青い目の仏教徒
○あなたはもう忘れたかもしれないが
バイロイト。ほんとに大変な目にあわせてしまいました。
その前の回では新聞に載ったりしてすごく受けがよかったのですが、
あの地下道とあの橋のたもと。地下道から橋に戻ったらあなたの姿は
ありませんでした。とうとうあなたは捕まりました。
警察署の前で待つことしばし、あなたは元気で出てきました。
強がってけど大変でしたね。ほんとはきつく抱きしめてやるところなのに、
そういうことは結局一度もありませんでしたね。商品は没収。
「なんて書いてあるの?」
パスポートのスタンプともらってきた紙に書いてある内容を必死で訳すと、
「1ヶ月以内に出て行きなさい。半年間は再入国禁止」と書いてありました。
「クリスマスまでは大丈夫、よかったね、ばんざーい!」
もうこんなことではへこたれません。
二人はそれなりにたくましくなってはいましたが・・・・・。
〇あなたはもう忘れたかもしれないが?
12月9日の夕方早めに切り上げてアウグスブルクから
アウトバーンに入る。入り口ランプの緩やかなカーブで
日本人らしき若者がヒッチハイクをやっている。
懐かしき今では少ないカーキ色の登山用リュックでした。
背中に『世界広布』と書いてあります。
「どこいくの?」
「あ、日本人の方ですか?デュッセルドルフです」
「OK。俺たちもデュッセルや」
ヒッチの会話はいつも決まっている。結局、独協大学の1年生で
着いたばかり、デュッセルドルフに会館があるのでそこに行くという。
「会館て何の会館なの?」
「SGIの会館です。昨日はフランクフルトの会館を訪ねました」
とても元気だ。質問をするととてもうれしそうにはきはきと答える。
「背中に世界広布と書いてあるけどどういう意味?」
と聞くと待ってましたとばかりしゃべりだした。長距離ドライブは
ヒッチハイカーがいろいろとおしゃべりしてあげるのが礼儀だ。
眠気覚ましにちょうど良いのだ。
「ふーん。法華経を世界に広めようって訳?」
「はい、そのとうりです」
「その会館に行けば、日本の本いっぱいある?」
「ええ、いっぱいあります。ぜひおこしください。ユースの近くです」
まだ一度も行ったことがないのにこの青年はもう自分の会館のような口ぶりだ。
夜の10時頃にユースに着いた。確かに会館はすぐ近くだった。
彼を下ろし久しぶりにユースの駐車場で眠る。