やさしい悪魔
目の前に移るのは白い光と暗い闇
私はふと手を見た
そこには血まみれの手があった
視界の下のほうに足が見える
右を見ると私の大切な友達の一人が血まみれで倒れていた
金色になびく髪と白い肌にも赤い色が混じるように流れている
左を見ると私の大切な友達の一人が血まみれで倒れていた
薄い青紫の髪と褐色の肌に赤い色が染まっていく
二人とも私を好きだと言ってくれた
私の大切な人
どちらも選べないくらい大切な人
すると闇が私に声をかけた
「ここで一つ魂を持ち帰ればならない。お前はどちらを手放す?」
「金色の髪の男か、青色の髪の男か、選択は二つ。どちらを選びますか?」
静かに響く低い声
どうして私が選ぶの?
・・私そんなの、選べないよ
「選択肢はもう一つあるわ。」
「・・?」
「私を連れて行きなさい。魂が一つなくなればよいのでしょう?」
「・・・お前は無条件に生きる権利があるのだぞ。なぜここで朽ちる必要がある?」
「どちらを選んでも、後悔する。そんな生き方私は嫌いなの。生きてる意味ないわ」
「・・・」
白い光が彼らをやさしく包む
「あなたの意思、しかと受け止めましょう。」
黒い闇が私を犯していく
とろみのある沼の中に溶けていくような不思議な感覚
不安もなく私は身を預けた。
あの日
死ぬ予定ではなかった魂を持ち帰ってきて以来、
黄泉の国でこの少女は目覚めることがなかった。