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怪しい奴と女神の奇跡

ザッ____そんな音と共に男の前に立ちはだかる影が現れた。


走っていた男と聖職者の足が止まる


「やっと見つけたぜェ、ずいぶんと手間取らせてくれたもんだなァ」


毒々しい色をした着物と、枯れかけた葉っぱの様な色をした羽織が月明かりに照らされ怪しく光っている。


その人物の顔を見て、刀を持っていた男は青ざめた顔で後退りをする。


紫の瞳に白目と黒目が反転したような何とも奇妙な双眸が、月明かりを反射させてギラついている様に見える。


男はその瞳に捕まってしまったのか逃げることも出来ずにいた。


すると、突然目の前の人物が消えてしまったかのように見えなくなってしまった。

刀を持っている男が驚いて辺りを見回していると後ろから声をかけられた。

振り向けば先程まで遠くにいたはずの相手がそこにいた。


「どこ見てんだよォ?こっちだろ?」


そう言って相手は刀を持っている男の肩を軽く叩いてニタリと笑った。

それに反応するように刀を持った男は、その奇妙な双眸の男に斬りかかろうとしたが

男は素早く自分の腰に携えていた刀を抜くとその刃を受け止め--いや、打ち砕いた。


刀の破片が飛び散る中、男は信じられないと言った表情を浮かべている。


「悪いねェ、吾の刀はお前さんが持ってるなまくらと一緒じゃないんでねェ。あぁでも安心しなよォ。殺しゃしないさァ」


男は絶望に満ちた顔をして後ずさる。

それを見下ろしながら、不気味なほどに楽しげな声で笑う。


刀の刃を逆にして折れた刀を握ったまま呆然とする男の脇腹に思い切り振りかぶった

刃の峰を肋に受けて男は悶絶している。


「かっかっ、この程度じゃ死なんだろう?大丈夫だよ、心配せずとも殺しゃあしねぇって。殺す価値もないからなァ」


苦しそうに呻く男を見下ろして奇妙な口調の男は愉快そうに笑い続ける。


そして、男の首根っこを掴むと引き摺るように歩き出し男を聖職者に突き出した


「ほれ、連れてきたぞォ。あんたらが探してたのはコイツなんだろォ?」


聖職者は男を見ると目を細めて口を開いた。


「…知ってたのか?」


「いんやァ、けど大体想像はつくさァ。女があんな傷負うなんて余程のことだと思うだろォ?それに加えてこの男、明らかに普通じゃないもんなァ」


聖職者は少し驚いた様子だったがすぐに冷静になり男を見下ろす。


フギンとムニンは肋を峰打ちされ悶絶してる男に追い討ちとばかりに嘴で突っついたり爪で引っ掻いたりしていた。


その光景を見て異様な双眸の男は愉快そうに笑う


「賢い鴉だねェ、お前さん達ィ」


奇妙な口調の男は刀を鞘にしまいケラケラ笑っている、何が楽しいのかわからないがとにかく楽しげだった。


件の男は痛みに耐えながらも聖職者と奇妙な男を睨みつけている。


「くそっ、くそっ!せっかく手に入れた刀をよくも…………!」

「おーこわッ、おっかないねェ」

「貴様ら、よくも俺の邪魔をしやがって、あと1人斬りゃ100人斬れたんだ!!許さん、絶対に許さん!!」


「あーはいはい、わかったよォ。もういいから黙っとけ」

「ぐあっ!?」



男が喚き散らすのを見て面倒くさくなったのか、奇妙な男は再び男の首を刀の峰で殴り気絶させた。

それから、聖職者の方を向いてニヤリと笑う。



「昔から和の国じゃァ、優れた刀で人を100人斬りゃその刀は妖刀に成り下がるなんて言い伝えがあるんだよォ、馬鹿だねェ、そんなくだらねぇ迷信を信じてるとはなァ」



「……なるほど、そういう事だったのか…ありがとう、本当に助かった」

「礼には及ばんさァ、吾はただ困ってる奴や苦しんでる奴を放っておけないだけよォ」


男はそう言って肩をすくめた


「さてと、吾はそろそろ行くとするかねェ、お前さんも疲れたろォ?着物着た相棒んとこに帰りなァ」

「ああ、そうだな、それではまたどこかで会おう」


「ああ、ちょいと待ちなァ」


男が呼び止めると、聖職者は振り返った そして、奇妙な口調の男は聖職者の顔を指差した


「頬から血が垂れてんぞォ?」

「ん?あぁ本当だ、気がつかなかったな」


辻斬りの男の攻撃は避けたつもりだったのだが、かすっていたらしい

聖職者は自分の頬に手を当てながら呟いた

血が付いている



聖職者が前を見ると、奇妙な口調の男の顔が近くにあった、鼻先が触れ合うほど近い

思わず身構えるが、男は気にせず言葉を続けた


「痛々しいねェ、どれ、ちょっと待ってなァ」


男は掌を聖職者の頬にかざした


「女神の慈悲」


その言葉を囁けば、傷口はすぐに塞がり痛みも消えた、聖職者は驚いて感謝の言葉が出なかったが、男は満足げに笑うと手を離す。


「ちょいとしたおまじないだよォ、跡が残っちまったら男前が台無しだぜ?」


そう言って後ろ手に手を振りながら去っていった


(今のは…女神ヘルンの奇跡?)


男が去った後、聖職者は考えた

このミズガルズに生きる者は皆、アースガルズの神々の加護を少なからず受けて生きている

あの奇妙な口調の男が使った奇跡は間違いなくオーディンの娘である女神ヘルンの奇跡だ


(なんで女神の奇跡を使えるんだ?)


そんなことを考えていると後ろから薬師の声がした、どうやら怪我をした女性を治療して安全な場所へ送ってから来たらしい


とりあえず縛り上げたツジギリ?通り魔?を引きずってギルドへ戻ることにした。

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