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第百四十一話 信頼

前回の修業パートを早めに切り上げたから章立てが中途半端なことに……


「――よーし、揃ってんなぁ! んじゃ、今日は待ちに待った遠足……じゃあなかった、〈集団討伐演習〉だ! 楽しんでこうぜぇ!」


 ネリス教官のだみ声を合図に、僕ら一年A組は出発する。


 あの〈レイクサーペント〉狩りから一ヶ月。

 僕らはついに、〈集団討伐演習〉の日を迎えた。



 ――〈集団討伐演習〉は、この英雄学園の有名な学校行事の一つだ。



 その内容は単純で、帝国でもっとも広大と言われるダンジョン〈常闇の森〉にパーティで突入し、一定数以上の魔物を倒して戻ってきたら合格、という分かりやすいもの。


 学生だけで本物の魔物と戦う行事。

 これが並みの学校だったら、初めての実戦を前に緊張して……なんて光景が見られるところだろうけど、


「学年全員でダンジョン探索なんてすっごいよね! なんかワクワクしてきたよ!」

「むぅ。今さら〈常闇の森〉なんて時間の無駄。部室にこもって練習した方が有意義」


 パーティメンバーとなったセイリアとファーリは平常運転。

 レミナとトリシャの方を見ても和やかに会話をしていて、そこには緊張の欠片も見られない。


(……ま、そりゃそうだよね)


 ここは武闘派で名高い帝国貴族の、さらにエリートが集まるAクラス。

 今さら実戦に怖気づく者などいるはずもなかった。


 それに、〈常闇の森〉は場所によって大きく敵のレベルが変わるのが特徴で、今回の狩場に指定された浅層の敵はレベル30程度らしい。


 一方でセイリアもファーリも〈ファイブスターズ〉と呼ばれる学園屈指の実力者で、レベルも80を超えている。

 はっきり言って、苦戦する方が難しいくらいだ。


(……でも)


 苦戦する要素がないからこそ、僕はこのイベントは油断出来ないと考えていた。

 なぜなら……。



 ――「あの」世界一ファクトリーが、そんなぬるいイベントを用意するなんて絶対にありえないからだ!!



 出てくる情報から苦戦する要素がないのなら、必ず何かイレギュラーが起こってピンチになるだろうし、ここまで大規模なイベントが鬼畜難易度でないはずがない!


 僕はある意味で、世界一ファクトリーに全幅の信頼を置いていた。


(ただ問題は、何が起こるかだけど……)


 それについても、僕は現代日本の創作物を参考に、いくつかの想定をしてきた。




・想定1「スタンピード発生パターン」


 僕が一番ありそうだと思うのが、生徒たちが森に入ったタイミングで運悪く、あるいは人為的に魔物の大量発生が起こる可能性。

 調子に乗ったかませパーティが奥に踏み込んだところで魔物の群れが出現。


「な、なんで浅層にこんな数の魔物が……」

「う、うわああああ! 逃げろおおお!!」


 みたいなパニック展開になるアレだ。


 そこからは四方八方から襲い来る魔物たちと連戦しながら、森からの脱出を目指す撤退戦に移行するのがお約束。

 あるいは籠城戦をしながら救助を待つ展開もありえるけれども、どちらにせよ継戦能力が一番重要になってくるだろう。





・想定2「ボスフラパターン」


 次にありそうなのが、深層の魔物がなぜかやってきたとか、森の主の封印が解かれたとかで明らかに強いボスがふらっとやってきて、いきなり襲いかかってくるパターン。

 調子に乗ったかませパーティが余裕だなとかうそぶいたところで、強力なボスが出現。


「な、なんで浅層にこんな強い魔物が……」

「う、うわああああ! 逃げろおおお!!」


 みたいなパニック展開になるアレだ。

 ……こいつらいっつもパニック展開になってるな。


 問題は森と全く関係ない闇の勢力とかが襲ってくる可能性もゼロではないことで、特に「ドーモ。主人公=サン。オレは終盤に出てくるめちゃ強キャラの『始まりの魔王』だ死ねぇ!」みたいな感じで未来のボスが出張してきて負けイベントが発生するパターンがやばい。


 このケースの場合は、とにかく自パーティの戦闘力が物を言うことになるだろう。





・想定3「遭難事件発生パターン」


 想定した中で比較的穏当なのが、演習中に別パーティに事故が発生して、そのパーティを助けに行く、というもの。

 展開は遭難理由によるけれど、これも調子に乗ったかませパーティが退屈だなとか余裕をかましたところで、強力なボスが出現。


「な、なんで浅層にこんな強い魔物が……」

「う、うわああああ! 逃げらんねええ!!」


 みたいな展開になる可能性が濃厚なので、救助の締めにボス戦がある可能性は高い。


 ただ、このパターンで出てくる魔物がめちゃくちゃ強い例はあまりないので、危険度は比較的低めと見てもいいかもしれない。





(……ヨシ! イメージトレーニングはばっちりだ!!)


 状況の見直しを終え、ゆっくりと目を開ける。


 楽な行事だと考えているほかのクラスメイトたちとは違い、僕だけは全力でこの演習に向けてやれるだけの準備を進めてきた。


 このイベントでは、おそらくは個人の力よりも集団としての力が大事になってくる。

 だからこの一ヶ月、僕はパーティの戦闘力を上げることに尽力して、その成果は確実に出ていると思っている。


 備えは、万端。

 あとは本番に挑むだけ。



(――来るなら来い! どんなイベントが来ても全力で迎え撃って、必ず原作を守護り尽くしてやる!!)



 僕は森をにらみつけ、いまだ見えぬイベントに心の中で宣戦布告をしたのだった。

波乱の予感!!




万全(?)の準備を整えたアルマくん!

果たして原作のイベントは無事に生き残ることが出来るのか!?

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かっこいいアルマくんの表紙が目印!
書籍二巻、11月29日より発売中!
二巻
ついでににじゅゆも


― 新着の感想 ―
エネミー判定で対象取るだろうけど、まぁ教官は7割方エネミーだし…
[気になる点] ここでモンスターの大軍が出てしまった時、絶禍を使うと教官も倒れてしまうのだろうか?
[一言] どう考えても厨二病患者のイメトレでみんなにプギャーされる内容なのに、この世界においては正しいのが草
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