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特別IFストーリー やりこみ転生ゲーマー その三

少し遅れちゃいましたが、IFストーリー、続きです


「――レミナ。レミナってば。もう授業終わったよ」


 ちょんちょん、と脇腹をつつく音に、ハッと我に返る。


「え、あ……トリ、シャ」


 どうやら、あまりにもハルト様ショックがデカすぎて、完全に意識が飛んでいたようだ。

 ……でも、それも無理はないと思う。


(だって、あれはない! あれはないよ!)


 確かに、よくよく見れば、容姿だけは原作のハルト様とそう変わらない。

 だけど、あまりにも雰囲気が違いすぎる!


 不遇な境遇から生まれる影の濃さとか、それでも自分の信念を曲げない意志の強さとか、そんなものが欠片も見えなかった。


 何がどうなったらあんな気の抜けた顔になっちゃうのか、私の方が聞きたい。


「お、教えて、トリシャ! ハルト……レオハルト様に、一体何があったの?」


 私がつかみかかるような勢いで尋ねると、トリシャちゃんは目をぱちぱちとした。


「な、なにがあったって……」

「レオハルト様って魔法が全然使えないんだよね? なのにあんなゆるい顔で……」


 そう詰め寄っていたはずが、トリシャちゃんのポカンとした顔で、何か失言したことに気付く。

 そして、その答えはすぐに彼女からもたらされた。



「あ、あのね、レミナ。レミナがどんな夢見てたか分からないけど、レオっちは魔法使えるよ? それも、火水風土の全属性」

「…………は?」



 頭の中が、真っ白になる。


 もしかしてトリシャちゃんが冗談を言っているんじゃないか、なんて一縷の望みにかけて思ったけれど、彼女の表情を見るととてもそうは思えない。


 呆れや哀れみよりも、心配が勝ったような顔。

 それを見るだけで、トリシャちゃんにとって、いや、このクラスの人たちにとって、「ハルト様が魔法を使える」というのは当たり前のことだと分かった。


 でも、それは原作の設定からするとありえない。

 ありえない、んだ。



 ――だって、ハルト様が「魔法を使えない」のには、明確な理由がある。



 とある事情からハルト様の魔法の素質は光以外最低値に落ち込んでいるはずで、その状態で魔法の訓練をしても、絶対に成功しない。


 成功しないから当然いくら訓練をしても熟練度が上がらず、だからこそ、ゲーム中盤でとある「気付き」があるまで、ハルト様は魔法が使えないまま。


 ――結果、学園で唯一魔法の使えない〈零光のレオハルト〉が生まれるのだ。


 そして、その境遇からハルト様は虐めや迫害を受け、それがハルト様の人格形成に大きな影響を及ぼして……。


(つ、つまり、あのハルト様の変わりようは、魔法を使えるからこそのもの? で、でもそもそも、どうしてあのハルト様は、魔法を使って……)


 思考が、まとまらない。

 結局、それからの授業には、一切身が入らなかった。



 ※ ※ ※



「……なん、で」


 そうやって訪れた午後の実技授業。

 いまだに思考の迷宮に囚われていた私だったけれど、それを吹き飛ばすようなさらなる衝撃的な光景が、目の前に広がっていた。



「――へへっ! 流石の剣の腕だな、セイリア!」

「――あははっ! 今じゃ刀の方が得意だけど、ね!」



 さわやかな口上を交わしながら、練習用の剣で打ち合う二人。

 でもその組み合わせが、あまりにもありえなかった。




(――なんでDくんと復讐姫が、仲良く訓練してるのぉ!?!?!?)




 意味が分からない意味が分からない意味が分からない!!


 ここに来て一番の驚きが、私を襲った。


 ……まず、Dくんことディーク・マーセルド。


 Dくんは、原作ゲームでは明確に「成長」をテーマに据えられたキャラだ。


 ゲーム開始時は、剣を持ったヤンチャ坊主という雰囲気で、やや無鉄砲なところも見せていた彼。


 しかし、闘技大会で復讐姫に手ひどい敗北を喫し、討伐演習では他クラスの幼馴染(プレイヤーの脳破壊に配慮してか、当然男。念のため)の死によって剣を持つ意義を見失い、復讐姫へのリベンジを誓った学園交流戦でも完膚なきまでに打ちのめされることによって、彼が持っていた甘さは木っ端みじんに粉砕される。


 その後、主人公との対話を経て、「オレは人を守るために戦いたい」という目覚めを果たす、訳だけど……。


 今はまさにどん底の底の底。

 主人公がイベントを起こしてメンタルケアを図らなければ、退学もありえるんじゃないかという状況、のはずなのに……。


(めちゃくちゃ元気なんですけど!?)


 もしかして、「私」がイベントを先取りして立ち直らせたのか、というのも考えたけれど、それも違う。


 それならDくんは練習でも盾を使っているはずだし、復活した彼に見られる落ち着きというか、精神的な重厚感がない。


 いや、今の彼も決して軽薄な訳ではないし私は好きなんだけど、ハルト様ほどじゃないにしてもアレは別人すぎる。


 一体どんなイベントの流れを経たら、あんな明るいままのDくんが出来上がるのか、全く分からない。


 そして……。


 そんな彼よりも私が驚いたのは、彼と打ち合う女の子。



 ――ゲーム内で〈赤髪の復讐姫〉と語られる〈セイリア・レッドハウト〉の方だ。



 彼女は攻略対象であるDくんの対応キャラとして設定されたキャラだけれど、その実態は恋敵というより、まさに「ライバル」。

 セイリア・レッドハウトは、常にDくんの前に高い壁として存在していた。



 ……そんなセイリアの境遇は、正直言ってかなりつらいものだ。



 数年前に父である剣聖を戦いで失った彼女は、その後継者となるべく、厳しい修練を行っていた。

 しかし学園初日、偽聖女との戦闘になった主人公とハルト様を助けたことで彼女の恨みを買ってしまう。


 怒り狂った偽聖女はロブライト家と縁の深いスイーツ家の長男ランドに彼女の襲撃を指示。

 卑劣な手段によって敗北したセイリアは、特別な薬を打たれ、剣士として再起不能にされてしまうのだ。


 ――それが、復讐姫としての彼女の始まり。


 しばらく学園から姿を消した彼女は、しかし討伐大会の当日に、ふたたび姿を現す。


 そうして外法に身を染め、力だけを追い求める〈復讐姫〉となった彼女は、圧倒的な力と剣の腕、それから父の形見である〈ヒノカグツチ〉を使って、闘技大会に一年ながら優勝するのだ。


 Dくんは、そんな「力こそが全て」を標榜する復讐姫と度々衝突し、主人公の助けを得て最終的に彼女に打ち勝つことを目指す。


 ……という、「力を使う意味」を常に問いかけられるルートになっている、はずなんだけど。


(どう見ても「復讐姫」なんて感じじゃないよね!? なんだったら、原作の再起不能になる前の彼女よりも明るいよね?)


 一体彼女に何があったのかは分からない。

 ただ、それが私の想像を超えたものだということだけは間違いなかった。


 ……これ以上、ただ自分で考えていても、答えなんて出ない。


 そう理解した私は、もうなりふり構わずに今唯一使える伝手に頼ることにした。



「――教えてトリシャ! 学園が始まってから今までのこと、最初から全部!」




果たして改変された本編に、「私」の精神は耐えられるのか!

デュエルスタインバイ!




まだ続きます!

続きは21時に!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
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二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
そういや苦手属性を無理やり得意属性にしようとしたせいでそれ以外の属性の適性が下がった眠り姫がいたな…… ちゃんと伏線してたのか
絶対原作破壊マン、ワロス
もしかしてこっちが主人公!?
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