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仲介  作者: あ行
2/6

2取

「なんでこんな奴、あやさなきゃならないんですか……!」

 こんな奴と雑用に指をさして長を威嚇する。

「いいじゃないか。一匹増えたって、変わりゃあしないじゃろう。」

「雑用でしょう?()れは……」

「ふっ、自分で言ったじゃないか。仲介。身分なんか決めなくてもいいと。雑用、接客、料理・藥そして(わし)のどこかにいなくてもいいと。」

 ごもっともだ。()れがそうしたくて長に頼んだのだから。

「それに、」

 と、扇子で顎を指された。

「貴方のことは知っている。」

「……うっ、」

 余裕たっぷりに見つめてきた。威圧感が全身に漂う。

「まぁ、いいけど。今回は撤回だ。雑用、来い。」

 袖を廻して去って行った。

「…………。」

 取引の所へと移動する。

 ベチっ

「いだっ!」

 誰かが私の前で転んだ。この身なり、雑用か。さっきの雑用とは違う奴。無視して行こう。

「…………。」

「いった……誰ですか?こんな油を撒き散らしたのは。」

 背後で声が聞こえた。

「大丈夫か。」

「……え、」

 (ひざまず)く私を見上げた。私に助けてもらえるなんて思ってもみなかったのだろう。

「だから、大丈夫かって。」

 苛立ちの念が声に乗る。

「大丈夫……です。」

「そうか。」

 雑用も見過ごせないなんて。まだまだ分かってない。

――――――――――――

「米は仁拾(にじゅう)俵。……え?できない?そこを何とか。」

 黒い影を着た取引相手が、コツコツと机を叩く。

「錢が足りないと。ははぁ、左様でございますか。私の長にも仁拾と言われてまして、それに」

 三日月の目を付けた相手にぐいっと寄る。

「ちと()が高いんじゃあないですか?私どもはあの有名な旅館でございます。これじゃあ、取引不成立だなぁ。」

 見下ろした。相手は布を纏ってあたふたしている。

「はっはっは。分かってくれれば良いんです。こんな(くに)の中、気張っていきやしょうや。」

 ポンと肩に手を置く。もう貴方は私の支配下ですよと。

「…………。」

 また自室へ戻ろうと廊下を歩いた。斜陽が吹き込む。

「やぁやぁ、仲介や。またあったのぉ。」

「お疲れ様です。」

 なんだなんだ。また雑用を押し出してきたのか?

「くはは。そんな目で見るな。雑用はこの通りおらんぞ。この道を通っただけじゃ。」

 目?隠してるはず……、

「くはは。ちゃーんと隠れとるぞ。それじゃあな。」

 と、肩に手を置かれて去って行った。

「…………、」

 部屋に入った。

「あれ、」

 部屋を見渡す。何かが違う。いつもの、小説、キセル、湯呑み。

――七輪

 七輪だけ位置がずれていた。

「あれー?こんなとこにズラしたっけ?まぁ、いいか。」

 小説に手を伸ばす。感動する話を脳に食べさせて。

「――、―介、」

「ん、あれれ。またか……。」

 襖に誰かいるようだ。またご飯がどうとかこうとか言ってるのだろう。

「あ、」

「ご飯の時間だよ。來て。」

 長と一緒にいた雑用だ。世話を押し付けられそうになった奴。

「はぁ、そうか。」

 ピシャ

「え、え、」

 襖を閉じられた。長に怒られる。

 ピシャ

「おい、勝手に開けるな雑用が。」

「僕が怒られるんだ。早く食べて。」

「いらん。お前が食べろ。」

「! いいの……ん、ん゙ん。早く!」

 ぐいぐいと袖を引っ張ってくる。こうなるなら、地位ぐらい決めときゃ良かったかもな。

「分かった分かった。私に触るな。」

 七輪が駄目なら他の方法も探しておこう。

雑用→子供

雑用 (敬語)→転んだ子



  この部屋はメニーメニーモイスチャーね。

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