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平安京陰陽奇譚  作者: 柚杏
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改めて清華を抱き直した太陰が、恐る恐ると清華の口元に重湯を含ませた布を持っていくと、腹へり姫は勢いよく吸い付いていく。


『清明様、清華様が飲まれています。』


初めてご飯をあげる事が出来た喜びからか、興奮した様に目を輝かせてこちらを向いて報告してきた。

なんか神聖視をしていた神様と言えど、こうして喜ぶ所は普通の女性と変わらないと思えてくる。太陰と少し距離をおきあぐらをかいて、ご飯を貰う清華と太陰を見守る。

食いつきがおさまったのを見届けて、太陰から清華を受け取りゲップを促す様に背を軽く叩くと、ポホと小さなゲップを清華がしたのを聞いて布団に寝かしてやる。


「ご飯が終わったら必ずゲップを出せば良いから、ご飯やりは任せても大丈夫か?」


食欲を満たしたため、眠気に襲われている清華を撫でる太陰に問いかける。


『はい、清華様のお世話おまかせください。』


お世話様に小鬼達を捕まえたが、更に世話向きな者が見つかった事に喜びを覚える。次のご飯の時にでも重湯の作り方を伝えれば、あとは何とかしてくれるだろう。


太陰に撫でて貰えたことが気持ちよかったのか、グズる事も無く清華が寝入ったのを確認して、太陰に目線で外に出る事を伝えて二人で部屋の外に出た。


部屋の外の縁側に腰掛けると、背後で太陰が立っているので横に座るようにすすめた。

並んで縁側に腰掛けて、手を入れていない為に荒れ果てた庭を見ながらポツポツと言葉を漏らす。


「少し確認したいことがあるのだが、答えれない事は答えなくていい。」


『私に答えることなら、嘘偽りなくお答えいたします。』


「太陰は清華を主と呼んでいたが、太陰と同じ立場の人数は12人で間違え無いな。」


『はい。私を含めた四神八柱が仕えており、十二神将となります。』


「その十二神将に、先日会った玉藻は含まれないのだな?」


『はい、玉藻は含みません。玉藻と我らでは肉体の有無もありますが、根本的に清華様に対しての存在が違うのです。玉藻も清華様を守護していますが、親愛で守護をしているので主導権は玉藻が握っています。対して我らは清華様を主としているので、清華様に主導権があります。』


「それでさっき青龍に対して、清華が命令して騒動を収めたのか。」


太陰に癒してもらった事で傷も残っていない場所に指を這わす、確かにそこに痛みもあり傷もあったのだ。神と同格だと言われて納得するしかない証拠だ、こんなふざけた力を持つ者が人という枠に収まるはずがない。


「さっきの青龍は俺に殺気を向けていたが、それは十二神将の総意なのか?」


『総意ではございません、誤解なきようにお伝えします。青龍は青龍の心に従っての行動だと思います、青龍も根本は清華様を守る事を第一に考えております。』


「清華を守る為に俺を襲ったということか、お前達の力があれば清華を守る事など容易いのではないのか?」


言い切り太陰を伺うと、少し寂しそうに太陰は微笑み答えた。


『その問いには否と答えます。清華様は主と決めた者の意向や意志を汲み取り、その感情を糧に成長をしていきます。人は皆が正しいとは言えません、これまでも傷つき苦しんだ清華様を見守っていました。』


「その主という事が全く理解出来ないのだが、それは居ないといけない者なのか?」


『清華様はその様に存在するお方ですので、主をいつも求めます。その主が清華様を導くのですが、善にも悪にもなる不確かな存在だといえます。』


玉藻に言われた言葉が重く存在を増し心に響く、その重さに口から言われた言葉がこぼれ落ちた。


「この世に吉兆を産み、この世に破滅を呼ぶ…。」


『はい。清華様は、その様に不安定な存在だと言えます。』


「そこを詳しく教えて貰うことは可能か?」


『そうですね、我らも詳しくは知らないのですが。清華様が過去に何人か主を据えた事はありましたが、全て破滅を呼ぶ寸前に我らが処理しました。』


優しい雰囲気をかもしていたはずなのに、その言葉を聞いた後その場の気温が下がった様に感じた。緊張のせいか乾いた唇を震わせて、太陰の発した言葉を繰り返した。


「処理とは?」


『このままだとこの世に破滅を呼ぶと、我らが判断して清華様の主を排除しました。』


こちらを見返す瞳に心の強さを感じる位に、真っ直ぐに見つめ返された。

過去の主の影響で清華が破滅を呼ぶ前に、この優しい神達は先手をうってきたのか…。


『我らは清華様の決定に不服など言える存在ではございませんが、清華様を守りたい気持ちはございます。』


寂しげに微笑むこの神を誰が責められようか…、清華の存在に甘えたもの達が道を踏み外すのは安易に想像が出来た。

それ程に清華という存在は強く大きく、巨大な力だと改めて実感をして唾を飲み込んでしまった。



誤字脱字変換ミスがありましたら、ご連絡よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読了しました。私も安倍晴明が好きです。 続きを楽しみにしております。 [一言]  当方も安倍晴明を主人公に、執筆しております。機会がございましたらお越しくださいませ
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