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第百九十三話 パーティ崩壊

突発的現代回です!


「や、やったああああああああああああああ!!」


 主人公の目の前に「天使」が降臨した瞬間、私は思わず喜びの叫びをあげ、


「……っとと」


 また、慌てて自分の口をふさぐ。


 ……壁ドンは、ない。


 この叫び癖なんとかしなきゃな、と思いつつも、私は頬が緩むのを我慢出来なかった。


(まさか、〈学園交流戦〉イベ前にこの子と契約出来るなんて!!)


 最推しのハルト様にアクセサリを貢いだあと……。

 私は最速で腹黒姫のイベントをこなして〈精霊の御所〉に乗り込み、バザーでリセマラしまくって手に入れた触媒で精霊契約を行った。


 契約出来る精霊は基本的に契約者の強さと触媒で決まるけれど、乱数によるブレもある。

 だから良い精霊を狙っての二時間の虚無マラソンの末、ついに私は目当ての精霊〈光の上級精霊シエル〉を引き当てることに成功したのだ。


(考えてみると私、リセマラばっかりやってるような……?)


 なんてことを思わなくもないけれど、今後の攻略を考えるとやらない手はなかった。


(ま、どうせなら初周から主人公強くしてあげたいしねー)


 精霊はレベルアップ時の主要能力成長率にも関係してくるため、初周からガチ育成をするなら、序盤は主人公のレベルをあまり上げずに強い精霊と契約してから一気に育てるのが最適解。


 まあ主人公は周回でいくらでも能力を伸ばせるから取り返しのつかない要素という訳ではないけれど、最初の精霊はストーリーの都合上、〈光の基本精霊ウィスプ〉で固定だ。

 光属性の精霊はレアな代わりに能力補正も高いけれど、流石に基本精霊では成長補正も低い。


(いやまあ実際ゲームで見てみると、主人公が最初に使った「残光の塵」って、光属性な上に効果も弱い素材で、「なんでよりにもよってそれ選んじゃったの!?」って言いたくはなるけど……)


 最初からあんまり強い精霊を喚んじゃったら成長の楽しさが損なわれるし、何より光精霊を出して聖女バレしないとそもそもストーリーが始まらないから、そこはしょうがない。


 とはいえ、別にウィスプが嫌いって訳じゃない。

 むしろ最初の精霊だし、マスコット的な存在として気に入ってはいるんだけど……。



(――はぁぁぁ。シエルたん……尊い)



 その点でも、シエルた……シエルちゃんは負けていない。


 天使系の精霊だけあって可愛いし、一般属性の上級精霊なんて置き去りにするレベルの高い補正を持っているし、羽をパタパタする姿が愛らしいし、成長項目も主人公にかみ合っているし、あと可愛いし可愛い。


 さらに、実質主人公専用の精霊である「光属性の精霊」は能力補正が優秀なだけでなく、特殊能力まで持っている。



 ――それが「ドロップ率アップ」。



 倒した魔物が素材や装備を落とす確率を上げる、貴重な能力だ。


 全ての光精霊に備わっているものではあるけれど、当然高位な精霊ほどその恩恵は大きく、単純なドロップ率だけでなく、レア泥率やエンチャ率まで目に見えて変わってくる。


 特に上級精霊であるシエルちゃんともなればその効果はすさまじく、別属性の精霊と契約した時とはほとんど別ゲーみたいになる。


 そりゃあ、こんなすごい精霊と契約出来るなら聖女ってもてはやされるよね、というのがよく分かる。


 ……さらに上に〈光の超級精霊ルミナス〉なんてのもいるけれど、シエルちゃんの方が可愛い上に、流石にそこまでくると一年生の間に狙うのはもはや現実的じゃないので、やっぱりシエルちゃんこそが至高だと言える。


「さってと!」


 これで、主人公の本格的な育成の準備が整った。

 ある意味で、ここからがゲーム本番。


 精霊のほかにも、やれること、行ける場所がどんどん増えてきて、キャラ育成の自由度が爆発的に上がる一番楽しい時期。


 その初めに、最強最優のシエルちゃんをゲット出来たのは、最高のスタートだと言える。

 ただまあ、とりあえず、



(――シエルちゃんが可愛すぎてもうマジ無理。スクショしよ)



 さいかわ天使ちゃんを記憶と記録に刻むため、私はちょっとゲームを進めるのをやめてパシャパシャタイムに移行するのだった。



 ※ ※ ※



 シエルちゃんの3Dモデルを思う存分グリグリ回して一通り楽しんだあと、


「……あれ?」


 次のイベントに向けてレベル上げをしている途中に、おかしなことに気付いた。



「――マルマインくんのレベル、上がってる?」



 いまだに一度も実戦に出したことがないはずのマルマインくんのレベルが、知らない間に上がっていたのだ。

 しばらく首をひねったあと、ふいに思い当たる。


「あ、そっか。アプデされてたんだった」


 項目が多くて流し読みしてしまったけれど、その中に「控えキャラが時間経過と共に成長する」みたいなアプデがあったような気がする。


「ええっと……」


 公式ページを探して調べてみると、確かに説明があった。

 どうやら私がやっていた初期バージョンとは違って、今は使っていないキャラクターも主人公のレベルを基準に少しずつ成長していくらしい。


(まあ、主人公が冒険に連れて行かないと一切レベルが上がらないのって、普通に考えておかしいもんね)


 主人公が頑張ってる間、お前らずっとサボってたのか、という話になってしまう。

 かといって、勝手にスタメン組より強くなってしまったらそれはそれで問題なので、主人公のレベルに応じて、というのはいい調整に思える。


(うん、これは神アプデ)


 初期レベルのままゲームクリアしてしまったマルマインくんを含め、レベルが追い付いていないから泣く泣く使わず仕舞いだったキャラは多い。

 前やっていた時には触っていなかったキャラも簡単に使えるなら、また楽しめそうだ。


(マルマインくんも、前から使ってみたかったんだよね)


 一番の推しはハルト様だけど、実を言うと、私はマルマインくんも結構好きだ。

 どのくらい好きかというと、マルマインくんの誕生日に一番安い〈パンの耳〉ではなく、なんとその十倍もの値段がする〈ルナ焼き〉をわざわざプレゼントするくらいには、マルマインくんのことが大好きだ。


(ま、やっぱり〈ルナ焼き〉をあげても好感度の上がりは前と同じだったし、能力値も変わらなかったけどね!)


 ちなみに、「もしかしてアプデでマルマインくんにも専用プレゼント追加されてるかも」と一瞬だけ期待したけれど、さっきついでに探した限りではそれっぽい項目はなかった。

 ……残念。


「でも、うん。これならマルマインくんも十分実用範囲内かも」


 主人公自体のレベルが低めということもあって、流石にスタメンキャラよりは成長は遅いけれど、これなら十分に戦える。


 なら早速、マルマインくんも出撃させて……というところで、我に返った。


 ――ダメだ。


 全キャラ中ぶっちぎりでよわ……不遇な性能をしているとはいえ、少しくらいマルマインくんを使っても普段なら問題ない。


 でも、今だけはダメだ。

 なぜなら、次のイベントはあの〈学園交流戦〉。


 一年次における最大の詰みポイントとまで言われた、悪名高い鬼畜イベントなのだから。



 ※ ※ ※



 ――〈学園交流戦〉こと、〈学園対抗新入生交流戦〉は、世界に六つある各国の「学園」の新入生が代表を出して戦い、ナンバーワンを決めるというトーナメント戦だ。


 鬼畜イベの代名詞であり、特に優勝が困難なことで有名なイベントだが、実は一周目のストーリーを進めるだけなら、いや、一周目に限らず、周回して真エンドを目指すつもりがないなら、別にこの交流戦で優勝する必要はない。


 決勝戦は実質的な負けイベントになるので、敗北しても物語は進むからだ。


 ……では、具体的にこのイベントの何がそんなに難しいか。


 勝ち進むごとに敵のレベルが上がるため、後半になるほど難易度が爆上がりしていくこと。

 敵が人間であるせいで、モンスターがあまりやってこない状態異常攻撃に晒されて初見殺しされること。

 学園長の画策によって主人公が強制的にリーダーを任せられるため、耐久力が低い主人公を守らなくてはいけないこと。


 そのほか、様々な要因があるし、そのどれも間違いじゃない。



 ――けれど、このイベントを真に鬼畜化させているのは、何よりも開発スタッフが仕込んだ「罠」にあると私は思う。



 この〈学園交流戦〉は、一つの学校が自慢の生徒を五人選び、一つのチームとして送り出して戦わせるのが「原則」だ。


 ただし……。

 トーナメントはその形式上、参加するチームの数が十六、八、四のような、二で割っていった時にあまりが出ない数にすることが望ましい。


 ゆえに、交流戦では数合わせのため、一部の学園だけが「例外的にチームを二つ出場させる」という仕様になっていた。


(これが、本当にさぁ……)


 聞いただけでは、特に気にせずスルーしてしまうような例外事項。

 けれどこのルールが交流戦イベの難易度を大きく上げ、優勝を絶望的なまでに遠いものにする要因になる。


 その「特別な権利」を有するのは、二校。



 一校は、「主催国」である〈技術特別区〉の第六学園。

 そしてもう一校は……「前回の優勝校」である〈アンルクス帝国〉が擁する第一学園。



 ……ここまで聞けば、誰にだって分かるだろう。


 これは、単なるトーナメントの数合わせなんかじゃない。

 プレイヤーから強キャラを強制的に引きはがし、同時にイベントクリアの最大の障害を生み出そうという、開発スタッフの悪意そのもの。


(そりゃ最難関イベントって呼ばれるのも、初周じゃ絶対優勝不可能っていうのも納得だよ)


 だって……。

 この悪辣な追加ルールのせいで、プレイヤーは頼りにしていた「強い味方」を取り上げられ、一周目の主人公たちでは敵うはずのない「最強の敵」に挑む羽目になる。




 ――その「最強の敵」の名は、〈ファイブスターズ〉。




 闇夜に輝く五つの星が今、史上最大の壁(負けイベント)となって立ち塞がろうとしていた。

昨日の友は今日の敵!!




離脱キャラにドーピングアイテムを使ってはいけない(n敗)

ということで、鍛えた仲間と裏のある皇女様と対立することになったアルマくんは、一体どうなってしまうのか!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
書籍二巻、11月29日より発売中!
二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
アルマ君が何かやる→巡り巡ってトリッピィが視察する→発見? トリッピィはどう考えても原作にいないか、別人みたいになってそう
状態異常……
[一言] トリシャが残光の塵を使わせなかったのかな?
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