その後…
こちらは設定の謎の完全回収となります。
それから二人に子が出来てその子はクリスタベルと名付けられた可愛い女の子だった。
二人は世界樹と神聖な力を宿す木に子供を紹介すると世界樹はわかるのだが神聖な力を宿す木からも人が出てきて二人は驚いた。
「やぁ、君達のお陰であの方の憂いも晴れたからこれは感謝の印として君達の子に授けよう。
これは私の気持ちだから遠慮せずに受け取りなさいねぇ」
「え?あなたはエーデルオーク様?」
「そうだよ。私はこの木を守護する精霊なんだ。
君達の事はずっと見守って来たけど…最後の機会を乗り越えた君達はいつも仲睦まじくて微笑ましいと思って見守ってたんだよ」
「あ、有り難うございます」
優しく微笑む表情はまるで親のようで安心するものだったが、いつでも見られていた事に気付いたディスティニーはなんだか恥ずかしくなった。
「ディスティニーは私の子供のようなものだから我が子の成長を見届けてる感覚だし、旦那となった君も同様に我が子のように思ってるから気にしなくていいからね」
「それなら私達には最強の守りがいたんだな…」
「これからも君達の一族が誠実であれば我等も裏切ることはないよ。末永く幸せであれ」
「有り難う御座います」
この時に神聖な力を宿す木の精霊の話でわかったのはこの国を魔物が襲ったのはディスティニーを追い出したことで裏切ったと判断されたためだと言うことと、この時に国の守りのシールドは全てこの精霊と世界樹により破壊されていたことだった。
更に彼女に残っていた記憶についてもわかった。
実はこれは神聖な木の守り手の者としての罰で毎回滅びまでを覚えさせられていたのだが、今までの生贄に関しての記録にもそういう記述はないので彼女はそれを知らずに苦しんでいた。
「それならアザレア嬢は?」
「アザレア?」
「操られてた俺達と一緒にいた女子生徒のことなんだけど…」
この際なのでアズライルは全てを明かしてもらうことにした。
「ああ、あの濁った光の者か…」
「濁った?」
なんとなく不穏な単語にアズライル達は眉を寄せたが神聖な力を宿す木の者は頷いた。
そして話を聞くと驚いた。
アザレアは元からこの国の者ではなく他国から亡命してきた貴族で元は王族だった。
その国では彼女の持つ光の属性は欲を持つと光が歪み、呪いの属性へと変化するのが知られていて危険視していたので光の者は自分の属性について正しく学ぶ必要があり必ず神殿に預けられる事になっていた。
しかし運悪く彼女の産まれた時期は宰相が自分達の欲のために王族に反旗を翻し国が荒れていて王族の子供達も刺客に狙われていたがアザレアはまだ生まれたての赤子だったためにその存在が表に出ることはなかった。
しかし密かに調べる者がいてその存在を知られて更に光の力を持つ事も知られてしまったのでアザレアが邪な者に狙われた事を知った彼女の両親は他国に逃がす事にして辿り着いたのがこの国だった。
この国には彼女の遠い親戚が男爵家の跡取りと恋愛結婚をしていてその繋がりで匿ってもらいながらこの国の者として育ったのはいいが、この国では光の者を神殿には預けないのでアザレアもそのまま男爵家で育てていると次第に彼女に親切にする人が増えてきて彼等は彼女を甘やかし始めた。
こうなると彼女も周りに合わせて欲深くなっていき力が歪み始めたのだが育ての親も気付かない間に操られていたので全く違和感がなかった。
そしてアズライル達と出会い魔物の群れと対峙する事になったのだが彼女の属性は純粋な光ではないので逆に魔物が活性化していて魔物達は彼女の邪な光を求めて群がり呆気なくやられた時に思い通りにいかなかった事が不満でその強い想いが呪いとなり記憶として残った結果だった。
更に補足としてわかったのは何かしらの未練等を持ちその想いが強ければ強いほど想いが脳裏に刻まれるので、そういう人達の殆どが記憶を持って巻き戻っていた事を知ると二人はその人数が意外と多そうな気がした。
「…それならアザレア嬢については自業自得だな…」
「でも彼女も初めから導く方がいればこうならなかったのでは?」
アズライルは呆れていたがディスティニーはしっかりと指導してくれる人に巡り会えなかった彼女が不憫に思えた。
「…ティニーは優しいね…俺は君を殺そうとした彼女をどうしても許せないよ…」
「アズ…」
「まぁ勘違いする前に神殿に預ければ良かったんだけどねぇ…光は本当に扱いが大変だから普通の人間では手に負えないのは仕方ないよ。
でも君が気に病む必要はないからあまり考え込まないようにね?」
「…はい…」
神聖な力を宿す木の精霊は慰めるようにディスティニーの頭を優しく撫でていた。
その後のアザレアはその特異性で国王ノイリエスに危険視されて神殿に預けられることになった。
この時に改めて光属性の危険性等の指導を受けていると彼女も自分の属性の危うさに気付くと今では心穏やかに過ごしていて彼女に操られていた男性達も今ではすっかり元に戻り婚約者や周りの皆に対して誠心誠意で接しているらしいとわかるとディスティニーも安堵した。
その中には卒業式の日にディスティニーの首を絞めていた者も含まれていて彼の意識が戻ると青ざめながらディスティニーとアズライルに謝罪したいと申し出てアズライルは腹立たしくて断ろうとしたがディスティニーがとりあえず話だけでも…と宥めたので仕方なくアズライルも付き合い、彼は何があったのかを詳細に話して深々と何度も頭を下げながら謝罪していた。
その話によるとアザレアの言う事が絶対に思えると彼女が望むことをやりたくなり、彼女は何かあればアズライルがディスティニーを自分の部屋に匿うのは予想出来たらしく、アズライルが居なくなれば彼の部屋に忍び込むように指示を受けていたため王子宮へは知り合いのメイドに頼んで入れて貰ったと言うことだった。
そして学校の外の目立たない場所に簡素な馬車とメイドを用意させていたのもアザレアからの指示だがこれは彼女を崇拝する伯爵家の者が手配していてもし何かあればすぐに攫って金目の物は全て奪って適当な場所に捨てる予定だった。
アズライルが用意したと思っていたのはアザレアだった事でディスティニーも驚きを隠せずにいたがなんとなく強欲な彼女なら…と納得が出来ていた。
操られていても実行したことには変わりないので刑罰は免れなかったが彼は記憶が朧げでも実行したことは事実なので真摯に受け止め反省していた。
そして刑期を終えた今では二人に何かあればすぐに駆け付けるほどに頼もしい味方となっていてアズライルは遠慮なく扱き使っていたのでディスティニーはそんなアズライルに困りながら程々に…と、なんとか彼が暴走しないように注意していた。
聞きたい事を聞けた二人はその他には特に何もなかったので他愛ない話をしてお開きとなると最後に精霊から「また遊びにおいで」と言われたので二人もまた遊びに行く約束をして別れた。
*****
邸に戻り神聖な力を宿す木と世界樹から貰ってしまった祝福の能力について調べるとこの子には人を癒し守る力を与えられていて唖然とした。
「…ちょっとこれは…俺達の子供なのにまた苦労しそうだな…」
「…そうだね…出来ればこの子には普通でいて欲しかったのに…」
二人はあの恐怖の日々を覚えているのであまり嬉しいとは思えずガックシと肩を落としていて、また子が出来た時には『普通に報告だから力を与えないように』と話す必要性を感じていた。
流石にこの先を考えると手に負えないと感じるとディスティニーの両親にも話すとやはりこの先では争いの種になりかねないと結論が出たのでアズライルが仕方なくノイリエスに話すと手放しで喜び、この時にはアザレアの関係で遅れていたフルスコルの婚約者選びも無事に終わり順調に交際をしていて一年後に結婚となっていたのでその後に子が出来たら伴侶にする事になった。
「ティニーとの子供は素直に嬉しいしティニーの次に愛情を注がないとね?」
「…そこは平等で良くないですか?」
「いや、俺にとってはティニーが一番だからそこはどうしても譲れないしなぁ…ティニーも俺を一番で考えてね」
「…出来る限りそうします」
やっと落ち着いたアズライル達はこんな会話をしていたのだが…この会話が的外れに思える程にクリスタベルはディスティニーの父親のエドマンドと母親のルイージアがとにかく可愛がっていたのでディスティニーとアズライルの二人の時間が減ることはあまりなかった。
「…君のご両親なんだか凄いな…お義父様のあんな顔を初めて見た…」
「そうですね…お母様は特に私と関わる事を許されなくて寂しかったそうでお父様と話し合って一緒に影からそっと覗いていたらしいですけど…あれは流石に…」
孫を可愛がる父エドマンドはデッレデレで『この人誰?』状態だった。
母のルイージアは自分の腹から出てきたんじゃないのかと思うほどの接し方だった。
アズライルとディスティニーの二人は我が子なのだが両親達の対応に子供との距離が生まれてしまいそうでなんだか複雑だった。
「これはこれでなんだか嫌だな」
「そうですね…」
「取り戻すか」
「はい」
「お義父様、クリスタベルをそろそろ返してくれませんか?」
「何を言ってるんだ!こんなに可愛い孫を私から引き離すのか?」
ただ娘との親子の時間を貰おうとするとエドマンドが猛反対したので二人は困った。
「引き離すなんて…私の子ですよ?」
「そうねぇ、ティニーに似てとても可愛いわよねぇ…でも取り上げることは許しません!」
「えぇ…?」
実の娘からの要望でもこれは無理な話だと言わんばかりにルイージアからもエドマンドと同じくらいの熱量で却下された。
「仕方ありませんね…親である私達にも可愛がらせて頂けませんか?」
「それならいいよ」
下手に出てやっと許可が下りたので安堵したが、やはり納得いかない事がありその後もたびたびディスティニー達はエドマンド達からクリスタベルを離そうとするとそのたびに何故か「孫と離すなんて理不尽だ」と文句を言われて逆に説得されてしまい、丸め込まれると四人で可愛がる事になり使用人達もそれまで冷ややかだった主達から温かなものを感じて安堵した。
そして今度は男の子が生まれた。
「後継ぎか!良くやった」
エドマンドがとても喜びアズライルはその子にアレンディオと名付けると今度こそ二人で可愛がろうとしたが、またしてもエドマンド達が離れなくなってしまった。
「また連れて来てくれたのかい」
「ええ、この子はアレンディオです」
「今回は祝福はいらないから、普通に子供の紹介だよ」
「そうなのかい?」
神聖な力を宿す木に報告するとまた精霊が出てきてくれて祝福を授けようとしたが二人は焦ってしっかりと止めると精霊は不思議そうにしたが納得した表情になるとその子を優しく撫でていた。
「たまには遊びにおいで」
「有り難うございます」
そして二人は世界樹のもとにも行き子供達を紹介すると彼はすぐに出て来て神聖な力を宿す木の精霊と同様に祝福を授けようとしたので二人はまた慌てて止めると楽しそうに笑って子供達の頭を撫でて「また遊びにおいで」と話すと消えた。
その後も仲良く寄り添い両親や子供達と一緒に笑顔の絶えない日々を過ごす事が出来た。
*****
「そろそろか…」
「そうかもしれません…アズ…本当に有り難う。最後に一緒に行かない?」
「そうだな」
二人は長い年月を変わらず寄り添いながら幸せに暮らしてそろそろ体も弱って来た頃に約束の通り世界樹のもとへ向かった。
「二人とも久しいな。ティニーも良い人生であったかい?」
「はい。貴人様が許してくださったので私はとても幸せです。有り難うございました」
世界樹の中からすぐに人が現れると声を掛けてきたのでディスティニーは心からの感謝を口にするとその表情はとても穏やかで本当に満たされているのがわかるほどに幸せそうだった。
「そうか、お前達のお陰で我もやっとあの時の言葉の意味を理解した。
あの閉ざされた場所に居た時と今、環境が変わっても我の世界は変わらぬと思っていた。
しかし望むものを手にするとこんなにも世界は輝き愛おしくなるのだな…これを教えてくれたそなた達に感謝する。
我が愛し子ディスティニーよ、最後の時まで永遠にその者と過ごすが良い。
我はもう孤独ではなくなったからもう求める者の存在は不要となった。
手を出し受け取れ、これは我の感謝の印だ」
少しだけ含む話し方をした後に二人の前に小さく温かな黄金の光が現れると二人は両手を差し出してそれを受け取った。
それは二人の手に収まると溶けるように手に馴染んでいき左手の小指には指輪のような緑色の紋様が現れるとそれは世界樹を表していた。
「我は我の世界を広げてくれた尊き友を得た。それはお前達の事だ。
我からの祝福は二人の絆。
それはいつどこに生まれようとも必ず巡り合う絆の力だ。
これはあの時に互いに協力して立ち向かい今を得たお前達に似合いだと思う。
これでお前達の絆が永遠に解かれる事はないだろう」
「え?」
(今なんて?重い…重すぎる…嘘でしょ?)
ディスティニーは重すぎて返したくなった。
「返却不可だな」
「えぇ!?」
世界樹が彼女の心を読みとても良い顔で先手を打ってきた。
「…嘘でしょ…何故わかったの…」
「えっ?ティニーは返却するつもりだったの? それは俺も却下だな!」
「…永遠の絆なんて重すぎるからね?私はこれから何度もアズに振り回されるの?」
「振り回すって…君を守るだけだよ?」
「我は見守っていよう」
二人の様子を見ながら世界樹は他人事で楽しんでいた。
「…逃げたわね?」
困った顔をしながら彼女がジトリと睨むと世界樹は知らぬ振りをしてニコニコしていた。
「ユグドラシル有り難う。俺はティニーを永遠に愛する事を誓うよ。
次もやはりティニーと寄り添いたいから早めに出会える場所がいいなぁ。
あっ、兄弟や友人はやめてほしいかな…どうせならずっと恋人同士で頼むな」
「よかろう。任せろ」
アズライルの注文にユグドラシルは得意気に頷いた。
「出来るのか?」
「安心しろ。世界そのものとなった今の我に不可能はないぞ!」
「嘘でしょ…」
(なぜそれが認められてこれが返却可能じゃないの?あぁ苦労しそうで困るぅ…)
も゙うわけがわからず困惑しかなかった。
「じゃあ頼むな。これで何があっても寂しくない。有り難う」
「うむ、我に任せよ!」
「……」
ユグドラシルが得意気な顔になるとディスティニーは肩を落とし、アズライルは嬉しそうにしていてその笑顔は輝いていたがデスティニーはどう突っ込んでいいのか迷っていた。
「誰か…嘘だと言って…」
「ティニー?何か?」
「い…いえ…何も…」
ディスティニーはこの時に永遠の旦那を得てしまい未来の自分が苦労しないことを願った。
一方アズライルはというとこの先の未来も愛しい人といられる幸せに想いを馳せていて、今度こそ今回のように辛い事がなく初めから愛しい人が悲しまず一緒に平凡で幸せな日々を送れるような気がしてこの粋な計らいに感謝していた。
ここまでお付き合いくださった皆様、本当に有り難うございました。
エーデルオークは実は精霊が宿る木でディスティニーは裏切り者の判定を受けてその罰として残した記憶は国が人質だから逃げるなって意味でした。
アザレアが他国の王族…これは皆様も意外だったのでは?本当は異世界人にするか迷ったのですがどうせならこの世界で完結させようと思いこうしました。
彼女もすっかり大人しくなると心が平穏でやっと幸せを感じるようになり、その影響で彼女の周りの皆があるべき姿に戻りました。
最後は二人の絆…世界樹は本当は友人の位置で授けたのですがアズライルの押しに負けましたね。
…と言うことで以上で回収完了のハッピーエンドとなり終わりです。追加はありません。
最後までお付き合い頂きまして本当に有り難うございました。




