第二百四十五話 残酷な真実
※四十八話で「トリシャ以外にも四人の男女に図鑑マークがあった」的なこと書いてたんですが、「四人の男女」だとトリシャがサークラ系陽キャじゃなくなっちゃうので「男子四人」に修正しました
ここからまたアルマ視点に戻ります!
――僕は、原作を守護れていなかった。
図鑑から分かった「原作の舞台が特区の学園だった」という衝撃の事実を知ったあと、僕は何かの間違いであることを祈って、〈エネミー図鑑〉をめくった。
……けれど、それは地獄の始まりだった。
原作の舞台とこの帝国とでは、出てくるモンスター自体は共通のものが多いのか、少なくとも序盤のうちは8割程度が解放されていて、さらにリスティアの項目を見れば分かる通り、〈エネミー図鑑〉の説明欄には「この作品が~」とか、「ヒロインが~」のようなメタ的な情報も書かれている。
そのおかげで、最初の方を読んでいっただけで、とんでもない事実が次々と明らかになってしまったのだ。
まず何より一番驚いたこと。
それはフォールランドストーリーがRPGではなくSRPGで、ギャルゲーではなく乙女ゲーだったこと!!
図鑑の解説からの類推になるが、このゲームは世界一ファクトリーが初めて作った乙女ゲームであり、実際には〈フォールランドストーリー ~夢見るワタシは恋の闇夜に堕ちる~〉が正式タイトルのようだ。
(何してるんだよ世界一ファクトリィィィィ!!)
と思わずキレ散らかしてしまいそうになったが、この事実が導くのはさらなる驚きの事実だ。
まず、この作品が乙女ゲームだとすると、当然男の僕は主人公ではなくなる。
では原作の主人公はというと、〈アルマ・レオハルト〉ではなくて、〈メイ・クライン〉。
そう、今メイドの仕事をやってくれているメイさんだった。
でも、僕は悪くないと思う。
だって、名前が〈メイ・ドロッセル〉なんてなってたら、「ああ、メイドキャラね」って思っちゃうのはしょうがないはずだ。
(……まあ、それ自体がイレギュラーだったみたいだけど、さ)
これは、僕のゲームUIが特別だったから起こった事故。
本人に聞いたら、「ドロッセル」という本名は隠しているし、本来なら〈メイ・クライン〉と見えるのが普通らしい。
ちなみにクラインという姓が孤児だったメイさんを引き取ってくれた今のパン屋の両親の名字で、ドロッセルというのが秘密にしている本当の名字のようだ。
(いやまあ、ゲーム的に考えたら、パン屋がドロッセルなんて名字なの違和感だけどさぁ!)
などと後悔しても始まらない。
もうどれだけ嘆こうが、彼女が〈聖女〉であり、原作ゲームの主人公であるのはもはや覆らない。
何しろ一縷の望みに賭けて、心配するメイさんに拝み倒して、アルマ式適性判定をやってもらったところ、こんな結果が出たのだから。
―――――――
LV 2 メイ・ドロッセル
光:SS
闇:-
火:S
水:S
土:S
風:S
契約精霊:光の基本精霊ウィスプ
―――――――
(あまりにも! あまりにも主人公すぎるだろ!!)
光だけがSだから僕が主人公かも、なんてはしゃいでいた自分が恥ずかしくなるほどの適性値。
水魔法SSでドヤっているファーリに話したら、目をむいて卒倒されるレベルで恵まれすぎた魔法適性だ。
ただ、本来は主人公としてブイブイ言わせるはずの彼女が、どうしてリスティアの召使みたいな境遇になっていたか、というと……。
(これも、僕が入る学校間違えたせい、って可能性があるんだよね!)
今一度、僕の全てのスタート地点となった自分が書いたアンケートを、このゲームが乙女ゲーだという前提で目を通してみる。
――――――――――
その中でも、一番好きになれたのがアルだというのは、すでに答えた通り。
ただ、俺がアルのことを一番好きになれた理由はちょっと変わっていて、彼が「最初から最強な主人公」などではなく、「プレイヤーと一緒に最強になっていく」タイプのキャラクターだったことが、案外決め手になったのだと思う。
主人公が実は勇者の血筋だと判明して……なんてのはよくある展開だし、この作品にもその要素はあったけれど、それはアルの本質とは無関係。
実際、アルはその恵まれた血筋とは裏腹に、本編開始時の十五歳の時には「落ちこぼれ」だった。
優秀な者たちが集う学園の中で、碌に魔法も使えない彼はステータス的にも物語的にも「弱者」だったのだ。
だが、だからこそ成長した時が映えるし、育ててやりたいという気概も湧く。
――「最弱」から「最強」になる。
言葉にすれば陳腐なそれを、ゲームのUIを、コントローラーを通して、ほかならぬ自分自身の手で成し遂げられるからこそ、アルというキャラクターは「特別」なのだ。
――――――――――
もはやなつかしさすら感じるアンケートだけど、今読むと受ける印象はまた違ってくる。
まず、僕は「アル=アルマ=主人公」だと決めつけていたけれど、よくよく読めば「アルが主人公だ」とは一言も書かれていない。
かなり変な書き方だと思うけれど、作中アルマは「最強主人公じゃない」ことと、「だんだん強くなっていくキャラ」であること。
それから「主人公は勇者の血筋」であり、「アルマも恵まれた血筋」とは書いてあるだけだから、「主人公」と「アル」が別の人物だとしても一応意味は通るのだ。
ただ同時に、アルは「プレイヤーが最強に育てられる」と書いてあるから、僕が「パーティに加入出来るキャラ」というのは確定。
そこから推理を進めていくと……。
――原作のアルマは魔法が使えないから帝国の学園に入れなくて、特区の学園に入学、そこでリスティアに絡まれるメイさんを助ける、のが正史なのでは?
そんな、原作を守護るつもりだった僕が、一番原作を壊していた疑惑が浮上してしまうのだ。
(逆に、メイさんをこっちの学園に呼び寄せてここで働く手配をしてくれたレイヴァン兄さんはファインプレイ! やっぱり兄さんしか勝たん!)
と、レイヴァン兄さんの素晴らしさを再認識したところで、次に気付いた事実はレイヴァン兄さんにもある「図鑑マーク」の真実。
僕は今まで、図鑑マークが表示されている人が少ないからこそ、図鑑マークというのは重要人物のみにつくのかと勘違いしていたが、違った。
図鑑システムが解放されて分かったが、図鑑は〈エネミー図鑑〉と〈アイテム図鑑〉しかなく、〈人物図鑑〉のようなものはない。
つまり……。
(この図鑑マーク、単に〈エネミー図鑑〉に登録される相手に、つまり、原作で戦う可能性のある人についてるだけだ!)
〈ファイブスターズ〉を含む、僕のクラスの十人にだけ図鑑マークがついていて、ほかの人たちにほとんどついていなかったのは、僕のクラスメイトの十人が、〈学園交流戦〉で原作のメイさんたちと戦うメンバーだったから。
一方で、ネリス教官や剣聖グレンのようなあからさまに重要そうな人たちについていなかったのは、彼らが「帝国にとって」重要な人物ではあるけれど、原作の舞台である特区との関わりが全くないから。
そう考えると、辻褄が合うのだ。
しかし、その前提に立つと、僕は本来なら最低でも〈学園交流戦〉で特区を訪れた時、この事実に気付くチャンスがあったことになる。
なんといっても、あそこは本来ならゲームの舞台。
学園の人間同士で競い合う行事は無限にあるし、図鑑マークがついている人であふれていただろう。
それが発覚しなかったのは、ひとえに「あいつ」のせい。
(リスティアアアアアアアア!! 絶対に許さないぞ、リスティアアアアアアアアア!!)
そう、リスティアの奴のせいなのだ。
メイさんを下したせいか、図鑑を見ると若干原作よりも力を持ってそうなこの世界のリスティアが街ごと「鑑定封じ」なんて余計なことをして、僕が図鑑マークに気付くチャンスをふいにしたのだ!
……「交流戦の時点で気付いても大差なくない?」とかいう正論を言ってはいけない、泣くから。
いや、いや、確かにね。
今になって思えば、それより前に気付けるポイントあったよね、というか、帝国よりも特区の学園の方がゲームの舞台っぽいのはそうなのだ。
「完全実力主義で、他国を圧倒する戦力を持つ帝国」よりも、「強大な五つの国に囲まれた、どこの国にも属さない特別な地域」のが主人公陣営っぽいし、「入学者の平均レベルが50のエリート学園」より、「訳アリの人物が多くて実力者も初心者もいるごった煮の学園」の方がゲームの舞台っぽい。
ついでに言うと、僕が帝国の第一英雄学園がゲームの舞台に違いないと思ったのは、〈ファイブスターズ〉が……帝国の有力者の娘が五人も入学すると聞いたから。
ただ、メイさんに聞いてみると、今年の特区の学園には、国の重要人物の娘どころか、王国の第三王女シャーロットをはじめとした五ヶ国の国家元首の息子や娘などが集まっているらしい。
こっちの方面でも、完全に規模感やゲームらしさで敗北している。
もはや全ての状況が「特区こそが本当のゲームの舞台だ」と示しているが、ただ、僕はそれでも、どうしても自分が学校を間違えていたという事実を認め切れていなかった。
……いや、もちろん理性ではそうなのだろうと分かっている。
それでも、認めがたいものというのはあるのだ。
なぜなら、もしも、もしも僕が学校を間違えていたのが事実なら、僕は原作を守護れていなかっただけじゃない。
僕は……。
別にイベントでもなんでもない学校の行事を「ゲームのイベントだ!」と勘違いしてありもしない攻略法を見出して……。
ヒロインどころかサブキャラですらない、単なる大会イベントのライバルチームの〈ファイブスターズ〉をメインヒロインだと思い込んで……。
魔王から世界を守るためと言いながら五股しようとしていた……。
「とんでもなくやべー奴」になってしまうのだから!!
認めたくない若さゆえの過ち!
大波乱の第十四部、これにて閉幕!
連載開始から三年も経っちゃいましたが、作中最大のどんでん返しを無事に書き切れてよかったです!
ここから物語は終盤へ!
真実を知ったアルマくんの逆襲が始まります!!
……が、ちょっと展開まとまってないので、しばしお待ちください!
今回はかなーり頑張ったので、☆評価や感想などももらえると嬉しいです!
とりあえず次は「バーチャル美少年ダンチューバー」の続きを投稿していくので、こちらもよろしくお願いします!





