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第百五十三話 深層バトル

めっちゃくちゃ頑張って作りました!!!!

挿絵(By みてみん)




ペロッ!

これはガラケー時代の低予算スマホゲー広告の味!!



「――〈ウィンドバースト〉!」


 生命力を代償とした風の爆弾が、〈ネクロウィザード〉二体の間で破裂する。


 この〈ウィンドバースト〉という魔法は、第十階位。

 全十五のうちの十と考えると、せいぜいゲーム中盤の魔法といったところだろうけれど、僕には熟練度によるブーストがある。


 かつて訓練場でみんなを驚かせた第五階位魔法の〈ロックスマッシュ〉と同様、レベルアップで大幅に威力が増している。

 以前使っていた時とはくらべものにならないほどの規模の風が炸裂し、僕よりもレベルが高いはずのウィザードたちを鎧袖一触とばかりに吹き飛ばした。


「……でも、流石に一撃って訳にはいかないか」


 やはり、そこは腐っても深層の魔物。

 吹き飛ばされ、倒れはしたものの、いまだに戦意を失わずにこちらを見据えている。


(もしかして、風魔法に耐性がある魔物なのかな?)


 事前に下調べはしたけれど、深層のモンスターについてはそこまで詳細な情報は得られなかった。

 一般の冒険者などが戦うような相手ではないため、情報自体がそこまで出回っていないらしいのだ。


(こういう時は、ゲームでよくある〈モンスター図鑑〉があれば、と思っちゃうけど……)


 モンスター図鑑は、世界一ファクトリーのRPGでも定番だし、フォールランドストーリーにも絶対に実装されていると思うんだけど、残念ながら本編が開始した今でもまだ図鑑機能は開放されていない。

 条件が足りないのか、何かを見落としているのか。


 まあ、ここでないものねだりばかりしていても仕方がない。

 とにかくもう一度魔法を、と僕が手を持ち上げた時、


「レオハルト様、ダメです! 〈ネクロウィザード〉は魔法に耐性があって、光以外の属性の魔法はほとんど効かないんです!」


 そこで答えをもたらしてくれたのは、レミナだった。


「あいつのこと、知ってるの?」


 僕はよろめきながらも立ち上がったウィザードたちを目の端に捉えながら、わずかな驚きをこめて聞き返した。


「は、はい! トリシャと、一緒に色々と……」


 その一言で、納得する。

 確証のないことで彼女に頼るのは避けたのだけれど、トリシャであれば独自のツテで色々な情報を手に入れていても不思議じゃない。


「でも、どうして?」

「そ、その、レオハルト様といたら、もしかするとこういうこともあるかと思って……」


 どうしてそこで僕が出てくるのか、一瞬だけ考え込んでしまったが、すぐに戦慄する。



(――もしかしてレミナは、無意識的に僕が「主人公」だと気付いてる?)



 原作を守護ることを抜きにした素の僕は、どちらかというと安定志向でリスクを取らない、よく言えば慎重、悪く言えば臆病な立ち回りを好む温和な人間だ。


 例えば、レミナのレベル上げ。

 格上や同格の相手に当然のように突撃をかます帝国人のような戦闘狂とは違い、ちょっとだけレベルは高いものの弱点が明確で安全に狩りが出来る〈レイクサーペント〉での安定狩りを選んだことなどでも、レミナにそれは伝わっているはず。



 ――普通に考えれば、そんな僕についていくことで、深層の魔物と遭遇する、なんて結論には至らない。



 ただし、〈フォールランドストーリー〉での僕の立ち位置は、まず間違いなく主人公。

 それもRPGの主人公だから、様々な事件に、それも、激しい戦闘を伴う事件に巻き込まれることになる。


 つまり僕や僕の仲間は、否応なく戦いに身を投じることを宿命づけられていると言えるのだ。


(それを、本能的に察知したとしたら……)


 この学園ではめずらしい平民で、しかもゲームとは関係ないモブという「何も持たない」立ち位置だからこそ、僕が普通ではないことを見抜けたのかもしれない。


「……っと」


 流石に悠長に構えすぎたか。

 僕は立ち上がった〈ネクロウィザード〉たちから性懲りもなく放たれた闇魔法を手でぺしっぺしっと振り払うと、ようやく魔物たちに向き直る。


 ……正直、取れる手段は無数にある。


 どうせ闇魔法は見せてしまったんだし、ここで光魔法を解禁して弱点を突いてもいいし、素直に魔法をあきらめてエリア攻撃の〈絶禍の太刀〉で終わらせるという手もある。

 でも、まあ。


「これでいいか。……〈ウィンドバースト〉」


 この程度の相手にわざわざ光魔法を解禁する意味も感じないし、五分間のクールタイムがある〈絶禍の太刀〉をここで切るのももったいない。

 僕はもう一度〈ウィンドバースト〉を使い、ウィザードたちを吹き飛ばす。


「えっ? レオハルト様、風の魔法は……」

「大丈夫だって」


 耐性があろうと、よろめく程度には効いていたんだ。

 だったら、ただそれを繰り返せばいい。



「〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンドバースト〉〈ウィンド――」



 息もつかせぬ魔法の連射が、耐性を持つはずのウィザードたちをまるでピンボールの球のように翻弄する。


「え、ぁ……っ」


 呆然とした様子のレミナが見守る中、〈ネクロウィザード〉たちは反撃どころか立ち上がることすら出来ないまま、ひたすらに暴風に晒され続け、そして……。


 十数回にも及んだ暴風の連打が終わった時、そこに残っていたのは、ぼろ雑巾のようになって消えていく〈ネクロウィザード〉二体と……。


「あ……っ」


 後方監督面でニヤニヤ笑いを浮かべたまま、魔法の余波で死んでしまった〈ブラッディサイクロプス〉の死体だった。

玉突き事故!!

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
書籍二巻、11月29日より発売中!
二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
危機想定に何故自分が絡むのかって? い つ も ト ン デ モ や ら か し て る か ら だ よ ! あと、スタンピっちゃってる今なら、多分絶禍れる。 壁はあっても抜けて別の部屋に来ちゃえる様に…
[一言] アルマくん、10レベル以上の差は絶望的って冒険者さんが言ってるのにちょっとはないでしょ。これ恐らく一般常識だよ。
[良い点] >(――もしかしてレミナは、無意識的に僕が「主人公」だと気付いてる?) 笑ったw > ただし、〈フォールランドストーリー〉での僕の立ち位置は、まず間違いなく主人公。 ここから先、 …
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