鉱石採集とつかの間のお別れ
「……あ、いけねえ、すっかり目的を忘れちまってたわ、ケケラサラル鉱石!木目の石を探さねえと!」
薬師が正気に戻ったが、まだ竜の子を抱っこしたままだ竜の子は耳をぴこぴこ動かしながら嬉しそうにしている
「あー、本当だねェ、すっかり忘れちまってたねェ?」
侍はまだ竜の子を撫でている、その双眸は竜の子に釘付けになっている
聖職者は竜の子を愛おしそうに見ている
フギンとムニンは【もうダメかもしれない】と諦めの境地に達している
親竜はため息をついてから
何やら道案内をしたそうに鳴いて三人をある場所へ誘導した
そこは木目の石がたくさん剥き出しになった広い空間だった
フギンとムニンが【ここだよ!】と言わんばかりにくるくる飛び回っている
「おお?!ケケラサラル鉱石!しかも、上質な鉱石じゃねえか!」
向こう側は竜のねぐらになっているらしく、木目の石の屋根の下には藁がたくさん敷かれていた 竜の子はきゅうきゅう鳴いている
「さてと、依頼の鉱石を掘るとするか!」
三人はピッケル片手に鉱石を採掘し始めた
しばらくして、竜の子が三人の周りをぐるぐる回って何か言いたげに鳴いた
竜の子は【ぼくもてつだってあげる!】と言っている様に見える
竜は一生懸命に木目の鉱石を咥えて運んでいる
「あんまり無理するんじゃァねェぞォ?」
侍の言葉に竜の子はこくりと首を縦に振ってからまた鉱石を爪で掘り始める
竜の子は鼻歌を歌いながら楽しげに掘り進めている
その様子を見て三人とも笑みを浮かべている
フギンが鉱石が入った籠を爪で持ちながら【ダメだ、ムニン、あの人たち色んな意味で「ダメだ」】とでも言わんばかりの鳴き声を出すとムニンはため息をついた
さて、目的の鉱石を入手して
聖職者たちは結晶竜から無理やり結晶を剥ごうとした冒険者を縛り上げてギルドに帰ることにした
「お別れだな、ちびちゃん」
薬師が優しく竜の子の頭を撫でると竜の子はきゅうきゅう鳴いて頬を舐めた
竜の子は【またあそぼうね!】と言ってるみたいに見えた
聖職者は竜の子に近寄って額に口付けをして、それから竜の子を抱きしめた
竜の子は嬉そうに頬擦りをした
「辛いねェ、短い間だったが、お前さんと一緒に冒険が出来て楽しかったよォ?……母ちゃんと元気に仲良く暮らすんだぜェ?」
竜の子は侍の言葉に返事をする様に鳴くと親竜と共にケケラサラル鉱石のねぐらに帰ってゆく
竜の子は何度も振り返りながらケケラサラル鉱石のねぐらに戻っていった
薬師と侍は竜の子が戻って行くのを見届けてから、竜の子に手を振った
フギンとムニンは【寂しいけど、仕方ないね】と言いたげに鳴いた
ちなみに聖職者は両手で顔を覆って泣いていた
それを見たフギンとムニンが【マジか、泣くほど!?】と言わんばかりに聖職者の肩で鳴いた
すると親竜がねぐらから出てきて三人に抜け落ちた結晶竜の結晶をくれた
親竜は【ありがとう、これはほんのお礼です。】と言うように鳴いてから、ねぐらに引っ込んだ
「おやまァ、素敵な出会いをさせてくれた上にこんな綺麗な贈り物までくれるなんて良い子じゃあないかァ、ありがたく貰っとこうかねェ」
侍はケラケラと笑ってはいたが、目尻にほんの少しだけ涙が浮かんでいた
聖職者は貰った結晶竜の結晶を大事そうに抱えている
フギンとムニンは【そんなに!?ねぇ?!そんなにかぁ?!】と言わんばかりに鳴いている
こうして、三人の冒険者はケケラサラル鉱石の依頼を達成した
そして、三人はケケラサラル鉱石のねぐらを後にした
もちろん、親竜を半殺しにしたバカな冒険者たちをロープで縛って引きずって帰った。




