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特別IFストーリー やりこみ転生ゲーマー その二

特別IFストーリー、まさかの続きです!

(――まずは、落ち着いて情報を集めないと……)


 この世界が原作ゲームと同じ進行をしていない、というのは気になるし、もしもあの素晴らしい原作を壊そうとしている人がいるなら絶対に許せないけれど、とにかく今の状況を把握しないとどうしようもない。


「ええとね。レミナ。今は……」


 幸い、新聞部ちゃんに「頭を打った衝撃で記憶があいまいで」と話すと、彼女は「はわわわ」と漫画のキャラか軍師しかしないような驚き方をして、あっさりと信じ込んでくれた。


(うーん。なんだか新聞部ちゃんも反応が少しおかしいんだよね。この子、若くして斥候伯を継いだだけあって、笑顔でも目が笑ってない、もっと抜け目ない感じのキャラだったと思うんだけど……)


 モニタ越しと現実との差、だろうか。

 ちょっと違和感は残るけれども、情報を得られるのはありがたい。


 余計な口をはさまず、ひとまずはおとなしく彼女の話を聞くことにした。


(……なるほど、ね)


 新聞部ちゃん……もとい、トリシャちゃんの話によると、今はまだ一年目の七月。

 つまりはまだ一年目の序盤がようやく終わった辺り、ということだ。



(――どん底の時期じゃん!)



 ここまでのイベントと言えば、入学関連のイベ。


 復讐姫が暴れる闘技大会。

 死者多数の地獄の討伐演習。

 それから、腹黒姫が無双する学園交流戦。


 どれも厳しいイベントばかりで、気が休まる暇がない時期だ。


 だからこそ、主人公の……この世界でいう「レミナ」の立ち回りが重要になる。

 一体、この世界での「私」はどんなふうにイベントをこなしてきたのか。


「あ、あの、トリシャ。それで……」


 それをぜひ詳しく聞こうと思ったんだけど、


「わ、もうこんな時間! レミナ! 急いで支度して! 遅れちゃう!!」


 そこで無情にもタイムアップ。

 わたしとトリシャちゃんは急いで身支度をして、学園へと駆け込むことになった。



 ※ ※ ※



「ううー。朝ごはん、食べれなかったー!」


 そう嘆くトリシャちゃんにクスッと笑みをこぼして見守りながら、わたしは廊下を早歩きで進む。


「レミナ。なんか余裕だよね。遅刻気味だし、その、記憶も、アレ……なのに」

「あ、あはは。そんなこと、ないよ?」


 トリシャちゃんはそう言うけれど、正直フォルスト好きの私としては、この光景に胸を躍らせずにはいられないのだ。



(――私、いま、フォルストの世界にいる! あの英雄学園の中を、歩いてる!)



 それを意識するだけで、なんだか舞い上がりそうな気分だった。


 何よりも……。


(教室に行けば、推しキャラたちに会える!!)


 あのDくんや陰険眼鏡、腹黒姫やマルマインくん!

 そして、そして何より……。



(――教室には、「あの方」がいる!!)



 私の最推しにして、このゲームのメインキャラ。

 私がフォルストが好きな理由の90%を占める偉大な人が、この先にいるんだ。


 そんなの、顔がにやけないはずがない。


「へんなの。……あ、そこだよ」


 言われなくても、校舎の間取りははっきりと理解していた。


 私は高鳴る胸を押さえながら、1-Aと書かれた扉を開け放つ!



(わぁああああああああああああああああああ!!)



 心の中で、思いっきり叫ぶ。


 見たことがないはずなのに、もはや実家のような安心感がある教室の風景。

 見慣れたモブに、談笑する腹黒姫様。


(わああ! わああ! わあああ!!)


 私が青春を注ぎ込み、私が見たかった光景が、そこにはあった。


「え、ええと、レミナ? 席、行かないの?」


 だからトリシャちゃん、そんなにドン引きしたような顔で見ないでほしい。


 これは、ゲーマーならしょうがないこと。

 しょうがないことなのだ。


 そんなわたしを、トリシャちゃんは呆れた目で見ていたが、


「あ、レオっちー!」


 途中で「知り合い」を見つけたのか、そちらの方に楽しそうに歩いていく。


(ま、さか……)


 トリシャちゃんが「あの方」と親しいなんていうのは、原作情報にはないけれど、この教室で、「レオ」とつく人は、一人しかいない。


(……あれは!!)


 トリシャちゃんが進む先、そこにたたずむ後ろ姿に、胸がときめく。


 名門レオハルト家に生まれながら、魔法が使えないというハンデを背負い、それでも必死に前を向き、自分の命すら投げ出して他人に尽くし続けた聖人。


〈零光のレオハルト〉という蔑称を受けながらも、その実、どんな生徒よりも高潔であり続けた、誇り高き少年。


(まちがい、ない!)


 貴公子然とした容貌に、憂いを帯びた瞳。

 どこか影のある面差しで、クラスメイトの誰よりも大人びた雰囲気を持つ、私の愛しの人。


「あ、トリシャにレミナ。おはよー」


 そう、その名も……。




「ハルトさ――って、誰ぇ!?」




 振り返ったハルト様(?)の、あまりにも憂いも緊張感もないぽやっとした表情に、私は思わず叫んでしまったのだった。

劇的ビフォーアフター!




続きは12時くらいに更新予定!

……予定、だったけど、まあちょっと無理そうなので18時に!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
書籍二巻、11月29日より発売中!
二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
一体誰がトリッピィをすごいです係に変えてしまったというのだ
予定ってのは変えるためにあるんだよ。レオっちがどうかなったくらいなんだってんだ‼←ただの酔っぱらい。
更新できててすごいです! うーん、ギャグよく思いついたな、と思う。 おもしろい。 応援してます
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