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3ー⑩


「父様、早いほうがいいと思うので今から行きましょう!

 私は少しでもティニーを奪われる可能性を潰しておきたいです。

 大方の可能性は潰させてもらいましたけど、まだ不安なのですぐに行きませんか?」

「…わかった…」


 性急すぎる息子に困った様子で眉尻を下げながら仕方なく頷いた。


「え?歩けますよ」

「私がこうしたいんだから甘えようね」


 移動中のアズライルは嬉しそうにディスティニーを抱えていたが彼女は恥ずかしくなると下ろしてほしくて慌てて訴えていた。

 しかし、彼は甘く微笑んだだけでその訴えは無視して彼女を困らせ、その様子を見ていたノイリエスは呆れていた。

 そして世界樹(ユグドラシル)のもとに着いた。


「何?我が愛し子を返しに来たの?」


 世界樹はすぐに現れるとアズライルにディスティニーを要求したが彼は彼女を抱えたまま首を振って否定した。


「残念だがティニーは渡さないよ。でも聞いてたんだろ?

 この王都をそのままにして城だけを壊して森を切り開いて城を新たに作ればお前も寂しくないと思うんだがどうだ?」

「本当に出来るのかい?」


 この話に興味はあってもその表情は分かりやすく『疑わしい』と語っていたが、アズライルもここで話を終わらせるわけにはいかないので今出来る事を考えながら慎重に世界樹を観察していた。


「出来るのかではなくやるんだよ。

 神話とか伝承の話では元は君が人に盗まれたから仕方なく隠すために城を建てたって話だぞ?」

「そうなのかい?」


 意外な話に世界樹もキョトンとした。


「どうやらそうらしいぞ。エーデルオークからは何も言われなかったのか?」

「うん、何も聞いてない」

「それならお前に自我が芽生えて自衛の手段を持つ今ならこの先の事を考えるとどの道この城を壊さないといけないんじゃないのか?」

「…確かに…ここは暗くて窮屈で嫌だ」


 多少うんざりしてそうな様子の世界樹を見てアズライルはノイリエスを見るとノイリエスは思案顔になっていた。


「ほらね?父様達は過保護だったんだよ。

 ユグドラシルはこの先も長い時を生きるんだから城はどのみち壊す必要があるし私は何度も魔物の群れに襲われたんです。

 あんなことが何度もあって堪るかって思うし魔物が跋扈して城を壊された後のユグドラシルは陽の光を思いっきり浴びたのではないかと思うんですよ。

 それならこの城はこいつにとって既に用済みで私達は守ってるつもりがユグドラシルにとっては大きなお世話になってると思います。

 建て替えって感覚で城を移した方がいいと思いますよ?」

「ユグドラシルもそうなのだろうか?」


 もっともな話ではあるがノイリエスは念のために世界樹の意思も確認する事にした。


「うん、(われ)は人が好きだ。

 閉じ込めるお前達ではなく走り回ったり親子で歩く人間達を(じか)に見ていたい。

 陽の光りも浴びたいし伸び伸びと体を伸ばしてみたい」


 それはこの空間が彼にとって既に窮屈なものになっているのと同じだった。


「わかりました。では出来るだけ瓦礫が落ちないように配慮致します」


 彼等が守るべき存在である世界樹が望むならノイリエスは役目を得る事になるのですぐに予算等を検討する事にした。


「ここから出ていいなら我がこの場所の近くに移動して根を張るからそれでいい」

「それを望まれるならそのように致します。

 我々は元々あなた様を守る一族ですからあなた様の意思を尊重するのは当然です…しかし本当に宜しいのですか?城を移せば良いだけの話ですよ?」

「お前達に任せると時間が掛かる。

 それなら我が移動する方が早い。

 お前達にはわかりやすい目印を与えるからその場所の木々を根から掘り返して他の場所に手早く移して欲しいんだ」

「それだけで宜しいのですか?」


 これは意外と安価でやりやすい方法なのでノイリエスも拍子抜けしていた。


「うん。それでいい。高いところからでも良く見えるようにしておく」


 それだけ話すと消えた。




*****




 そして翌日の早朝。


「な、なんだあれは…」


 一本の高くそびえ立つ黒っぽい何かが森から出ているのをこの日の見張りの兵が見つけて慌ててノイリエスに報告していた。


「それは問題ない。その場所を正確に把握し報告せよ」


 この命令で数人の兵士達は場所の特定をしてノイリエスに報告した。

 アズライルもこの事を知りディスティニーに話してみると彼女は興味を持って行きたがったので二人で行く事にした。


「これって…」

「木の幹ではなくて根っこだよね?」


 なんと世界樹は自分の足となる根を出して場所を指定したことで二人は驚きながらも思わず笑いが込み上げていた。


「少し上から見てみるね」

「ティニー待って!私も行く!」


 二人は魔法で体を浮かせて近くの高い木の枝に乗ると木の移動先等を考えた。


「どこかいいところが無いかな?」

「それならユグドラシルに聞いてみよう!」


 二人は再び世界樹の元に向かうと世界樹からすぐに人が現れてその表情はどこか明るかった。


「ユグドラシル、あの木を植える場所でお勧めの場所は無いのか?」

「君達はそれくらい自分達で考えたら?」


 その表情は『そんなこともわからないの?』と呆れていた。


「木の事は木に聞くべきだと思ってね。

 せっかく植え替えたのに枯れたらお前も困るんだろ?」

「まぁそうだけど…わかったよ。植え替え場所はまた示すから…」


 アズライルの話も尤もなので仕方なく承諾すると消えた。


「あいつ、話せば意外とわかる奴だったんだな?あれならもっと早く解決出来たのに…」

「そうみたいですね」


 少し声の明るいディスティニーを見ると少し安心したような表情をしていてアズライルもつられて安堵するのと同時に今まで抱いていた希望が少しずつ現実に変わるのを感じていた。

 この事はすぐにノイリエスにも報告すると快諾したので後は世界樹待ちとなった。




*****




 翌日の早朝にはまた別の場所にも目印を出していた。

 ディスティニーとアズライルの二人は早速確認に向かうとそれはやはり根を出していてその場所はかなり広い範囲で開けていて草は生えていたが切り株しかなかった。


「なるほど、この切り株を全て排除して植えろってことか」

「そうみたいですね」


 二人は納得するとディスティニーはしゃがんで土に触れて観察すると特に乾燥もしてなかったのでそのまま地面に手をつけて目を閉じると集中した。

 そして周辺に魔力を流し込むと土の魔法を使って少しずつ地面を程よく柔らかくなるようにしていると切り株が抜けやすくなるくらいに土が柔らかくなりふかふかしていた。


「見事だね」


 アズライルもコツを教えてもらうと二人は広範囲で土を柔らかくして、すぐに植え替えが出来る状態にした。

 その後は再びノイリエスに木の移植先の事を話すと理解されたので、どうせなら…と土を柔らかくするのは二人でやることにして後の植え替えは等は転送魔道具を用意して木だけ移すとその後は専門の者に任せた。

 先に土を柔らかくしていた甲斐もあり作業は早く終わると世界樹もすぐにお引っ越しが出来てその後は気持ち良さそうに陽の光を存分に浴びて一気に成長していた。

 街から世界樹までの距離はそんなになかったのでノイリエスは折角だからと皆が遊びに行けるように道を作る事にした。

 この時は世界樹が木を切ることをかなり嫌がったがノイリエスは木を切った後は薪になり人の助けになる事と話すと渋々でも納得したので早速道の舗装作業に取り掛かる事にして状況は更に明るいものへと変わっていった。





ここまで読んで下さって有り難うございます。

ユグドラシルはただ寂しかっただけでとても物分りが良く素直だった…目印も足となる根を出しているのでお引越しの準備はこの時に完了してます。

時間的には約5日で片付いた感覚で、いよいよ卒業式が間近になります。

もう少しだけお付き合い下さると幸いです。

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