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**ディスティニーのやり直し**

ディスティニーの奮闘回です。

一応は本編と関わりはありますが後半部分はタイトル通りディスティニーもこんな事をしてましたよ…というような感じの話になりますので無視しても問題はないと思います。


「ディスティニー・エーデルオーク!君は私の婚約者でありながら私の品位を著しく落とした。

 その罪は重く、処罰は国外への追放とする。これは命令だ!」


(あれ?これは夢…なのかな?こんなもの見すぎて夢か現実なのかわからなくなってるのも重症では?

 ああ…もしこれが現実なら今回も結局はこの無能な暴君のために私はこんな目に遭うのかぁ…)


 ディスティニーは卒業パーティーで婚約者のアズライルがアザレアを抱き寄せて言い放つ言葉に呆れと虚しさを感じていた。

 この時の彼女は既に彼等への興味はなくどうぞご自由に…と思っていたが、流石に拒否権もなく勝手に決められた婚約でこんな理不尽が(まか)り通るなら自分の人生は何のためにあるのだろう…そう思えてくるとなんだか虚しくなっていた。

 彼の隣で笑う女性はとても勝ち誇った表情をしていて何を考えてるのか分からないが、婚約者も何やら口許が緩んでいた。


(気持ち悪い…でもこれで解放されるならどうでもいいかなぁ…)


 面倒事から解放されるならこのまま逃げるのも悪くないと思えて切り替えた。


「承知しました。謹んでお受けします」

「ディスティニー、やめなさい!もうすぐ陛下がこちらに来られるからそれまで待ちなさい」


 父親のエドマンド・エーデルオーク侯爵が慌てた様子でホールを後にしようとした娘を呼び止めたが疲れた彼女の心にその声は届かなかった。


「これはお父様が勝手に決めた婚約ですから殿下がこのような場で仰るならこの意味もご理解頂けますわよね。では失礼します」

「…」


 その目はもう何も期待してないと語っていた。

 そんな娘の空虚な目を見たエドマンドは何も言えずに彼女の後ろ姿を見つめるだけだった。

 こんな形で追放を言い渡された後は質素な馬車に乗せられると中には一人の女性がいて着る物を渡された。

 それは平民が着るようなシャツにパンツといった軽装の服で付き添いの女性は馬車のカーテンを閉めるとすぐにドレスを脱がせていたのでそのための人なのだとすぐにわかった。

 そしてドレスや宝飾品は没収されて着替えている間に金品は全て奪われていた。


(あぁ、あの人達は何処までも無慈悲で酷い人達なんだね…流石は自分達の力で今まで私が取り繕ってあげていた品性を全て一瞬で無駄にしただけはあるかも。

 このやり方も彼等の本質がわかるようなとても無慈悲なやり方だよね。

 …さて…私はこれからどうなるのかなぁ…どこに行けばいいんだろう…)


 その後はどうしていいのか分からずに適当に歩くしかなかった。


「やはりこれは夢なのだろか?」


 これが現在の状況なら確実に魔法でなんとかするのでなんとなく初めの頃の夢のような気がした。




*****




 彼女は初めの巻き戻りの記憶からして最悪で物心付いた時からなんとも言えないものだった。

 使用人達は皆が優しかったが両親からは徹底して離されていて必要最低限でしか会えない環境で育ったので初めて親だと名乗られた時には実感が無いのでただ困るだけだった。

 それから婚約が決まると本当に最悪でしかなく何故こんな目に…と何度も思い朝目覚めるとまず思うのは『早く破棄して解放してくれないだろうか…』でこれが日課となっていた。

 彼女の願いはただ一つ。

『もういい加減に好きにさせてほしい!』この一択しかなかった。

 それは宝飾品やドレスが欲しいとかそんな事ではなく、ただ全ての(しがらみ)から抜けて平民達のように街を自由に歩いたり一人でお散歩したり等と本当にささやかな願いだった。


「お前さえいなければ私はもっと美しい令嬢と婚約してたんだ」

「…申し訳ありません」


 婚約者からはこんな事を言われ続けていた。

 ここでまともに言い返すと更に酷いことを言われたりするので穏便にやり過ごすために仕方なく折れていた。


(そんなに嫌なら白紙にすればいいのに…意味がないなら早く自由にさせてくれないかなぁ)


 心の中ではずっとそれだけを思っていたが誰も気付いてくれなかった。

 それが叶ったのがまさか卒業式後のパーティーで謂れのない罪を着せられるという不名誉な形の追放だとは思わず彼女はもう全てが面倒になったのでそのまま国境を越える事にした。

 平民服に着替えさせられてからは国境沿いまで向かうかと思っていたら…なんと!よくわからない道の途中で馬車から降ろされてしまった。

 仕方なく慣れない道を出来るだけ急ぎ足で進みながら国を越えようとしたが今度は険しい山登りがあり頑張って登ろうとすると体力が奪われてお腹が空いてくると近くに川があったので水は確保出来たが食べ物の探し方がわからず困り果てるとそのまま餓死した。

 その後は何故か魔物の大群が自分の前を素通りして行った時に自分の体が透けていて霊体なのだと気付いたがそれだけだった。

 当然ながら大群は霊体の彼女に気付かないまま王都の方向に向かって行ったのだが…何故か自分も引っ張られてついて行くような状態になったので慌てて抵抗しても無駄で仕方なく付いて行くことになりやっと解放された頃には城のそばにいた。

 そのまま魔物達が国を滅ぼして終わるまでを見届けていたのが初まりの記憶だった。

 そして気付くと自分のベッドにいて鏡を見ると幼い自分に戻っていてまたアズライルと婚約することになっていた。

 その後は双子王子の悪質な言動に悩まされながら貴族学校に入り卒業と同時に追放されるとまたもやドレスや金品を全て奪われてまた途中の道で放置されてしまった。

 行く道がわからないのでどうしようもなくなると餓死や魔物に襲われたりして必ず霊体になりまた城のそばで最後まで見届けて終わっていた。


(んー、そろそろ5回以上は繰り返した筈だよねぇ…何度も似たような結果なら大体の流れは把握出来たし上手く立ち回れば回避も出来るのかなぁ…)


 ディスティニーはこの時はまだこれが夢だと思っており何度か繰り返しながら冷静に分析して必ず覆せない事柄があることに気付いた。


(なるほど…婚約と追放はセットで防げない…両親とも親しく会うことはない。

 これは固定されている…となると他でなんとか出来る…のかな?)


 そう思い彼女は魔法を覚える事にした。

 特に逃走に役立つ収納魔法や移動魔法は徹底して覚える事にした。

 こうして迎えた何度目かの卒業式。

 予想通り定番の茶番劇に付き合わされて追放されたので国境の手前で放置された後はすぐに逃げ出し山の頂きに辿り着く事が出来た。


(え?なにこれ…山ばかり…どうしよう…)


 そこには人の気配がない代わりに魔物が多くて思わず絶句した。


「…嘘でしょ…」


 初めはなんとかなったが次第に疲れてしまうと呆気なく魔物の毒にやられてしまいその後はまた霊体となりそのまま魔物の大群と一緒に城まで行った。

 この時もやはり国が滅び行く有様を見せられて終わるとまた戻った。

 今度は攻撃魔法と治癒魔法を覚える事にして徹底した。

 すると生存率を少し上げる事に成功したがやはり呆気ない終わりを迎えてまた国が滅びると巻き戻った。

 初めの頃は夢だと思っていたのだが…魔法の練習をしながら初めから使える魔法が増えていたのであり得ない話でも受け止めるしかなくあまり実感は湧かないが繰り返している間にこれは現実なのだと意識を変えて行動するようになっていた。


(なぜ何度も巻き戻るのかな?これは何かあると考える方が自然だよね…でも原因がわからないからなぁ…)


 現実を受け止めてからやっと何かしらの原因がある筈だという思考に行き着いた彼女は改めてこれまでを振り返り違和感を探すとやはり必ず王子の婚約者になる事だった。

 そこで少し変えてみる事にした。




*****




「婚約が決まった」

「嫌です」

「決定事項だ」

「家を出ます」

「それは駄目だ!必ず挨拶に行きなさい」

「…わかりました」


 試しに反抗的にしてみるとエドマンドが何故か怒りを露にしたので不思議に思いもう少しやり方を変える必要があると感じた。

 そして顔合わせの日。

 ディスティニーは逃げた。城で案内されてる途中でお腹が痛いと演技して手洗いに向かいそのまま脱走していた。


「エーデルオーク侯爵令嬢様?え?嘘…大変!」


 あまりにも遅いと感じた案内人が女性の使用人を呼んで中を改めてもらうと当然ながら誰も居らずちょっとした騒動になっていたが扉に挟まれた手紙を見付けた使用人が慌てて陛下にそれを報告した。

 そこにはこれは自分の意思で城を出る事を記していたので屋内での捜索は打ち切りとなりすぐに屋外や街などの捜索に切り替わった。

 その後のディスティニーは逃走に成功するとすぐに街に向かい馴染みの服飾店に出向いてドレスを売りその金で質素な服を用意させて残りは生活資金に残して国を出る事にした。

 ここで一つ誤算があった。当時の年齢や容姿からして誰が見てもまだ子供だったこともあり簡単に妙な大人に捕まってしまうと気絶させられた後は本当に拐われてしまい牢に閉じ込められてしまった。


(これは考えてなかったぁ…)


 真夜中になると周りの音が静かになったので魔法で解錠して手枷等を全て外して密かに抜け出した。

 ついでに鍵を入手すると全ての牢を開けてくれそうな人の牢に託して逃げた。

 現在位置がわからないので仕方なく魔法で体を浮かせると高い木の上に登り位置を確認して唖然とした。


(え?ここ何処なの?地図は頭に入ってるけど…暗くてわからないんだけど…)


 この日は五日月だったので辺りが暗く途方に暮れたがどうにもならないので仕方なく魔法で体を浮かせたまま木々を伝い先程の場所から出来るだけ離れた。

 そして空が白けて少しずつ周囲の事が分かるとそこは王都からあまり離れていない森の中だった。


(嘘でしょ?あまり距離がないんだけど…急いでもっと離れないと)


 寝不足気味ではあるが出来るだけ遠くに逃げたくて水辺を伝うように移動してると村があり入るか悩んでやめて更に遠くに逃げた。




*****




 彼女が頑張って距離を稼いでる間エーデルオーク侯爵家では捜索隊が組まれていてすぐにディスティニーらしき人物が服飾店に向かいその後は男に担がれて何処かに向かったと報告が上がり父親のエドマンドは青ざめた。


「そ、そんな…それで?」

「わかりません。既に誰がが引き取ったのか行方不明です」

「取り引き履歴は?」

「彼等は既に魔物に…その中に帳簿はありましたがそこにはお嬢様を示すようなお名前や容姿等の記入はありませんでした」


 報告していた者はそれを渡すと彼もすぐに改ためたがそこに娘の名がなくてもその表情は青ざめたままだった。

 それからディスティニーはなんとか国の端にある村に身を寄せたりして商人達が行き来するような道を探しているとなんとか自力で国から出ることに成功した。

 しかし移動中に突然魔物達の動きが活発になると巻き込まれてしまい霊体になるとまたもや国に戻されて滅びを見せられた。


(…もしかして…私が呪われてるのかな?)


 こんな事を思いそれ専門の魔法使いに呪いなどがないかを調べてもらったが何もなかった。

 その後もなんとかしようと試みたがどうやっても魔物が邪魔して無理なのでその原因を探るために必死に勉強しながら様々な本を読み漁り情報を集めても全く手掛かりが掴めず途方に暮れていた。

 しかし必ず追放されるので仕方なく皆が利用する魔物があまり出ない道に向かうとそのまま国境に向かい国境線を越える時に商隊の荷馬車に密かに潜入していると国を抜け出す事には成功するようになっていた。

 しかしその日の夜に何故か必ずと言って良いほどに魔物達が荷馬車を襲ったので全滅してしまうとまた霊体となりその後はやはり強制で魔物達と一緒に城に向かっていた。

 それからも強制で巻き戻る度にやれることをしながら模索してみていたのだがやはり自分もそうだが国も滅びるので手詰まりに近くなっていった。







ここまで読んで下さって有り難うございます。

ディスティニーも拒否したり早めに逃走したり等と記憶を頼りに奮闘してますがなかなか上手く行かないので逃げるだけでは意味がない事にやっと気付いて原因を追求することにしました。

しかし知ってそうな人達は尻尾を見せないのでかなり苦労してます。

そのうち本編で補足予定ですが…一応魔物は入らないのですがかなり弱い小者は入れたりするみたいな設定にしてます。

今回は特にこれで最後に…と言う気持ちで挑んでますが今回で全てが終わるかは彼等の頑張り次第ですので温かい目で見守ってくださると幸いです。

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