春プリスタッフ独占インタビュー 続き
つづき
これが現代編ラストになります
ゲーム会社が何やってるかとか分からないので大体テキトー言ってます!
興味ある人だけおおらかな気持ちで読んでもらえれば!
| 爆死の原因は…… |
記者:
売上不振の原因ですか、振り返ってみて何がよくなかったと考えているのか。
具体的にお聞きしても大丈夫でしょうか?
世田氏:
それは答えるのが難しいですね。
思い当たることがない、というのではなくて、思い当たることがあまりに多すぎて……。
一介氏:
むしろ、考え得る全てにおいて逆をやってしまった、という感じはありますね。
記者:
全て逆、ですか。
具体的には、どのようなところでしょうか?
世田氏:
たくさんありますが……まずはジャンルですかね。
具体名は伏せますが、某社の某シリーズが終わってから、「本格的な戦闘・戦略要素を含んだ乙女ゲーム」というのは驚くほど少ないんですよ。
つまり、ヒットすればブルーオーシャン(※競合する相手のいない市場のこと)な訳です。
記者:
なるほど、それを踏まえてフォルストを作った訳ですよね?
世田氏:
基となったフォースラⅡをSRPGにしようとしていたので、そのシステムをそのまま持ってきた、というのもありますけどね。
フォルストは骨太なゲームプレイが楽しめるように、学園パートと探索ではRPGのように自キャラを動かして、戦闘は難易度高めのターン制のSRPG方式にしていたんですが……。
記者:
それがダメだった、と?
世田氏:
一言で言えば、そうですね。
ただそう単純でもなくて、評価してくれる人はめちゃくちゃ評価してくれる一方で、刺さらない人はとことん敬遠してしまう、というパターンで。
一介氏:
感想やファンレターの熱量は過去一レベルですごかったですね。
記者:
分かります。
熱狂的なマニアが生まれるタイプの作品ですね。
一介氏:
実際、発売からもうずいぶん経っているのに一部のファンの方がまだRTAやら縛りプレイやらの動画なんかを上げてくれていて。
僕は特にソロプレイ縛りの動画のシリーズがお気に入りです。
記者:
SRPGでソロ攻略なんて出来るんですか?
一介氏:
無理です(笑)
特にフォルストはシステム上、一部の戦闘では主人公と攻略キャラが外せないので。
ただ、装備品の中につけると呪いで石化状態になってしまうものがあって、それで主人公と攻略キャラをずっと石にして、という感じでやっていましたね。
世田氏:
あ、私もたぶんそれ見てますよ。
毎度毎度、こんなことよく思いつくなと感心して楽しんでます。
一介氏:
グリッチまがいの攻略をする度に「開発スタッフはこのやり込みを想定していた!?」って出るんですけどね。
「いや全く考えてなかったよ」と毎回画面に突っ込んでます(笑)
記者:
愛されてますねぇ。
世田氏:
いやぁ、本当にありがたいなと思う反面、こういう状態は商業的には一番よくないんですよ。
「百人にぶっ刺さって絶賛されるけど、ほかには見向きもされない作品」よりも、「一万人に賛否両論とされる作品」の方が、売り上げは伸びますからね。
記者:
世知辛い(笑)
世田氏:
まあ色々言いましたが、一番問題だったのは、既存の乙女ゲームプレイヤーの層には刺さらなかった。
その層に最適化されていなかった、ということです。
一介氏:
そりゃまあそうですよね。
恋愛がしたいと思ってゲームを買ったのに、ずっと手ごわいシミュレーションさせられたら……。
世田氏:
これはちゃんとデータで裏付け取った訳じゃない全くの私見なんですけど、男性のギャルゲーマーは大体SRPGも好きなんですよ。
ただ、女性の乙女ゲーマーの場合は必ずしもそうでもないというか、少なくとも男性と比べてその率が少なかったのかな、と。
記者:
確かに、そう言われるとしっくりはきますね。
世田氏:
ですよね(笑)
でも当時の自分たちにはそのくらいのことも見えてなかったというか、一介さんと話してた時はいい考えに思えたんですけどね。
一介氏:
今思うと、「良い子の諸君!」とかいって謎の二人組が出てきそう(※ネットミーム。王道を嫌って突飛な展開を書こうとするクリエイターを諫める二人組のアスキーアートが一時期ネット掲示板で流行した)な話ばっかしてた気もします(笑)
世田氏:
あの時出てきてくれてたらなぁ(笑)
| 難しすぎたゲーム |
世田氏:
ただですね。
ジャンルが悪かったのもそうなんですけど、問題の本質は「難しすぎた」という部分に尽きると思っていて。
一介氏:
スタッフ全員、張り切りすぎたんですよね。
世田氏:
そう、「せっかくだからとことんまでやってやろう」みたいな熱量がスタッフ全体にあって。
士気自体はものすごく高かったんですが、それがダメな方向に作用しちゃったな、と今では思いますね。
記者:
具体的には、どのような点でしょうか?
世田氏:
・単純にステージ自体の難易度が高い。
・常に時間制限に追われるため楽しくプレイ出来ない。
・ボリュームがありすぎてプレイ時間がふくれてしまう。
の三点が、アンケートでよく言われていたところですかね。
記者:
それが「張り切りすぎ」ですか。
世田氏:
あとは、SRPGでよくある「ズル」が出来ない仕様にしたというのが一つですかね。
フォルストでは自分より弱い奴を殴ってもレベルは上がらないし、回復しあっても経験値が稼げないので、同格の敵と戦うしかないんですよ。
しかも、トドメだけ刺しても大した経験値がもらえないので、強いキャラで弱らせておいしいとこだけ、というのもあまり意味はないんです。
記者:
パワーレベリング(※強いキャラを利用して弱いキャラを一気に鍛えること)のようなことが出来ない仕様ということですね。
聞いているだけなら悪くなさそうにも聞こえますが……。
世田氏:
それを売りにした戦略ゲームなら実際なしでもないかな、と思うんですけどね。
ただ、キャラゲーとの食い合わせがよくなかった。
一介氏:
テストプレイには参加しましたけど、そこは苦労しましたね。
一度レベル差がついてしまうと、なかなか一軍に復帰出来ないんですよ。
記者:
なら、使わないキャラはずっと初期レベルのまま、なんてこともありえるという?
一介氏:
普通にありえますよ。
というか、ありました(笑)
世田氏:
「色んなキャラを使ってみたいのに、レベル上げの大変さと能力格差があって使えない」という批判がかなり多く届きました。
ただ、無制限に強くなれるようにしてしまうと、今度は強敵とのバトルが作業になってしまうので難しいんですよね。
このシステムなら味方のレベルの上限が敵の最大レベルと大体連動するので、周回しても敵の強さが陳腐化しにくいというのもあって……。
記者:
そういった管理のしやすさとトレードオフという訳ですね。
世田氏:
ただこれらの不満点には、発売一ヶ月後に行ったアップデートでかなり手を入れました。
単純に撤廃するのではなく、時間制限が緩いモードを作ったり、控えキャラが自動でレベルアップする仕組みを導入したり、ですけどね。
記者:
世界一さんはアップデートが丁寧なことでも有名ですからね。
世田氏:
ありがとうございます。
とはいえ、ゲームは初動が命なので、売り上げにはあまりつながりませんでしたが……。
しかしその代わり、何よりも貴重な「学び」を得ることは出来た、と思っています。
| フォルストから春プリへ |
世田氏:
フォルストでは様々な問題点、改善点が見つかりましたが、それら全てに自分たちなりの解答を出して製作したのが初代「遥かなるプリンスさま」です。
記者:
おお、とうとう……。
世田氏:
はい、ずいぶん回り道をしてしまいましたが(笑)
記者:
一番大きな改善点はなんだったんでしょうか?
世田氏:
やはり、マーケティングの甘さですね。
これはもう、まずハード、プラットフォーム選びの時点で間違っていたなと。
記者:
ハード、ですか?
世田氏:
意外に思われるかもしれないですが、男女のコンシューマゲーム機の所有率はそれほど大きな差はないようなんです。
ただ、持っているゲーム機の種類には明確に差があって、男性は性能に、女性は手軽さに惹かれる傾向が強いんですよ。
記者:
ああ、X-StationかSketchか、ということですね。
世田氏:
まあ、一言で言ってしまえばそういうことになりますかね。
なのにフォルストは、今までの世界一が主力としていたX-Stationでしか発売しなかったんですよ。
記者:
それは……かなりの機会損失ですね。
世田氏:
はい。
なので手間はかかりましたが、春プリは様々なハードでプレイ出来るようにしました。
予想以上に難航しましたし、今までにない問題も出ましたが、それに見合った成果はあったと思ってます。
記者:
複数ハードと言えば、春プリはゲームハード以外にも進出されてますよね。
世田氏:
ああ、「乱舞(※基本無料のスマートフォン用アプリ「遥かなるプリンスさま乱舞っ!」のこと)」ですね。
あれも基礎部分はちゃんとうちで作ってるんですよ。
運営自体は他所に投げちゃいましたけどね。
記者:
そういった柔軟さとこだわりが、やはりヒットにつながったんですね。
シナリオ面でも、何か気を付けたことはありましたか?
一介氏:
そう、ですね。
実はフォースラⅡからフォルストに換装する際に総とっかえしたのがよかったのか、比較的にシナリオについての課題は少なかったんですよ
記者:
それは、苦労が報われましたね。
一介氏:
修羅場った甲斐がありました(笑)
ただ、全般的なストーリーについては好評な反響が多くて、それなりの手応えがあったんですが、それ以外のところで違和感がある、という意見は結構ありましたね。
記者:
違和感、ですか。
それはどのような?
一介氏:
どうしてもふわっとした言い方になっちゃうんですが、ギャルゲーと乙女ゲーは攻略対象の性別を除いても、やっぱり何かが違うんですよ。
それが小さな違和感になって表に出てきてしまった、というか。
世田氏:
情報が少なすぎる(笑)
一介氏:
いやぁ、本当にそうとしか言えなくて(笑)
育ってきた文化背景というか、地層というか、踏まえてきた作品群、だと思うんですが。
そういう違いが生み出す癖、というか、あるいは呼吸というか匂いというか空気感というか。
ちょっと言語化しにくいんですが……。
記者:
分かる気がします。
同じテーマを描いてる漫画でも、掲載されてる漫画雑誌が違うとノリが違ったり。
一介氏:
たぶんそんな感じです(笑)
なので、ギャルゲ畑の人が書くと、どうしても小さな違和感が生まれてしまう、という意見が多くて。
それはある種の強みにもなりえる部分ではあるんですが、このシリーズでは矯正する方向で舵を切りました。
記者:
具体的にはどう矯正したんですか?
一介氏:
シナリオ班全員で乙女ゲーをやりまくりました。
……というのは半分冗談で、乙女ゲーム専用のライター枠を作って、そちらには乙女ゲーを極めてもらってます(笑)
記者:
なるほど。
専門家を設けた、という訳ですね。
一介氏:
なので、メインライターとかって大層な肩書をもらってますが、大まかなストーリーの構成とかバランスみたいなものを見るだけで、実作業にはほとんど関わってないんです。
専用のライターさんに「これやってくれよ」と投げるだけという。
世田氏:
むしろ一介さんみたいにほとんど全部に口出しして、自分でもバリバリ書いてた今までの方がおかしいんですけどね。
| 進化する世界一ファクトリー |
記者:
本日は貴重なお話をありがとうございました。
世田氏:
内容の八割くらいが別ゲーの話になっちゃいましたが(笑)
記者:
いやいや。
フォルストがあってこその春プリ、というのは十分伝わってきました。
世田氏:
そりゃ、伊達に爆死してないですから(笑)
記者:
では最後に、何か一言いただいてもよろしいでしょうか?
読者へのメッセージでも、今回の感想でも、今後の抱負でも、なんでも構いません。
世田氏:
では、私から。
一介氏:
どうぞ。
世田氏:
ゲーム業界は今、大きな変革の波に襲われていて、それは世界一ファクトリーも例外ではありません。
これから世界一がどう変化、進化していくか、私にもまだ分かりませんが、「人をワクワクさせるゲームを作る」という理念の下、これからもゲームを作り続けるつもりです。
皆さん、さらに進化していく世界一ファクトリーを今後ともどうかよろしくお願いします。
記者:
ありがとうございます。
世田氏:
あ、あと、大事なことを言い忘れました。
フォースラもフォルストもパッケージ版は生産中止してますが、DL版はまだ購入可能です。
気になった皆さんはぜひぜひどうぞ。
記者:
商魂たくましい(笑)
では、一介さんの方からは?
一介氏:
そうですね、ちょっと主題からはズレてしまうんですが……。
今回振り返って思ったのは、やっぱりライターにとって自分が生み出した世界は我が子みたいなもので、だから商業的に失敗だったと理解はしていても、フォースラの世界もフォルストの世界も嫌いにはなれないなと再確認しました。
ただ……。
記者:
ただ?
一介氏:
異世界転生って話が出てましたが、転生するなら絶対別の世界にしたいです。
どっかの鬼畜プロデューサーと鬼畜ライターのせいで、この世の地獄みたいなとこになっちゃったので。
(一同、笑い)
アルマくん「笑うなッ!」
現代編、これで一区切りです
ここからは引き続き原作を粉砕していくアルマくんの活躍をお楽しみください!