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荒れた墓地と酔っ払い神父

三人は早速、ドルミーレの町に向かう…とは言っても本当にお隣さんなので歩いて片道一時間なのだが………… 

一時間後、三人の姿は教会の近くの墓地にあった

まだ昼間だと言うのに墓地は薄暗く不気味な雰囲気を放っており、墓石からは生暖かい風まで吹いているように感じるほど不気味であった


いや、そんなことよりもっと不気味なのは


「なんで墓石が全て倒れているんだ?しかも埋められているはずの棺が全て土から出ているじゃないか!?」


聖職者の声を聞いて二人は慌てて駆け寄る

確かに言われてみると全ての墓標が倒され地面が見えてしまっている


そして棺は全て蓋が開けられており中は骸骨やら腐敗した死体などで溢れかえっているではないか……これは明らかに異常事態だと察知できるレベルだ


「おい!ここの教会の神父か修道女はいないのか!」


聖職者が大きな声を出すと教会の方から中年、聖職者より少し年をとっているくらいか教会の神父らしい男性が出てきた……ただし、千鳥足で


「なんだぁ、人が二日酔いで寝てる間にうるせぇなァ〜……」

「ちょって待て!あんたがこの教会の神父か?!」


薬師が嘘だろと言いたげな表情をして叫ぶ


「ああ?そうだぁー、ったく、夜中になったら墓地はガタガタうるせぇし、昼になったら昼になったで騒々しいなぁオイ?ここは教会なんだぜ?静かにしろよなぁ?」


聖職者が無言で拳を振りかぶり、容赦のない

本当に慈悲も哀れみも容赦もない一撃を繰り出した


「ぐふぅっ?!!!」

「せ、聖職者ァッ?!」


薬師が思わず悲鳴を上げて聖職者を羽交い締めにする、聖職者の額には青筋が浮かび

怒りの余り目が血走っているようだ


「こんな状況になっているのに酒なんか飲んでいるのか?墓地の荒れ具合から見るにあんたさては死者を慰める祈りを怠っていたな?」


聖職者がそう言うと男はいたたた、と頬を押さえてこちらを指差す


「な、な、神職に着いてる者にぼ、暴力を振るうとはどういうことだァ!!」

「お前こそ何故人を弔わないどころか酒など飲んで昼間から酔っぱらっているんだ?死者を冒涜しているのはどちらだ!」


聖職者が掌全体で神父の男の顔を掴み、指先で握力を使って締め上げていく


「ぎゃあっ!!痛いっ!!やめてくれェエエッ!!!」


見かねて薬師が止めに入る


「どうどう!聖職者!落ち着けって!あとその技は聖職者らしくないぞ!」


侍も必死に腕を掴み宥める


「よしよしよし!良い子だねェ?お前さんは死者がどれだけ蔑ろにされてるか見て怒っちまったんだねェ、本当に優しい子だよォ…だから、少し落ち着けってェ?」


侍の穏やかな声と、薬師が必死に背中を撫でたり叩いたりしてなんとか落ち着いたようだった

聖職者はいささか怒りを鎮めて男から手を離す


「よーしよし、てかな?聖職者?神職に就くもんならもう少しバトルスタイルをだな?相手の顔面掴んで指先の握力で握り潰そうとするんじゃなくて、もっとこう、聖職者らしい戦い方をだな?」

「……聖職者らしい戦い方ってなんだ?」


聖職者の問いに薬師が黙る


「……そう言えばお前、戦う時は主神の奇跡で雷を生み出して戦うから、聖職者や神職にありがちな祈り~とか浄化~とかしてるの余り見たこと無いな……」

「だいたいは主神の奇跡と腕力で解決してるからな」

「オーディン神も寵愛を与えた男がこんな脳筋だと知ったら嘆くだろうよ……」


薬師が呆れたように呟くと、神父の男が口から出た神の名前に戦く


「お、お、お、オーディン?!」

「ん?知ってるのか?」

「し、知っているとも!俺の教会は主神オーディンを崇めているし、なんと言っても俺は敬虔な信徒だしな!」

「敬虔な信徒が死者が眠れずに暴れまわってる墓地を放置して二日酔いで寝こけてたのか?」

聖職者がジト目で睨む


「そ、それは…」

「敬虔な信徒ならオーディンへの祈りの言葉くらい言えるだろ?聞かせてくれよ、ちなみに俺は聖職者が毎日毎日、朝昼夜と小さな祭壇に葡萄酒を供えて祈っているのを知ってるぜ?だから祈りの言葉も耳にタコができるほど聞いてるからさ」


薬師の言葉に神父の言葉が詰まる


「………まさか主神への祈りの言葉を忘れちまったなんて言わねぇよな?」


三人に見つめられて、神父の顔がひきつるが

ごほん、と咳払いして祈りの言葉を言おうとする


「あっ…あー、天にまします我等の父よぉ~えっと……うっ頭がぁあああっ!!」

神父がわざとらしく頭を抱え込む仕草をする

「うわあああっ!!忘れた!思い出せない!うぅ」

「やかましい」

聖職者の膝が頭を抱える男の腹にめり込み男は悶絶する

「ぐふぇ!!」


「お前!主神の敬虔な信徒を自称しておきながらこの体たらくはどういうことだァアアッ!!!」

聖職者の怒りが爆発するが侍が必死に聖職者を羽交い締めにする


「よーしよし!落ち着けってェ!この神父が敬虔な信徒を自称してるだけのただの阿呆なのがわかったじゃねェかァ!?」


「そうだぞ聖職者!落ちつけ!お前が日頃本当に主神に対して真摯に信仰している事はわかってるからよォ!」


聖職者を押さえつける2人だが、彼は止まらない


「ああ!こりゃダメだァ!すっかりプッツンしてやがんぞォ!薬師ィ!その出来損ないの神父を引き離すからその間に聖職者を宥めてやってくれ!」

「任せろ!」

「おい!待て!俺は敬虔な信徒だと何度言ったら」


言い訳をする神父を前に侍の声音が低くなる


「敬虔な信徒だァ?だったら何で墓場がこんなに荒れてんだィ?何だって死人が毎晩毎晩、墓をひっくり返して暴れたりするんだィ?そして何でお前さんの口からは昼間っから酒の臭いがぷんぷん臭ってくるんだろうかねェ?言ってみろよ、なぁ?」


白目黒目が反転した双眸で睨まれ、神父の男の額から汗が流れる


「そ、それは……」

「……この墓地の状態を見るに死者の連中は相当怒ってるみたいだなァ。アンタはその苦しみを和らげる事もせず酒をかっ喰らって放置していたってわけかィ?」


侍が神父に詰め寄る


「あんた、こんなことしてたら今はまだ騒音を立てて暴れるだけで死者達は大人しくしているが、そのうちアンデッド化して生者に襲いかかるようになるぜェ?」

「なッ?!」


聖職者が息を切らしながら侍の言葉を引き継ぐ


「死者がこんなに暴れまわるなんて普通じゃないだろうが!日頃しっかり慰める祈りを捧げていれば、ここまで酷くはならなかったはずだろうに!」


墓地の荒れ具合はまるで死者たちの怒りを表しているようであった

薬師がため息をつく


「とりあえずだな、死者たちがどんな風に暴れてるのか見る必要があるな…どうやら生きてるもんに危害は加えていないようだし……おい、今日の夜まで教会の中で寝泊まりさせて貰って良いか?」


「へ?あ…きょ、教会なら構わないが……しかし……うぅ」


聖職者の眉間にシワが寄る


「何か問題が?」

「あ、いや…ええい!なんとでもなれ!」

神父が教会の中に三人を招いた

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