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第百六十一話 根源

この話を書くために、タマゴボー〇って何個くらいいっぺんに口に入れられるのか、出来るだけ早く食べるとしたらどのくらいのペースでいけるのかなど、実際に買って色々試してみました!


そして幾度もの研究の結果、タマゴボー〇がおいしいということが判明しました!!(小並舌)


 無限に続くかと思われる、敵のウェーブ。

 ただ、最初のうちは全く焦っていなかった。


 むしろ、「敵が多い分には経験値もアイテムも稼げる」と思っていたほど。

 その余裕の源は……。



「よし、戦闘終了……うまぁああああ!!」



 ウェーブ処理が終わったと同時に口に放り込んだ、どう見てもタマゴボー〇にしか見えない「お菓子」にある。



《ルナ焼き(食料): 庶民の間で人気の定番お菓子。HPを1%回復し、満腹度が1上がる。》



 食料アイテムはポーションなどの通常の回復アイテムと違い、戦闘中に使用出来ないデメリットの代わりに「最大HPを回復出来る」というメリットを持つ。

 だから食料系アイテムは、「最大HPをMPの代わりとして使用することが出来る」僕と抜群に相性がいいのだ。


 食料による最大HPの回復量は、HP回復量の半分。

 ルナ焼きのHP回復量は1%だから、最大HP回復量は0.5%になる。


 0.5%と言うと少なく聞こえてしまうけれど、そうバカに出来るものじゃない。


 例えばアルマ(ぼく)はMPの最大値こそ低いものの、その分最大HPは潤沢。

 装備やアイテムなどによる補正が全くなかったとしても、計算上レベル80に到達していれば最大HPは800を超える。



 ――そして、最大HPが800以上あれば0.5%でも4回復する計算になるので、一粒で〈ファイア〉一回分を賄えるのだ!



 そして、このタマゴボ……ルナ焼きの何よりの利点は、「ほかのどんな食料よりも小粒」なこと。


 ゲームでは「食べやすさ」なんて項目は考慮もされていなかったと思うけれど、現実では違う。

 同時に何個も口に突っ込める上に食べやすいため、いっぺんに十粒くらいを口に入れて食べきれば、それだけで十回分の回復がすぐに出来てしまうのだ。


 また、僕の〈ファイア〉は非常に威力が高く、出てきた敵のメンツによってはたったの一発で殲滅出来てしまうほど。


 ごくまれに範囲外に逃れた魔物がいたり、炎にめちゃくちゃ強い耐性を持っているような敵が生き延びることもあったが、そういう相手には大抵光魔法がぶっ刺さる。

 深層モンスターに対しては明らかにレベルが足りていないレミナでも、撃ち漏らしを倒す役目は十分に果たしてくれた。


 つまり、魔物の群れに対して、〈ファイア〉を一回か二回撃つだけで、ほとんど撃破出来てしまったのだ。


 まあ、あまりにも余裕を見せるとそれはそれでレミナに疑われてしまいそうなので、一回の休憩で五粒くらいは食べるようにしていたけれど、実際はルナ焼きを一粒頬張るだけで消耗はゼロ。


 どれだけ連戦が続いたところで、心配するような要素なんてどこにもない……はずだった。



(――あれ? まだ終わらないの?)



 最初にそんなことを思ったのは、確か七回目の襲撃を撃退した時。


 それでも「このステージは周回主人公向けの鬼畜ルートだし、このくらいのことはありえなくもないか」とその時は深く考えなかった。


 ただ、その疑問を抱えたまま連戦を続け、襲撃数が十を超え、二十すらも超え、ついには三十にも届いた時、僕は流石に何か想定外の事態が起こっていると確信せざるを得なかった。


(イベント終了条件が、間違ってる?)


 あの世界一ファクトリーの作ったゲームだということを考えれば、難易度面でこのくらいのものが出されることは別におかしくはない。


 だけど、同程度の敵の集団が三十二回も襲ってくる、というのは明らかに異常。



 ――普通に考えて、同じ敵とそんなに何度も戦闘するのはダレるし、単純に面白くないからだ。



(……これは、まずいよね)


 無限に敵が出てくるというのは、確かにレベリングの観点からするとおいしい。


 実際、ここに来た時には80だった僕のレベルはあっという間に92まで上がってしまったし、撃ち漏らしを光魔法で倒したレミナも二つほどレベルを上げたようだ。


 ただ、レミナのMPは枯渇したため、今はマナポーションを飲ませつつ後ろに下げているし、僕について言えば〈終焉の封印窟〉に通えば安全にレベル上げが出来るため、正直そこまで必要性は感じていないのだ。


 それよりも、ここで無駄に粘ることによって状況が原作とズレてしまうことの方がよっぽど恐ろしい。


(それにしても、これはどういう状況なんだ?)


 戦いの合間に思考を巡らせて、原因を推測する。


 ……すぐ思いつく可能性は、三つ。


 まず一つ目は、これが制限時間で進行するイベントだという可能性。

 例えば、三十分耐え切れば必ずイベント進行するが、その時間が来るまではどれだけ敵を倒していても無限に敵が湧くというパターン。


 これなら僕が敵を倒すペースが想定よりも早すぎたため、三十二回なんてバカみたいな数の戦闘回数になったと説明がつかなくもない。


(……ただ、このイベントが始まってからもうかなりの時間が経ってるんだよね)


 この場合のシチュエーションは、「格上相手に消耗戦」みたいになると思うけれど、だとしたら耐える時間は短めになるはず。


 ここまで状況に変化がないのはやはり不自然なように思える。



 二つ目の可能性は、これが負けイベントだという可能性。

 要するにこの戦いで僕らが力尽きることが想定されていて、僕らが負けるまで敵が永遠に出続ける、という場合だ。


 出来れば当たっていてほしくはない想定だけど、これなら僕らが序盤にしては難しすぎる深層に飛ばされたことも説明出来る。


(ただ、世界一はその辺抜かりないからなぁ……)


 プレイヤー側の戦力に幅があるゲームを作ることが多い世界一は、そういう場合は何かしらの対策を仕込む。


 例えば、なんとか耐えていても一定時間が経つと強制的にイベントが進むとか、勝てないはずの相手に勝った瞬間、「卑怯とは言わないでよね!」みたいな台詞と共に不意打ちムービーが入って強制的に負けイベントにつながる、とかそういうものだ。


 特になんの変化もなく、同じような敵と延々と戦いが続いている今の状況は、やはり不自然なように思えてしまう。



 そして、三つ目の可能性。

 それは、そもそもこれが「籠城イベント」ではなかったという可能性。


 出てきた敵があまりにも強かったことから、僕は「引きこもって救助を待つのが正解」と思い込んでしまった。

 でも、これは鬼畜の殿堂〈世界一ファクトリー〉の作ったゲームだ。



 ――なら、このイベントの終了条件が「僕ら自身がこのダンジョンの奥地を探索し、魔物の大量発生の元凶を止める」であったとしても、不思議はない。



 このスタンピードもどきの原因が、何かの装置か、強力な魔物か、それとも単なる自然現象か、それは分からない。

 だけどもしその原因が見つけられるとしたら、僕らが向かわなきゃいけないのは……。


 決意を込め、魔物のやってきた通路、そのさらに奥へと視線を飛ばす。




「――世界樹」




 そこには、この異常事態にあってなお悠然と佇む、あまりにも巨大な樹が聳え立っていたのだった。

世界樹へ!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
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二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
ルナ焼きって、大きめのボー□じゃなかったっけ? 大きめボー□は直径2cm弱あるんだけど、大丈夫?(もっと大きいのも一応ある)
お腹の限界も……
[良い点] たまごボーロ…自分なら10個は間違いなく一気食いできますかね? [一言] そういえばたまごボーロ、地域によって名前が違うみたいですね。名古屋以北はタマゴボーロ(地域によりたまご、卵の表記も…
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