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遺手紙  作者: きりもんじ
33/33

コペンで挙式

〇あなたはもう忘れたかもしれないが?


翌朝早く件の青年が現れました。


「よろしければ会館まで行きましょうか?すぐ近くです」

「よっしゃ、マメタン行ってみよう」


何か見覚えがあるなと思ったら、あのホモおじさんの家の近くで

こぎれいな和式の平屋が見えてきた。前庭があって清楚な感じだ。


寺という感じでも教会という感じでもない。純和風。

母屋の入り口ドアを開けると、曇りガラス戸の向こうの仏間で、


「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、・・・・・」


と数人の元気の良い題目の唱和が聞こえる。青年が右手の居間を指差した。

あるある日本の雑誌、単行本、新聞などなど。長く欧州を旅していると

誰でも日本食が恋しくなる。と同時に活字にも飢えてくる。


あれば1ヶ月前の雑誌でもむさぼり読むのだ。ここの雑誌はまだ新しかった。

夢中になって二人で本を読んでいると、例の青年が管理人さんを連れてきた。


「やあごくろうさんでんな。はじめてでっか?」

「どっかでみたことありますね?」

「インマーマンシュトラセの日本食品店につとめてます」

「ああ、あの店の・・・。何か日本の本が一杯あると聞いてきたんですが、

2,3冊借りていっても良いですか?」

「ええ、どうぞどうぞ」

「じゃ、これとこれとをお借りします。12月25日頃に返しにきますので」


題目の声に圧倒されて挨拶もそこそこに靴を履きかけた、とその時。

仏間の曇りガラスがすっと開いて、なんと驚いたことに題目を元気

一杯に唱和していたのは3人の長髪ヨーロピアンヒッピーでした。


てっきり日本人かと思っていましたが青い目のヒッピーだったとは全く想定外。

会釈をしてそろりそろりと外へ出ました。



○あなたはもう忘れたかもしれないが


おおつき、おがわ、ぼんぼん、ひょうきん、山男、

映画俳優、イスラエル。みんなよく頑張ってくれました。


ついにクリスマスも終わりデュッセルに集結しました。

大成功でした。もうお札を数えるのも面倒な状態でしたが、

総売り上げは日本円で1000万円を超えていましたね。


みんなを引き連れて再びコペンへ凱旋。盛大に結婚式をやりました。

とても寒かったですね。そう、あなたはウェディングドレスの下は

下着だけでしたから。大通りを歩き、人魚姫のまえでお姫様抱っこ。


あちこち写真を取りまくっているうちに、あなたはその晩高熱を出しました。

さあ、日本に帰るぞ!何とかローマ行きの飛行機に飛び乗って、


「今どこら辺?」

「デュッセルの真上くらい」

二人はそろって真下に手を合わせました。

「デュッセルドルフ、ありがとう!」


                         -完-

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