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1、全ての始まりは追放から

章の入れ方がやっとわかったので編集しました。


「…え?今…何を…」

「突然の話で戸惑っているのだろうけどアズライル殿下との婚約が決まったよ」


 この日、少女は滅多に会うことのない両親から書斎に来るようにと指示があり不思議に思いつつ向かうと、まだ婚約者には早い年齢からの突然の話に戸惑いを隠せずにいた。


「本当に私がアズライル第一王子殿下と婚約するのですか?

 年齢的にもまだ婚約するには早いと思いますけど…」


 この国はイグドラル王国と言って周囲は山に囲まれた国だが他国と違い国の周辺には強力なシールドが張られているので魔物が入る事はなく人々は安心して暮らしていた。

 王族の役割は主に国の守りのシールドの維持。

 貴族の数は少ないが国はそれなりの広さがあるのでそれぞれに割り当てられた土地の管理で一番重要視してるのはシールドの管理だった。

 そのためシールドに綻びが生じたり等と何らかの理由で魔物が入る事態となればまずは貴族達が中心となり率先して民を守る役割があるため彼等は魔力が強い者でなければならないとされていてそれを維持するために(たま)に魔力の強い一般人から伴侶を得ることもあった。

 街や村に住む一般人は貴族達に比べてそれなりの魔力なので皆も納得して普段から領主である彼等を支えて穏やかな日々を過ごしていた。

 国交についても他国からこの国へ続く道はあまり魔物が出ない事は有名なので比較的安全な道はたとえ遠回りでも旅人や行商の者も利用したがりついでにこの国にも訪れるのでそれなりに栄えていた。

 そんな国なので他国では大体が5歳くらいから始まる貴族の婚約者選びもこの国では魔力が安定する15歳前後からと遅めに始まりそれまでに各家で必要な教養を身に着けさせるのは常識だった。

 王族も一応はそうなのだが王族の場合はまず王家側が力関係等で平等になるように適切な家を選び、次にお茶会を開いて様子を見ながら更に候補を絞り、最終的に残ったその中で素質や素養があり王子が気に入った者が選ばれる事になる。

 これが王族の婚約者の選び方でこの国の貴族は誰もが知っている事だった。

 それなのにディスティニーは現在8歳でしかもまだお茶会に参加したことがない。

 一応はそれなりの教養を身に付けていても今まで一度も社交の場に出たことがなかった。

 それなのにこの話が出たことは誰が聞いても不自然なのは確かな事だった。

 彼女はこれを踏まえて今回の話を考えてみたのだが今まで王族との接点が全くないこの状況はどうみてもかなり不自然すぎる上に名指しはあり得ないと疑問が浮かぶのは仕方のない事で両親に対して自然と胡散臭いものを見る目を向けると彼女の両親は『そんな些細な事は気にするな』と言わんばかりの表情で微笑んでいた。

 彼女からするとそれがかえって不気味で仕方なく絶対に何か裏があるとしか思えなかった。


「我が家は特殊な家だから今回は早めにとあちらから話が来たんだけど特に断る理由もないから既に受けてる事を知らせる必要があったから今説明してるんだよ。

 ディスティニーにはこれから王族の婚約者として自覚を持って行動してもらわなくてはならないから気を引き締めてほしい。

 今後は殿下にお仕え出来るように励んで何かあるときにはしっかりとお支え出来るように精進しなさいね」

「そうですよ。この話は神聖な木の守り手として名高いエーデルオーク侯爵家にとって名誉な事ですから貴女はしっかりとお役目を果たしなさいね」

「…わかりました…謹んで精進致します」


 この時、両親の圧と勢いに押されて結局のところ本音を口にすることが出来なかった彼女の名はディスティニー・エーデルオーク。

 彼女はエーデルオークと呼ばれる神聖な木を守る役目の侯爵家の一人娘なのでそれなりに断る理由もある筈なのだが両親からは『名指しで来た』と補足されると状況は違ってきて代わりは居ないので本人が嫌でも相手が相手なだけに受けるしか選択肢はなかった。

 この息苦しい状況が憂鬱で堪らないディスティニーは出来ることなら今すぐにでも逃げたくなっていたのだが目の前の両親は彼女の心境など何も察しようともせずに期待の眼差しを向けていたのでその後も彼女は何も言えず言葉を飲み込むことしか出来なかった。




*****




 そして後日に正式な挨拶をする事になった。

 お互いに初対面なのだが初めから彼の態度は悪くディスティニーに対して不機嫌そうな目で見ていたのでなんとなく彼もこの話に乗り気ではないのだが逆らえないのだろうと察すると今は何も言わず諦めるしかなかった。

 終始ほぼ無言で彼は挨拶もまともにせずに最悪の雰囲気で顔合わせは終わり、帰宅する馬車に揺られながらディスティニーは先程の事を思い返して彼との距離を置こうと決めた。

 両親の話では相手の王子はこの国の第一王子アズライル・イグドラル。

 顔合わせの後に個人的に調べた噂では双子の弟のフルスコル・イグドラルとは少しだけ顔立ちが違うがほぼ似ていてそれはしっかりと彼等の特徴を知った上で見ない限りわからない程だったので世話人達は色違いの物を持たせたり等と工夫していた。

 最悪な事にこの二人はかなりの悪戯好きで自分達の容姿を斜め上で利用してお互いの服などを交換したりして周りを振り回して困らせる名人でかなりの問題児だった。

 そんな人の婚約者にはなりたくなかったが決まった事は覆せないので仕方がない。

 たとえ嫌でも受け入れざるおえない彼女はこの日から当然ながら教育が厳しいものへと変わった。

 そして登城して教師達からのチェックが入り出来なければ容赦なく罵詈雑言や背中に定規等を入れられたが黙って耐えた。

 心も体も傷だらけになりながら追い打ちを掛けるのは決まって婚約者のアズライルで彼は彼女が避けようとしても隙あらば何かと嫌みを言ってきて苛立たせていた。

 本当は彼女も言い返したいのだが立場というものがあるので言い返せずこれにも黙って耐えるしかなかった。

 そのため初めの頃は悔しくて涙が溢れて部屋で一人になると泣いていたが次第に心は涙すらも忘れる程に疲れてしまうと次第に双子達を見るだけでうんざりしていた。




*****




 そんな日々を過ごしているとこの国の貴族の義務で学校に入らなければならない年齢になり、ディスティニーは淑女学校に逃げようとしたが両親は勝手に共学の学校の手続きを済ませていて彼女が知った時はまたもや事後報告の時だった。


(あぁ…なんでこんな面倒な事に…)


 この日も学校が終わると王子妃教育のために城に向かう馬車の中で街を行き交う人々の笑顔を見ながら辛く虚しい気持ちが不満となって蓄積されていた。

 そのストレスに追い打ちを掛けるのはやはり婚約者のアズライルと双子の弟のフルスコルだった。

 この二人は学園の中でもやりたい放題でディスティニーの目の前で一人の少女に夢中になると見せ付けるように寄り添っていた。


「殿下、他の者も見ておりますので示しがつくように言動にはお気おつけくださいませ。

 ウィロー男爵令嬢様、今後の貴女のためにも殿下とは程良い距離感を」


 王子達に構われているのはアザレア・ウィロー男爵令嬢。

 彼女は王子達の他にも複数の男子生徒達と仲良くしていて、婚約者がいてもそれはお構いなしの言動に周りからの顰蹙を買っていた

 この時には既に醜聞となっていたためにディスティニーは彼等の今後のためにもまともな指摘をした筈なのだがアザレアと言う少女は何故か理解出来ない様子で泣き真似を始めると王子二人はアザレアを泣かせたとして嫌そうな顔をした。


(あー、またか…本当に面倒だなぁ…嘘泣きに気付かないこの人達ってなんでこんなに阿呆なの?)


 この時のディスティニーは既に呆れすぎてやってられず面倒臭すぎて完全に目が死んでいた。


「なんだ、醜い嫉妬か?アザレア嬢の方がお前よりも愛嬌があっていいから私がこちらを選ぶのは当然の事だろう?

 お前はこの先は私の仕事だけを手伝う存在だから相手はアザレアでも良いだろ」

「そうだね。兄様の言う通り。君は愛想が無くて腹立たしいから婚約白紙にすればいいよ」


 何もわかってない二人は嘲笑うかのようにディスティニーを貶していた。


「そんな事を仰るとディスティニー様に悪いですわ」


(なるほどねぇ…同類がくっ付くとこうなるのか…目が当てられないからもう放置していいかな?)


 アザレアは相手を気遣うような言葉を吐いてもその目を見ると優越感に浸っているのが丸わかりで彼等がそれに気付かず本気で褒めている様子もしっかりと見ていたディスティニーは阿呆すぎる茶番に付き合わされて時間の無駄でしかなかった。


「アザレア嬢はなんて優しいんだ」

「本当だね。誰かさんとは大違いだ」

「…承知致しました。殿下方のご希望は口出しをやめろと仰る事ですので只今より今後一切の口出しは致しません」


 相変わらず「ははは…」と馬鹿にした視線と笑みを向けられたディスティニーはもうどうでもよくなったので要望に応えることにした。

 そして宣言通りに遠慮なく放置した。

 すると二人の王子は品性の欠片もないと学内で密かに噂になったがディスティニーはそれも教える必要が無いので無視した。




*****




 その後は噂が広がり大人達も知るところとなりディスティニーは両親に『ちゃんと殿下を支えなさい』と理不尽を言われても無視し続けているとあっという間に卒業を迎える時期がきた。


「お前のせいで私達の品が落ちた!この罪は重いものとして婚約破棄と国外追放を命ずる」


 アズライルは卒業パーティーでいきなりディスティニーに対して逆恨みの冤罪をかけて断罪した。

 内容は彼等が口出しするなと言っていたのにそれをディスティニーが役目を怠けた等というような陳腐で呆れるような内容にだったので内心では思わず笑っていた。


「謹んでお受け致します」


 周囲も既に嘘だとわかっていたが巻き込まれたくないがために静かに見守っていて、当事者のディスティニーも淡々と受け止めると素直に国外へと向かった。

 この時にディスティニーの両親はかなり怒っていたが彼女の心は既にこの阿呆な王子達の相手でうんざりしていて何も感じなくなっていた。

 彼女は質素な馬車で国境まで連れて行かれると金品を奪われて放置された。

 人に傅かれる存在は国を追い出された後、魔物の森へとフラフラと歩んで行き、それから消息が途絶えた。


「な、なんだこの空は…」


 ディスティニーが消えて数時間後。

 エーデルオークと呼ばれるこの国の守り神のような神聖な力を宿す木が突然禍々しい気配を帯びて魔物を呼び寄せると人前に滅多に姿を見せない強い魔物達が現れて呆気なく守りのシールドを破壊すると国に入り人々を恐怖に陥れた。


「陛下!魔物の大群です!」

「…すぐに各領地の被害状況を!」


 普段は神聖な木の加護により守られていた国は多くの魔物に蹂躙され、あっと言う間に国が壊滅の危機に瀕した。


「アズライル、フルスコル、お前達に確認しなければならない」

「なんでしょうか」


 混乱の最中で国王ノイリエス・イグドラルはまさかと思い王子達を執務室に呼び寄せていた。


「ディスティニー・エーデルオーク侯爵令嬢は今どうしてる」

「え?エーデルオーク侯爵令嬢ですか?それなら国外追放にしたのでいない筈ですよ」


 ディスティニーの事を尋ねると平然と話した内容の酷い仕打ちに思わず目眩がした。


「ではお前達はその傲慢な態度で何も罪のない令嬢を殺したようなものだな。

 これよりお前達を罪人と見做(みな)して討伐隊の前線に赴く事を命令する」

「え?」

「それはあまりにも…」


 二人は青ざめて嫌そうにしたがノイリエスは厳しい表情のままでその目には有無を言わさない圧があった。


「誰か!すぐにこの二人を討伐隊の前線に連れて行きしっかりと役目を果たさせなさい!

 特にアズライルは婚約者を蔑ろにして追放した罪は重いと胸に刻み行動しなさい」


 こうして王子達は討伐隊の指揮を任されると問答無用で前線に送り込まれてしまい二人は恐怖で何も出来ずに討伐隊も呆気なく壊滅した。

 それを知ったアザレアは逃げようとしたが、国王の命令でウィロー男爵家の周りを囲まれて罪人として囚われた。

 そして彼女の属性が光属性であることがわかるとすぐに最前線か死刑かを選ばせのらりくらりと躱そうとしたので問答無用で最前線に送り込んだ。

 魔物は一向に減らず最後には破滅を呼ぶと言われている伝説のドラゴンまでもが出てきて国は呆気なく滅んだ。


 これがディスティニー・エーデルオークが婚約者達の茶番に巻き込まれながらも自分の宿命と戦う事になった全ての始まりだった。





ここまで読んで下さって有り難う御座います。

この話の時代設定はまず魔法が使える世界で現実世界とは全く違う世界なので似たような所があまりなく、設定もほぼありません。

なんとなく…で読むような気楽な感覚で読んで頂けると有り難いです。今後とも宜しくお願いします。

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