竜の少女と黄金の竜
雨が止んで、晴れた空は真っ赤に焼ける様に暮れていた
洞窟でじっと雨宿りをしていたヴィーヴルの少女はおそるおそる外へ出た
木々の葉っぱに雨の雫が宝石の様にちりばめられ赤い光に照らされて輝いていた
『おーい』
少女が声のする方へ顔を向ける
視線の先には肩に鴉を乗せた銀色の髪の男と
羽織を着た男が鳶色の長い髪から水を滴らせながら
その手に夕焼けに照らされて燃える様に輝く宝石を持って笑顔でこちらに歩いて来ていた
『ほら、取り返して来たぜ』
キラキラと輝く赤い宝石を少女の小さな掌に握らせる
少女の大きな瞳からぼろぼろと涙が流れては赤い宝石の上に滴り落ちた
『額に戻せたら良いんだがな…』
聖職者が小さく呟く
『まあ、俺らに出来るのは取り戻すことだけだからなあ』
頭をぼりぼり掻きながら薬師
すると少女の手にあった宝石がきらりと光り、少女は空を見上げて大きな瞳を輝やかせた
『おとうさん』
『『おとうさん?』』
見事に合わさった声、聖職者と薬師が少女の視線を追うとそこには巨大な両翼を広げた
立派な角をはやした巨大な竜が羽ばたいていた
赤い夕焼けに反射して鱗が山吹色に輝く
『あ、あ、アウレウスドラゴン!!?』
名前の通り黄金の竜
黄金の鱗を宿したドラゴン
だが、とても強い力を持っており、腕利きのハンターを百人投入したとて狩猟などできない
伝説では神代から世界に存在していたとかいないとか
その鱗は純金で出来ており、鱗を狙うものはたくさんいるらしい
『お、おとうさんって…このドラゴンなのか?』
『…冗談がきつい』
黄金の竜は降り立ち聖職者と薬師を捉えると凄まじい咆哮を上げた
だが、少女が竜の元へ走って行き
首に抱きつき何かを喋る
すると、竜は敵意を無くしたのか牙を剥かずに此方へ歩いて来る
『おとうさん、このひとたち、わたしをたすけてくれたの、宝石、とりかえしてくれたの』
竜は聖職者と薬師に向かって深々と頭を下げた
どうやらわかってくれたらしい
『あ、あはは…食われるかと思った』
『フギン、ムニン、大丈夫だから大丈夫』
フギンとムニンがガタガタと震える
竜は猫が自分の首を掻く様に爪で自身の首を掻き始めた
すると黄金の鱗が1枚落ちた
少女はそれを拾い上げ薬師に手渡した
『おとうさんが、ありがとうって』
どうやらお礼らしい
黄金の鱗を受け取り、はあ、と返事をする
竜が鳴くと少女は大きな足に掴まる
大きな翼を羽ばたかせれば周りの木々の葉が揺れて、竜は少女を足に乗せて飛び立つ
竜の足に掴まりながらヴィーヴルの少女は聖職者と薬師に向かって手を振り続けた
竜が空の彼方へ消えて行くのを聖職者と薬師は見届けた
『…何か凄いもん貰っちまったな』
『…とりあえず家に帰るか』
『おう』
聖職者は竜の消えて行った空を見上げていた
『(おとうさん……か)』
クエスト?
竜の少女の宝石を取り戻せ
報酬:黄金竜のうろこ
情けは人のためならず、巡りめぐって皆が幸せになるのです。