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狐の化身の笑い声が響く洞窟の中、睨み合いはまだ続いている。
ただ笑っているようでいて、こちらが隙をみせたら間違いなく狩られてしまう恐ろしさを払拭できない。
それにしても四神の護りはこの地だと先程言っていたが、都がこの地に遷都する前からここに存在していたという事なのか?
詳しく知りたいが聞ける仲でも無いので、聞くことは諦める。
対峙する笑う狐の化身の背後がぼやけたと思ったら、背後に新たな狐の尾が増えている。先程攻撃に使った尻尾はまだ視覚に入っている、何尾の狐なのか考えるだけでおぞましい。
今視覚に入っている尾は四尾、まだなんとかかわせる範囲だと思う。
狐の化身は存在の大きさで尻尾が増えると聞く、大陸の古典の書物に書かれ、俺が知る範囲では九尾が最高峰だとされている。四尾ですら俺にとってはもう厄介なのだから、これ以上尻尾が増えぬように祈るしかないな。
「狐殿、なにゆえこの地に留まられる。狐殿なら四神の力などあてにせずとも充分でしょうに。」
『狐殿とは雅では無いのう、玉藻じゃ。そちには特別に、玉藻と呼ぶことを許そう。』
マイペースな玉藻に内心舌打ちをするが、改めて問いかける。
「玉藻殿、質問に答えられよ。玉藻殿ほどの力があれば四神の守護など必要とされまい、なにゆえこの地に留まられるか。」
気配を探りつつこちらの武器を探る、式符が6枚に懐に短刀があるだけだ。はっきり言って分が悪い、せめて屋敷に寄って式符をかき集めてから来れば良かった。
『この子がここを選んだのじゃ、四神はこの子の守護であって妾には関係ない。長い年月かかるが、妾はただこの子が選ぶのを待つだけよ。』
背後にそびえる岩を撫でながら、極上の笑みを浮かべ笑っている。
『人間ごときにここを暴かれるとは思わなんだ、そちは主たりうるかみてやろう。』
ヤバいと思って横に転がると、ドスッと音をたてて尻尾が地面に突き刺さっている。次に襲ってくる尻尾を式符5枚で五芒星をえがき束縛し、次の尻尾を懐から出した短刀で弾き最後の式符で貫き固定する。残り一尾!
短刀を構えて玉藻に向かって走り出す、一尾ならなんとか避けられるだろう。とりあえず穏便にこの場を収めてしまいたい、力量差を鑑みると真っ向勝負で勝てる見込みなど無いのだから。
走りながら襲ってくる尻尾を避ける、少し避け損ねたのか頬に痛みがはしる。
これで四尾交わしたので、後は玉藻に接近出来れば!
気を抜いたつもりは無かったが、腹部に鈍い衝撃がはしる。
ちくしょう!まだ尻尾を隠していやがったか。
腹部を締めあげられ吐き気に襲われるが、玉藻から目を逸らす危険を考え顔をあげる。
その時見た光景に絶望を感じる、玉藻の背後には蠢く四尾が見える。俺の術はまだ解かれていない、二尾はまだ地面に縫い付けられている。それに襲ってきた尻尾はまだ玉藻のそばに戻っていない!
最悪の結果だ、なんでこんな所に伝説と言える存在がいるんだ。
腹部に巻きついた尻尾目掛けて短刀を振るい下ろすが、短刀が尻尾に届く前に残りの尻尾が手足を捉えた。
尻尾の力が強くなり、苦しみで息が詰まる。纏わりつく尻尾で俺を宙に浮かべ、玉藻の前に連れてこられた。
『その絶望を感じた表情良いのう、妾好みじゃ。』
「何故だ、大陸にいるはずの存在がこの国に。そして何故ここに留まる。」
『簡単な事じゃ先程も言ったじゃろう、この子がここを選んだのじゃ。
妾の意志など些末な事よ、この子の意思こそが全てじゃ。妾はこの子の、子守りにすぎんのじゃからな。』
玉藻の背後にある岩がこの子だとすると薄ら恐ろしい。この子と呼ばれる存在にとっては、伝説上の九尾ですら敵わないというのか?
グッと胴や手足に巻きついた尻尾が一段と締まった、痛みに仰け反ると新たに首元に尻尾を回されて体勢を戻される。
玉藻が鈴を転がすような声でケラケラと笑っている、そしてこちらを微笑みを湛えたまま伺い見て問いかけてくる。
『で、そちはこの子の主足りうるかえ?』
会話が成立している様で出来ていない、さっきから主とはなんなんだ。岩を祀っていけということか?首に巻きついた尻尾も徐々に力を込められている、息苦しさに苦しみながら問いかける。
「この子とはいったい何者なんだ、主とはなんなんだ。」
問いかけに自身の身体を抱きしめて、高悦したように微笑みながら答える。
『この子はこの世の全てじゃ。
この世に吉兆を産むか、この世に破滅を呼ぶか。この子次第なのじゃからのう。』
吉兆に破滅、相反する2つの現象。
1つの存在が選ぶというのか?そんな事を出来る存在が居るというのか?
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