表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安京陰陽奇譚  作者: 柚杏
3/12

3

閲覧ありがとうございます

師匠の所からの帰り道、言われた言葉の意味を考えながらとぼとぼと歩く。

最後に師匠が「星が動いた、近いうちに大きな出会いがあるだろう。」と言われたが、俺はどう答えていいのか分からなかった。


人と関われと言われても、まず相手が俺を避けていく。俺は生まれた時から強い力を持っていた、そのせいで生家にも迷惑をかけて師匠に見出されてからは、都の外れにある一軒家に1人で住んでいる。

強い力を恐れる者達からは、狐の子だと馬鹿にされ侮蔑の視線を受けてきた。親の言うことの意味を知らぬ子供達は、ただただ言葉を真似て言いがかりをつけてくる。そんな子供と仲良くなれるはずもなく、幼い頃から人との関わりは希薄だったと言える。

反対に人と関わりが薄い寂しさを埋めるかのように、その辺にいる弱い鬼など人ならざる者達とは話して過ごした。そしてその様子を見られて、余計に孤立が進んでいった。


こんな俺に物怖じず話しかけてくれたのは、師匠が初めてだったのだ。最初人との関わりを恐れて逃げる俺を、諦めずに何度も話してくれた。

そして人との関わり方を忘れた俺を拾い、その環境から助け出して傍に置いてくれたのだ。


なので未だに人との関わり方を分からないまま、こうして過ごしている。

今でも人からは侮蔑の眼差しを受け、妖達と関わりを持っている。

こんな俺が、どう人と関わっていけと言うのだろうか…。


そんな時、強い力を感じて一瞬で背中に緊張が走る。

見回すと北の方から感じる、何故今までこんな強い力を感じずに過ごす事が出来たのだろうか。

強い力に気がついた者は他に居るのだろうか、師匠に式を飛ばし力の方に向かって走り出した。


北にそびえ立っていた山の中に入り、力を頼りに歩いていくと大きな洞窟の入口が見えてきた。こんな場所に洞窟があったと聞いた事もなく、中から溢れる強い力に鳥肌がたつのがわかる。

式符に火を灯して洞窟の中を歩いていくと、強い力とは別に強い妖気を感じる。

なんて恐ろしい場所なんだと悪態をつきつつ、逃げたい気持ちを抑えて前に進む。


『ほう、この場所に迷い込むとは優秀なのか愚か者か。』


聞こえた瞬間周りに火の玉が浮かび、辺りを明るく染め前にある恐ろしい者を浮かび上がらせた。


大きな岩の上に、色っぽい女性が座りこちらを見ている。女性が身に纏う衣装は大陸の物なのか、見た事のない形状をしていた。


『童よ、何故この場に気づいたかえ?教えてたもろう』


左手を頬に添えコテンと首を傾げる、仕草から色っぽさが溢れる。


「これはこれは、いきなりの訪問申し訳ない。ちょっと気配を感じ参り申した。」


怯える気配を隠しつつ、正面の女性を見据える。


『おかしいのう、気配は完全に絶っておったと思うがの。』


「貴方様の気配は見事に隠されておりました、しかしもう1つの大きな力が漏れておりました。」


俺の返答を聞いた女性は鈴を転がすように笑う、ハッキリ言って力の差が大きすぎて下手に動くことが出来ない。女性の妖気ですら敵わないと思うのに、ここにある大きな力には戦慄さえ覚える。


『ほう。妾の妖気を感じても逃げぬとはたいした童じゃ、それにこの子に呼ばれたのかえ。』


女性は座っている岩をひと撫でして、岩から飛び降りた。降り立つ音もさせずに、軽やかに佇んだ姿に恐怖を覚える。


「この四神に護られし都に、なにか御用でもおありか?」


どの様に動くか分からない恐怖で、袖に仕込んでおいた式符を取り出して指に挟む。


『奢るなよ人間、四神に護られし地はここじゃ。四神の守護はこの子のものじゃ。』


背後にそびえる岩に手を付き、こちらに怒りを向ける。その圧力に背筋が凍る気がした。


「これは失礼しました、では何故この地に居られますか?」


『妾はこの子の子守りじゃ、呼ばれたお主は主たる人物じゃろうか?』


言い切ると同時になにか襲ってくる気配を感じ、後ろに飛び退く。先程まで立っていた場所は大地がえぐれ、白い物体がある。白い物体をよく見ると、女性から伸びた狐の尻尾だった。

この女性は狐の化身かと身構える、この都には狐の伝承が多々残っている。そのせいで力の強い俺は、狐に例えられる事が多かったのだ。


『ほう、避けるかえ。面白い、面白いのう。』


洞窟の中に狐の化身の、楽しそうに笑う笑い声が響き渡った。

誤字脱字変換ミスがありましたら、ご連絡よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ