なら問題はないな・・・」
諒は苦笑いしながらつぶやく・・・。
とりあいず無事な事にこした事は無い。
「とにかく今は気は抜かない方がいいだろう・・・奴らが攻めてこないって言う保障はどこにもないからな・・・。」
諒の言葉に愛は黙り込む・・・。
あの日から思っていた・・・自分は結局戦わないといけない・・・。
命を取り合い、死と隣り合わせの戦場に立たなければいつまでも事は終わらないのだから・・・
諒はそんな愛の気持ちを察したのか、そっと愛の頭をなでる。
「大丈夫、だなんて言えないかもしれない・・・。だけどオレが命かけても守るから・・・お前を絶対奴らなんかに殺させない・・・!!」
諒の意志の強い瞳が愛をみてにっこり微笑む。
「う、うん・・・」
愛は慌ててうなずいた。
顔がむしょうに熱く、赤くなっているのが自分でも分かる。
<な、何赤くなってんのさ!!仲間として助けるって事でしょ・・・期待しちゃダメ・・・>
愛がそんな事を自分に言い聞かせていた時だ。
何かがものすごいスピードで駆けてくる・・・。
「さ〜・・く〜・・ら〜・・いぃぃぃ!!!!」
遙か後ろの方で聞き覚えのある声が聞こえてきた・・・。
諒は顔をこわばらせながら後ろを見ると、春花の飛び蹴りが諒の顔に食い込む。
「ぎえぇぇぇぇぇ!!!!」
ドカァァァ・・・諒の体が近くの塀にうまった・・・。
春花はスタッと着地する。
「よー・・・くもこりずに愛に近づけるわねぇ・・・。どういう神経してんだこらぁぁぁ・・・・」
春花がボキボキと指をならし殺気(?)を漂わせながら諒を睨んでいる・・・。
・・・どこのヤクザの組長ですか・・・
「は、鼻折れ・・・」
「あぁん!?乙女の敵にンな事いう資格なんてねぇんだよ!!!」
春花が思い切り諒を蹴っ飛ばす・・・。
・・・まだケガが治りきっていないのに・・・
「は、春花!!」
愛が慌てて呼ぶと春花は諒を突き飛ばし愛の元に駆け寄る・・・。
「愛!!ケガ平気なの!?」
「うん・・・もう平気!!!」
愛も微笑むと春花はハアっとため息をつき、愛の手を握った。
「早く学校いこ!!みんなに愛の退院教えなきゃ!!」
「えっ・・・ちょっと待ってよぉぉ!!!」
二人は学校に向かって駆け出す・・・が一つ大きな忘れ物をしていた・・・。
「女って・・・マジこえぇぇ〜・・・」
諒は鼻を抑えながら、女の怖さを実感していた・・・。
{in・昼休み}
<早く美術室にいかなきゃ、春花に殺されちゃうよぉ〜・・・>
愛がマンガを片手に階段を昇っていた時だ・・・。
ドカ・・・いきなり誰かとぶつかってしまう。
手に持っていたマンガがバサバサと落ちてしまった。
愛はしりもちをついた所をさすりながらキッと睨みつける。
「ちょっとぉ!!どこに目ん玉つけてんのォォ!!!」
「す、すみません!!少しぼーとしてしまって・・・―」
謝りながらまんが本を拾うその子の顔を見て愛は思わず固まる・・・。
生徒会副会長・・・2年A組 高倉涼蘭・・・。
あっちも愛に気がつき、固まってる。
<この子、私にイヤミばっか言ってくる子じゃん・・・。(第四話参照)>
愛はしばし黙っていたがある事に気づく・・・。
この上は美術室や理科室があるくらいで涼蘭の行きそうな場所などないはずだ。
なぜこんな所に・・・
「あっ・・・えっと・・・わ、わたくし急ぎますんで!!!」
涼蘭は拾ったまんが本を愛に押し付けると、慌てて階段を下りて行く。
<な、なにあれ・・・。変なの・・・>
愛は押し付けられたマンガ本を見つめているとある事に気づく。
「ちょっ・・・。た、高倉さん!!!」
愛が叫ぶと涼蘭はピタっと止まり愛を見た。
「このまんが本、私のじゃないよぉ!!?」
愛が一冊のマンガ本を手に取りひらひらと振る。
愛の持っていたマンガ本はすべて恋愛もの・・・なのにこの本は柄的にギャグマンガと見て間違いないだろう。
涼蘭は顔を真っ赤にしながら慌てて階段を昇ってくる。
「もしかしてここで隠れて読んでたの?」
「ち、違います!!!」
涼蘭は恥ずかしそうに愛からマンガ本をひったくった。
「わ、わたくしはこんな子供じみたものを読むはずが・・・―」
「あっ、やっぱこれうちのだ」
「そ、そんなはずありませ・・・」
愛のカマかけにひっかかった涼蘭はぱっと口をおさえる・・・。
そんな涼蘭を見て愛は思わず苦笑いした。
「なんで隠すの?別に面白そうなマンガ本じゃん!!」
「す、鈴崎先輩には分かりませんよ・・・。」
涼蘭が顔を反らしながら話す・・・。
「鈴崎先輩も知ってるでしょう・・・私の家は全国でも有数の茶花道の名家だって・・・」
・・・。
<知らなかった・・・。ごめん・・・>
愛の頭にはそのような知識は入っていなかった〜。
そして涼蘭には絶対言えない・・・。
「周りの人達もわたくしを期待してるから・・・勉強も頑張って・・・生徒会の副会長にもなって・・・
遊びたいのを我慢してお茶やお花の稽古をやってきました・・・。でも・・・わたくしだって人間です!!みんなと同じものを見て暮らしたい!!」
涼蘭の声がかすかに震えてる・・・。
「わたくしは大人達の人形じゃない・・・」
涼蘭はそういうと両手で顔を覆い、涙を流す・・・。
愛はそんな涼蘭を見て、思わず自分と重ねてしまった・・・。
自分も涼蘭と一緒だ・・・。
殺し合いたく無いのにもしかしたらこの手で誰かを殺してしまうかも知れない。
決められた道を無理やりにでも進まなければいけない・・・それが愛に与えられた使命だ・・・。
「私もなんとなく分かるよ・・・」
愛がそっと涼蘭を撫でた・・・。
「そうだよね・・・つらいよね・・・苦しいよね・・・逃げ出したいよね?」
愛はそういうと涼蘭を抱きしめた・・・。
つらいのは自分だけじゃない・・・・
愛は初めて自分にそう言い聞かせられたような気がした・・・。
こんにちわ〜!!毎度おなじみのざしきのわらしです!!
皆さんはこのGWどうお過ごしになりますか?
わたしは友人の合間をぬって相変わらず話を進めに出歩く程度しか行きませんね・・・。
なんて不幸な女・・・
では、たくさんのご感想をお待ちしています!!
by ざしきのわらし




