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術の祝詞は作者の想像で書いているので、ツッコミ無しでお願いします。
そんなデタラメな存在がいる時点でどうかしている、神と同じ様な存在ではないか。
『そちはどうじゃろうな、この子に引かれて来たようだが。
主足りうる器かえ?』
楽しそうに笑いつつ俺の頬に触れ、指先で先程傷ついた傷跡から血を拭い、妖艶に微笑む口元に持って行き舐めとる。
『さあ、示してみよ。そちの存在が、この子を導く標たるか。』
更に尻尾を強く締められ、苦しさに喘ぐ。
俺はこんな所で、このように死ぬというのか。
掠れる声で途切れ途切れ言の葉をつむぎ、痺れる指で宙に五芒星を描く。
「急急如律令!」
祝詞がきちんと紡げなかったが、雷を発生させ玉藻の尻尾を焦がす。油断していたであろう玉藻は、雷に衝撃にビクッと身体を痙攣させた。ほんの僅かだが締め上げる力が緩んだ隙に、短刀を持つ手を引き抜き首を絞める尾を切りつける。
呼吸を確保したことで、畳み掛けるように祝詞を唱え始める。
「天に在す雷帝のこころみ、我が祈り我が願い聞き届けよ、急急如律令!」
今度は祝詞をしっかり唱えれた事で、先程より強い雷を玉藻に浴びせる事ができた。雷で痙攣する事でうまれた隙に尻尾を払いなんとか抜け出す。そな場から少し下がり、呼吸を整え玉藻を見据える。
雷で帯電した事でビクビクと痙攣し、辺りに焦げた香りが漂う。次襲われれば命が無いのは分かっている、赤子と大人以上に力量差があるのだから。だけどここで引くという選択はできない、こんな所で玉藻の妖気が解き放たれれば都など数日で滅んでしまう。
ここに来る前に師匠に強い力を北の山から感じ向かうことは伝えた、せめて師匠が準備を整え討伐隊を組む時間だけは稼がねばいけない。
大地に短剣で五芒星を刻みつけ、新たな祝詞を唱える。
「天に在す偉大なる大の神の、寄るべに縋りつ力となれ、急急如律令!」
唱え終わると同時に短剣を五芒星の中心に突き刺し、術式を完成させる。
破られるかもしれないが防御壁を築き、玉藻が洞窟から出るまでの時間稼ぎの術だ。ただ術式に短剣を組み込んだので、俺の武器が本当に無くなってしまった。残るは長年この忌々しく感じていた、己の霊力のみとなる。
出方を伺っていると、場違いに笑う声が聞こえてきた。
ただ笑っているはずなのに、先程とは違い背筋が凍えるような圧を強く感じる。
『面白いのう、小童。よくも妾をコケにしたな、この怒りどこにぶつけようか。』
怒りによって放たれる妖気に圧倒される、先程まででも強いと感じていた妖力が数段跳ね上がる。余りにも密度の濃い妖気に吐き気すら覚えるが、玉藻から目を逸らす事ができない。
「どうか玉藻殿、怒りを沈めこの子共々この地から去ってくれませんか?」
怒っている玉藻に無駄だと思うが、争わずこの地を去ってもらえないか伺いをたてる。
『口説いの、この子がここを選んでおるのじゃ。妾はそれに付き添うのみよ。』
玉藻の背後に蠢く九尾が一斉にこちらに伸びてくる、自分の最後の瞬間を悟ってしまった。
最後の悪あがきになろうと、一尾位は潰してやろうと指で印を組み迎え撃とうとした時、洞窟内は眩しい光に包まれた。
光が収まりぼやけた視界が元に戻ると、目の前に玉藻の尾があり、九尾に貫かれる寸前だったのが分かる。
先程の光の正体を探るべく、辺りに視線を動かすと玉藻の背後にそびえ立った岩に大きなヒビが入っているのが見えた。
玉藻も大きなヒビに気がついたのか、伸びていた尻尾を戻し背後の岩を抱きしめる。
『そうか、選んだのじゃな。そなたの好きにするが良い、やっとそなたの求めうる資格の持ち主が見つかったのかえ。』
玉藻の抱きしめる岩がピシピシと音をたてながら、どんどんヒビが大きくなっていく。
岩の割れ目から淡い光が溢れ、徐々に視界をまた遮っていく。
玉藻が従い、四神の守護を受けるというこの子という存在が今ここに現れるというのか!
ガラガラと大きな岩が転がる音がするが、視界を奪われた現状打つ手も無く目を細めて様子を伺う。
玉藻だけで手に余る状態なのに、更に強力な者が現れる絶望感に震えが止まらない。先程から最悪な展開しか想像できないでいる俺に、まだ追い打ちをかけるというのか。
崩れる岩の音も止み光が収集して辺りを探るが、こちらに背を向けた玉藻しか見えない。玉藻の背後にそびえ立っていた岩は
、砂埃をたてつつ無惨にも崩れ落ちていた。
新たな出現が無いことを内心喜びつつ、玉藻への警戒を強める。
『やっと会えたの、思ったよりなごう時間かかりおってからに。』
玉藻の言葉に辺りを再度警戒するが、玉藻以外視界に捉える事が出来なかった。
そしてゆっくりとこちらに振り返る玉藻の腕の中には、身ぐるみに包まれた小さな赤子が収まっていた。
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