第十二話;眠れるチカラ
諒とクローゼがだっとかけだした。
「‘セシル”!!」
「‘セシル”!!」
二人の手から光が飛び出し、ものすごい爆発が起こる・・・。
諒はさっと地面を蹴り、外に飛び出した。
後ろからはクローゼが追ってきている・・・。
<よし・・・このまま来い・・・。そうすれば鈴崎には手は出せないだろう・・・>
諒が攻撃しようと手を前に出した時だ・・・。
「スキがありすぎなんだよ・・・」
突然後ろの方から声がした。目の前にクローゼはいる・・・まさか・・・
「‘セシル”・・・」
ドォォォン・・・諒が黒い光に弾き飛ばされた・・・。
「・・・ッ!!」
諒が倉庫に激突する・・・。体育着が赤い・・血に染まっていた。
「く・・・・そぉ・・・」
諒が体を動かそうとするが、激痛が走り・・・起き上がる事すら出来ない。
リリースはクローゼの隣に行き、何やら話すと諒の元に近づいてきた。
リリースは諒の前髪を掴むと、そのまま横に突き飛ばす。
「貴様のような奴に私を倒せるわけないだろうに・・・」
哀れむように諒見ると、諒の背中を足で踏み潰す。
「あああああ!!!」
体を走る痛みに諒が悲鳴を上げた・・・。
「さて、ラウン・・・。お前は昔、今と同じ目にあったなぁ・・・。
そして私はお前を殺した・・・つもりだったが、並みの‘セシル”をこんな
至近距離でうたれたのにもかかわらず、まさか生きてるとは・・・。」
リリースの声はかすかに笑みさえ混じってる・・・。
「今度こそ・・・あの世に送ってやるよ・・・」
リリースの手が、コートのすそからゆっくり出る・・・。
「死ね・・・」
・・・ドォォォン・・・
外からものすごい爆発音が響いてきた・・・。
愛はそっと箱の間から出る。
<諒君・・・大丈夫かな・・・。>
窓から外を覗くが、諒の姿もクローゼの姿も見えない・・・。
<私・・・このままでいいのかな・・・>
愛はふと、そんな不安に襲われた・・・。
確かに、あんな訳の分からない連中と命の取り合いをするなんてごめんだ。
しかし諒はそんな自分のかわりに必死で戦ってる・・・。
このままの生活を保ちたい・・・過去が偽者だと信じたくない・・・
そんなの、ただ諒に甘えてるだけだ。
現に諒はいつも死と隣りあわせ・・・自分はただ震えているぐらいしか
出来ない・・・。
思い出や生活なんていつでも作れる・・・。
だが命は消えたら最後、作る事など・・・出来ない。
<行かなきゃ・・・>
愛は倉庫の入り口の扉を開けた・・・。
何も出来ない・・・それでも何かやらなくてはいけない。
不思議とそんな思いが出てくる。
「り、リリース!!クローゼ!!私はここにいるぞ!!」
愛が叫ぶがまったく応答がない。
愛はだっと駆け出した・・・。
なんだか・・・嫌な予感が止まらない。
「諒君・・・!!!どこなの!?返事・・・―」
愛の足が止まった・・・。
目の前にクローゼとリリースがいる・・・。
いや・・愛の目にはその二人は映っていない・・・。
リリースの足元でただ赤く染まりピクリとも動かない諒・・・。
愛は呆然とするしかない・・・。
「あら・・リリース様・・。もう一人来ましたわ」
クローゼが怪しく微笑むが、リリースはちらっと愛を見るといきなり
クローゼの襟首を掴む。
「り、リリース様!?」
「お前・・またルーンベルトに手を出したな!!!??」
リリースの怒鳴り声があたりに響く・・・。
その怒りようは尋常じゃない。
しかし・・・愛にはそんな事どうでもよかった・・・。
<諒君は・・・私のせいでこんな事になっちゃったんだ。
私がこいつらに殺されていたら・・・諒君は・・・諒君は・・・>
愛の目から涙がこぼれる。
すべて・・自分のせいだ・・・。
「あんた達・・・ふざけないでよ・・・」
愛の声が低く・・・悲しみを押さえ込みながら震えている。
<私にチカラがあれば・・・>
「なんで諒君殺したの・・・私だけ殺せばいいじゃない・・・」
<諒君はこんな事にはならなかった・・・。>
「私の周りの人たちをなんの権利があってきずつけるのよぉぉぉ!!!」
<私にチカラがあれば、みんなを守れるだけのチカラがあれば!!>
愛が拳を握りしめた時、手に異様な熱を感じた・・・・。
温かい・・・というより熱い・・・
「ふん・・・光の姫のざれ言なんて聞きたくねぇんだよ!!!」
「クローゼ!!」
クローゼはリリースの静止を聞かずに駆けていく。
愛の手が自然とクローゼに向けられた。
体の全神経が血で汚れた右手に集中する・・・。
<いける・・・いけ・・・!!!>
「‘セシル”!!!!」
愛の手から諒の出す光と比べ物にならない強大な光がクローゼに向かって
飛び出した・・・。
愛は自分で出した光の反動に体を支えきれずそのまま尻餅をつく。
「な・・・!?」
クローゼは予想外の事に慌ててその場から離れた。
ズゥゥゥン・・・・
ものすごい爆発音と爆風が止むと、倉庫がまるまる一つ消えている・・・。
<な、何コレ・・・これが私のチカラ・・・?>
愛が呆然と消えた倉庫を見ている。
人間じゃない・・・人間じゃない・・・
愛の頭の中でそんな言葉がぐるぐる回る・・・。
「・・・今日のところは引くぞ・・・」
リリースがボソっとつぶやく・・・。
「な、なぜですか!?ルーンベルトはあんなに弱っていて・・・―」
「だが、まともにコントロール出来ないクセにあんなバカでかい‘セシル"
をうちこまれたらこちらの身が持たん・・・。」
「で、ですが!!!」
クローゼが反論する前にリリースはすっと消えた・・・。
クローゼは愛にガンつけるとすっと消える・・・。
「り、諒君!!!!!」
愛が慌ててかけよった・・・。
「諒君!!諒君!!諒君・・・」
愛が必死に呼びかけるが、諒の目は開かない・・・。
「いやだよ・・・死んじゃやだよぉぉぉ!!!」
「死んでねっつうの・・・」
・・・・。
愛が思わず固まる・・・。
諒がはぁ・・・とため息をついた。
「生きてた・・・」
「生きてちゃダメなのか?あー・・くそ・・・体中いてぇ・・」
諒が体をおさえながら起き上がる・・・。
「鈴崎が真剣になって呼びかけて来るから死んだフリしてたんだ!!
おれの演技うまいだろ?」
あははは〜、のん気に笑う諒に対し愛は怒りに震えている・・・。
自分がどれほど心配したのかまったく諒に通じていない事がよ〜く
分かった・・・。
「あ、あれ?鈴崎怒っちゃった?」
諒が心配そうに顔を覗き込むと、愛の拳が諒の顔にのめり込む。
「ぶぇぇぇ!!!」
「小僧が・・ウチがどれほど心配したと思ってんじゃぁぁぁ!!!」
キシャーーー・・・
愛の顔が完全に鬼化した・・・。
その後、諒が生きて帰れたと言う保障はどこにもありません・・・。
こんにちわ!!
本日も友人の家から書き込んでんでます!!
もう十二話に突入です・・・早いのか、遅いのか・・
この作品は夏休みまでに終わるのでしょうか・・・。
それは私にはも分かりません。
それでも末永くこの作品を見守りください!!
それでは、ご感想をお待ちしております。
byざしきのわらし