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本日2話目、前話未読の方は戻ってください。
翌日、昼頃に起きた清明は師匠の元に向かった。
師匠である賀茂忠行には幼い頃見いだしてもらって、世話も焼いてもらっている恩もあり、頭が上がらない存在である。
星見として優秀な人物で、師事して今も着いて歩いている。
目的の襖の前で膝を着き、声をかける。
「師匠、安倍晴明参りました。」
中から返事を待つが返事が返ってこない、これ幸いと帰ろうとすると背後から肩を掴まれた。
「お前は少しは待つという事を、覚えた方がいいね。」
そこに佇む師匠は、苦笑の笑みを浮かべていた。
内心舌打ちをしつつ、振り返り言葉を交わす。
「不在かと判断して、出直すつもりでした。
それで師匠、ご要件は何事でしょうか?」
おおよその検討はついているが、しらばっくれるつもりで質問する。
「まあ、それなりに長い話になるだろうから、室内に移動しようか。」
相変わらずのマイペースな師匠にイライラしつつ、後ろについて室内に入る。上座に座った師匠に続いて、下座に腰を下ろす。
「そうだね、昨日藤原殿の牛車に鬼が現れた。藤原殿には怪我は無いが、障りの為休んでいるそうだ。」
その一件は知っているが、ここはしらばっくれる前提で返事を返す。
「鬼でしょうか?怪我が無いことは、不幸中の幸いですね。」
こちらをじっと見つめてくる師匠の目線が、こちらの内心を暴くように見てくる。
「昨日の事だが、藤原殿ともう1人が内裏で狐を見たとか。後、君を捕まえて暴言を吐いていたそうだね。
なんでも君は俺の若衆だとか、笑っちゃうよね。」
なんでこんなに地獄耳なんだこの人は!内心焦るが、表情に出さない様にする。
「そこに小鬼が1体居たと思うが、その子鬼が牛車を襲ったのかな?」
何故居なかったこの人が、小鬼がいた事まで把握しているんだ。
「どうやら小鬼も誰かの依頼で襲ったそうでね、そんな事が…」
「すみませんでした!」
我慢できずに師匠の言葉に被せるように、額を畳につけ謝罪をする。この人を敵に回すのは得策じゃ無い、それにしてもどこで情報を仕入れているんだ。
師匠からの圧で冷や汗をダラダラかきつつ、この勢いだとどこまでバレているのか内心ドキドキして沙汰を待つ。
「素直に最初っから認める様にすればいいのに。とりあえず大事になってないから良かったが、一歩間違うと大惨事になる事もある。
お前は強い力を持っているんだ、力の使い方を考えなさい。」
はいと答えるが、頭を上げる事ができない。
「強い力は諸刃の剣だと、心に留め置きなさい。
後君はもう少し人との関わり方を学びなさい、人との関わりから学ぶことも沢山あるだろう。」
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