竜の少女
フギンとムニンはだいたい何か見付ける
鴉たちを追いかけると、フギンとムニンは川の近くにある大きな岩にもたれかかった小さな少女に向かって小さく鳴いていた
真珠貝の様な鱗が幾つか頬にある
鮮やかな赤い瞳をした少女だった
『こいつぁ驚いた、ヴィーヴルじゃねえか』
『まだ子供だな…だが、何か変だぞ…』
聖職者と薬師を見て、少女は怯えた様に座ったまま後ずさる
薬師が見ると額と足首から血が流れていた
『おい、大丈夫か?言葉分かるか?』
薬師が歩み寄ると少女は小さな石を薬師に向かって投げつけた
『いてっ』
尖った石がかなりの勢いで薬師のこめかみに当たった
『薬師!』
怒った聖職者が詰め寄ろうとすると、薬師が手で遮る
『やめとけ、怯えてる奴を余計に怖がらせてどうすんだよ』
こめかみから僅かに血を滲ませながらもヴィーヴルに歩み寄る
小さな竜の少女は薬師に怯えて頭を抱えて縮こまった
『ヴィーヴルのお嬢ちゃん、人間の言葉わかるか?』
少女の前に膝をついて話しかける
『言葉、わかるか?おじさんは悪いことをしない、薬使える、君の傷を治したい、わかる?』
『…なさい…』
『ん?』
『ごめんなさい、石なげた、怖かった、うろこならあげる、もう宝石ない、宝石のうろこならまだある、おねがい、抉らないで…』
ルビーで出来た瞳いっぱいに涙を浮かべ
泣きながら震えて懇願する、拙い言葉だが何を伝えたいのかはわかる
喉に残ったひび割れた宝石の鱗を剥がそうとする手を薬師が止める
『…手当てが先だな』
懐から薬を取り出しててきぱきと治療を始める、細い足に薬液を振り掛けてやれば沁みるのか少女は辛そうにうめいた
『よしよし、痛いな、もう少し我慢しような』
手慣れた様に手当てを済ませる
『よし、さすが俺だ、手際が良い、神がかってるな』
『自画自賛か』
『だって、誰も褒めてくれねーもん』
そんなことを話していたら、少女が泣きながら
『…おうち、かえりたい…かえれない』
薬師が少女に尋ねる
『お家帰れない?何で?』
『おでこの宝石、なくなったの…おうちにかえれない……かえりたい…』
薬師がうーん、と頭を捻る
聖職者がフギンとムニンに何かを囁けば薬師の背後で翼が羽ばたく音がした
『額にあった宝石がこの子が住処に帰る手段ってわけか…だが、宝石を剥がれたから帰りたくても帰れなくなったと』
ヴィーヴルの宝石は手に入れたものに幸福をもたらすと言われている
だが、奪われたヴィーヴルの幸せはどうなるのだろう?
『盗んだ野郎をどうやって見つけるんだ』
『フギンとムニンが探しだすさ』
しばらくしてから、頭上から鴉の鳴き声がかかる
聖職者と薬師は顔を見合わせて頷いた。
聖職者と薬師は弱いものいじめは許しません




