いろいろ出てくるな〜
最近私とガルさんが町を出てダンジョンに向かう時、なんか視線を感じる。
襲って来るわけではないので放置しているけど、少しずつその数が増えているんだよね。
「ねえ、ガルさん。あの気配感じる辺りにドラゴンブレス吹いたらどうなるだろうね? 」
「ははは! 面白いこと言うねお嬢さん………え? じょ、冗談だよね? そうだと言っておくれ! 」
まあ、半分冗談、もう半分はやってみても良いかな〜ぐらいには視線が鬱陶しい。
どうせだったら姿を現して言いたい事を言ってもらいたい。
そんな中、私の前に姿をよく見せてくれる生き物もいた。
ウサギと亀だ。
え? 物語の名前かって?
初めて見た時は驚いたよ、だって大きい亀の上にウサギが堂々と乗っているんだもん。
最初は少し離れたところからこちらを見ていたのだけどだんだんこちらに寄って来た。
「こんにちは。今日もブラッシングと甲羅掃除がご希望ですか? 」
私の言葉がわかっているようにウサギが私の腕の中にやって来る。
私は柔らかいブラシで優しく毛を梳いていく、たぶん換毛期なのか結構毛が抜けるのよね。
特に考えはなかったけど抜けた毛は綺麗に保管している。
次に亀だが、初めて会った時に、気になった甲羅の汚れを落としてあげたら会う度にそれを強請られるようになった。
亀には甲羅の汚れは日光浴が大事だと伝えウサギをブラッシングしている間は日光浴をしてもらっている、日射病には気をつけてね。
その甲斐あってか、ウサギも亀もとても綺麗になった。
最近ではそれを見ていたガルさんにもお世話を希望されている、ドラゴンってどうお世話すれば良いのかな?
とりあえず優しく身体を布で拭いてみたらもっと強くと言われ、どんどん強くしていった結果、タワシでゴシゴシが一番気持ち良いと言われ毎日ゴシゴシしてあげている。
あ、あと少し間抜けなコウモリも顔見知りだ。
ダンジョンの帰り道、なんか聞こえるな〜と思ってよく見てみたら、大蜘蛛の巣にコウモリが引っかかっていた。
普段ならそのまま通り過ぎるんだけどあまりにも悲しそうな鳴き声だったから巣から外してあげた。
それから妙に懐かれたのかよく顔を出して来るんだけど、何故か日中現れてはお日様の光にやられて弱っている。
その都度介抱するんだけど、そろそろ学習してほしい。
そんな毎日を送っていたがついに、人が接触してきた。
たぶん毎回こちらを伺ってきていた人のようだ。
なので会って早々にこちらから切り出した。
「毎日お疲れ様です。それで、どちらのおつかいですか? 」
私の言葉にその人は。
「はは、気付いていましたか。おつかい………そうですね、私はある方から依頼されてあなたを観察していました」
「まあ、そうでしょうね。それで今姿を現したのは何故ですか? 」
「ちょっと直接確認したいことがありましてね、あなたはヴィン様のことを愛していますか? 」
この人は何を言っているんだ?
ちょっとトアちゃん意味がわからないよ。
「よく意味がわかりませんが、愛してはいませんね」
その言葉にその人は非常に驚いた顔をした。
え〜、何その反応〜。
「え? あのヴィン様ですよ? 顔良し、家柄良し、頭も良い、どこにご不満が? 」
どこにご不満が?ってマジで意味がわからん。
ヴィンさんは前世の記憶仲間で、ちょっと親近感があるけど今のところ愛しては………いないな。
「私、ヴィンさん達と一緒に冒険していたのって本当に短い間なんですよ? いくら顔が良いからってすぐに愛したりしませんって。それに冷静に見てください、私のこの姿。正直、あの三人と一緒にいるにはいろいろ残念でしょう? あなたがヴィンさんとどのような関係かは知りませんが、どう考えてもヴィンさんと私が合わないってことはわかるのではないですか? ヴィンさんの本来の立場を知らないし、知らない方が良いとさえ思っています」
私の言葉にこの名前も知らない人はますます驚いている。
たぶん貴族関係の人なのにこんなに表情変わって良いのかな。
「そうですか。いや〜、ここまでヴィン様に会ったことがある女性で、ヴィン様に興味を持たない人がいるとは………しかもよりにもよってその人がヴィン様の………。なんと言いますか、こちらで考えていた事態とはいろいろ違っているようです。不躾な質問にお答えいただきありがとうございました。今回は一旦引き上げたいと思います。またお会いすることがあると思いますが、その時改めてご挨拶させていただきたいと思います」
そう言うとその人はその場を後にした。
後に残された私は。
「ねえ、ガルさん。あの人なんだったのかな? 」
「私に聞かれてもわからないよ。とりあえずお嬢さんの周りは当分の間落ち着かないかもね。私としてはもっとドキドキさせてもらいたいんだが」
一体ガルさんは何を求めているんだろう?