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プロローグ


結婚式の晩だった。


娘を嫁がせたたララは、心なしかがらんとした家の中を歩いていた。結婚の準備や本番の疲れも残るのに、早く休みたい気持ちが起こらなかった。


花嫁衣装をまとった娘の笑顔や周囲の祝福。昼間の賑わいだ雰囲気が、彼女をちょっと興奮させていた。


壁に掛けられた亡き夫の肖像を眺める。彼女より二十二歳年上の夫は、かつて議員をしていた。その勲章を下げた威厳ある礼装姿だ。見そめられたララが十七歳で嫁ぎ、子が翌年生まれ、彼はすぐに事故で他界した。


(赤ちゃんのピッパを抱えて、途方に暮れたわ。その子も今日お嫁に行ったの。きれいだったわ)


裕福な議員夫人に嫁いだはずが、途端に生活が苦しくなった。乳飲み子を抱えながら食堂を始めた二十年も前のことを思い出す。夢中に働いた。のちに娘のピッパも手伝い、店の看板娘になってくれた。


自分のことなどほぼ考える余裕もなく過ぎた日々だった。課せられた義務と責任を夫の分まで果たした自負がある。


(気づけば三十八歳)


一人の家で、ララはふと思った。娘の結婚支度のために資金を貯める必要ももうない。老後を考えるには、まだ早い気もした。そして、考えたくもない。十分な金はある。


(これから、どうしよう…)


旅でもしてみようかと思う。贅沢だがドレスを新調して、別な場所へ行ってみたい気がした。旅行など、ずっとしたことがなかった。


その時、誰かの声がした。一人の家だ。ララは怖くなり、戸締りの記憶をたどった。玄関も窓もきちんと閉めたはずだった。


もう一度確かめようと、玄関へ向かう。そこで、大きな影を見た。覆面をした男が手斧を持ち、彼女の前に立ち塞がった。瞬時に強盗だと悟った。女一人の家なのは、周知のことだった。


悲鳴を上げる間もなかった。男の振り下ろした凶器が、彼女の視界を真っ暗にさせる。耐え難い衝撃を感じたララは、床にどさりと倒れた。


その後は、自分を失った。



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