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白銀の剣の場合

「リリスさん! あなたならトアがどこに行ったかわかりますよね? 教えて下さい! 」


 俺とレインとアトラスはギルドの受付嬢、リリスさんにトアの行方を聞いた。


「最近は個人情報についての取り扱いが難しいので駄目ですね〜」


 貼り付けたような笑顔でこう返された、しかも目が笑っていない。


「用件がそれだけでしたら退いていただけますか? 次の方も並んでいるので」


 俺達の後ろに並んでいるというか、一緒にいるのはトアを追い出した元凶だ。


「こいつらは並んでいるわけじゃなくて、身内だから………」

「はいアウトーーー! 婚約者は身内って言うならトアにちょっかいかけんじゃないわよ! 警備! この冒険者を連れ出してちょうだい、営業妨害よ! 」


 リリスさんがギルドの警備を大声で呼んだ。

 やっぱりリリスさんはトアから事情を聞いているんだ。

 俺達はここが正念場と必死でリリスさんに弁明した。





「はあ〜、それじゃあ、白銀の剣のみなさんがトアのことを手紙で家族に伝えたら、自称婚約者さん達がトアに会いに行って暴走しちゃったと」


「ああ、そうだ。だから俺達はトアに謝罪したい!お願いだからトアの居場所を教えてくれ」


「うーん、教えるのは良いですけど、トアが許してくれるかは知りませんよ? あと、これだけは約束して下さい。トアが理由を知ってもあなた達といることを拒んだら潔く離れるって。約束してくれるなら教えてあげます」


 リリスさんの言葉に俺達は頷くことしか出来なかった。

 まずはトアに会わないと話しすら出来ないのだから。

 俺達はリリスさんに教えてもらった町へ急ぐことにした、もちろんアイツらも連れてだ。





 俺達は馬車で五日かけトアのいる町までやって来た。

 ここにトアがいる。

 俺達は逸る気持ちを抑えてギルドに向かった。

 トアは目立つからギルドで聞けばわかるはず。

 そんな中アトラスが急にキョロキョロし始めた。


「どうしたんだアトラス? 」


「この匂いは………近くにトアがいる! 」


「本当ですか?! 」


 俺達は近くを見渡した。

 するとわりとすぐにトアを発見出来た、あの姿はトアに間違いない!

 急いでトアに走り寄る、気配に気付いたのかトアがこちらを驚いた顔で見ていた。



「「「トア(さん)!!!」」」


「え?! 」


 俺達は揃ってその場で土下座した。


「へ? な、なんで土下座なんてしているんですか?! 本当に止めてください! ほら、皆さん立ち上がって! こんな場所でそんな行動とられたら私、この町で住めなくなりますよ! 」


 トアがそう叫んだ。

 そしてトアは俺達の襟首を掴んで、人通りの少ない道へ連れて来た。





「もう! あんな目立つ場所でなんてことするんですか! 」


「申し訳ない」

「申し訳ございません」

「ごめん」


 俺、レイン、アトラスが順に謝る。

 確かに配慮が足りなかった。

 トアを見つけて勝手に身体が動いたのだ。


 俺達はトアに謝罪と共に、トアに難癖つけた奴らのことの説明をした。




「なるほど、するとこちらの方々は皆さんのご親族なんですね? 」


 俺達はそれぞれの親族をトアの前に押し出す。


「私はヴィンの姉のヴィアンカよ」

「私はレインの母のレイチェルです」

「私はアトラスの双子の妹のアンリ」


「そうですか、ご家族………まあ、気持ちはわかります。久しぶりに手紙が来たと思ったら女のことが書かれている。そして会いに行ってみればこんなの………そりゃ文句のひとつも出るでしょう」


「だから、婚約者でもなんでもないんだ! トアに嫌な気持ちをさせて本当にごめん」


 俺もレインもアトラスも頭を下げる。

 それを見て家族が驚いている。


「………もう、良いですよ。頭を上げて下さい。謝罪は受け入れます。これ以上は謝罪はいりません」


「じゃあ、また一緒に………」


「あー、それはちょっと」


「「「な、なんで? 」」」


「だって、皆さん私のことかまってくるじゃないですか? そうすると今後もこんなことあると思うんですよ。それこそ次は本当の婚約者さんが来そうだし」


「「「婚約者なんていない(です)!」」」


 トアは困った顔をして俺達の家族に話しかけた。


「あの、たぶん皆さん貴族とか、偉い方々ですよね? そうするとやっぱり家との繋がりのために婚約者候補はいるのでは? 」


 トアの問いかけに女性陣は。


「そうね、何人かいるわ」

「うちも一族の者から数人候補が上がっているわね」

「まあ、打診は来ているらしいよ」


「ほら、いるみたいですよ? ちゃんと向き合わないとダメですよ」


 トアが俺達を見て諭すように言ってきた。


「いや、俺はトアのことが………」

「トアさんがいるのに………」

「トアのブラッシングじゃないと」


 おい、アトラス!


「きちんとご家族とお話して下さい。それと私は孤児ですよ。はっきり言って私を側に置けば揉めます。断言できます。だからちゃんと感情だけではなくて考えて下さい」


 そう言うとトアはその場を後にした。

 俺達はそんなトアを追うことが出来なかった。






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