聖職者の本領発揮
聖職者さん、出番ですよ
階段の先には怪しげで禍々しい紋章が刻まれたドアがあった
鍵が掛かっているのか開かない
だが、扉の先からは子供特有の甲高い悲痛な叫び声が響いてくる
二人が同時に扉に蹴りを入れると簡単に開いた
部屋の中に踏み込むとそこには数人の子供が身を寄せ合って泣いている姿が見えた
怯えきって震えている子供達の前には黒い貴族の服を着た男が一人立っている
その男は体が透けていたそして男の手には禍々しい赤錆がついた歪んだ刃物が握られていた
聖職者が笑う
「ビンゴ、やっぱり亡霊だったか」
透けた男は聖職者と薬師に気づいて振り返る
二人の姿を見てその口元を歪に醜悪に歪めた
男の頬は病的に削げて、その双眸は窪んでいて光は見えない
体も痩せ細り骨張っていて今にも折れてしまいそうだ
透けた男の首は妙な方向に曲がっていた
普通に亡くなったのならばこんな風に首は曲がりはしないはずだ
それもその筈だ、男の首にはロープが巻かれていたのだ
まるで首吊りでもしたかの様に
「ひっひひひぃ…あとひとり…あとひとり…」
男が呟きながら手の中の刃を振り上げ、叫ぶ
「じゃあまァするゥなあァァあ!!!」
その絶叫と共に聖職者と薬師に襲い掛かった
寸でのところで避ける
薬師は急いで子供たちの元へ駆け寄ると
泣き続ける子供たちを守る様に抱き締めた
亡霊が薬師の背中に刃を振り下ろそうとした時、その耳元に聖職者の囁いた言葉が届く
それは神々の奇跡
不浄の魂を還す神の言葉だった
聖職者はその言葉を紡ぎ続けると亡霊がナイフをかなぐり捨て
苦悶の声を上げ始めた
苦しむ男から目を逸らさずに聖職者は死の神の詩を詠う
「眠れぬ魂よ父の御許へ還れ
父の腕が貴方を赦すだろう
その怒りを受けぬ様に赦しを祈り
オーディンの御許へ還れ」
やがて、ゆっくりと光が消えていくように姿が薄れていき最後には跡形もなく消えた
子供たちを抱き抱えたまま呆然とする薬師の前に歩み寄り
また皮肉げな笑みを浮かべる聖職者の姿があった
「どうした?腰が抜けたか?」
「馬鹿言うんじゃねえ、あれくらいでびびるほど肝っ玉は小さくねえぜ」
「そうかいそりゃ良かった、さぁ子供達を連れて行こう」
安堵に泣き出す子供たちを宥める薬師を見て聖職者は微笑んだ
「ああ、もう大丈夫だよお前さんたち、怖かったろうによく頑張ったな」
薬師が子どもの頭をくしゃくしゃとかき混ぜる様に撫でた
「ほら立ちなさい、もう大丈夫だお家に帰ろう」
聖職者が優しく言い頭を優しく撫でれば
子ども達は涙を拭いながら立ち上がる
二人は屋敷から出て町の近くまで子どもたちを送り届けた。




