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死の旅

せかいをまわり、いのちをつむぐ


死は世界を廻った

いかに《神》でも、命を用意するなど出来ない

だからこそ世界を廻った



最初に木に巣を作る鳥に死の神は言った



『鳥よ、生まれてすぐに死なんとする子がおる

その子のためにお前の命を譲り受けたい』


『嫌です死よ、私には生んだばかりの卵があります』


鳥は断った


死の神は諦め別の者に頼みに行った


次に若い狼に言った


『狼よ、生まれてすぐに死なんとす子がおる

その子のためにお前の命を譲り受けたい』


『嫌です死よ、私には妻と生まれたばかりの赤子がおります』


狼は断った


死の神はまた諦め別の者を探した


たくさんの生き物に死の神は同じことを問いかけた、返ってくる言葉は皆、同じ



『死よ、私はまだ死にたくありません』



死の神はあらゆる場所を旅し、探し続けました

十月と少しが過ぎた頃に

死の神はある小さく質素な家に着きました

その家の前、木漏れ日の差し込む穏やかな庭

揺り椅子に座った老人がうたた寝をしていました


その顔は古い樹皮を思わせ

その髪は灰色にくすんでこそいましたが

木漏れ日の光を浴びてきらきらと輝いていました


花と美しい木々に囲まれた緑豊かな庭

そこに余りに不釣り合いな夜の闇を思わせる黒い黒い服を纏った男が老人の前に音もなく現れました


うたた寝をしていた老人は気配に気付き目を覚ましました

死は重たい口を開き、数えきれないほど言った問いかけをしました


『人の子よ、生まれながらに死なんとす子がおる

その子のためにお前の命を譲り受けたい』


重い重い響きでした

しかし、老人の答えはその重さに比例して

あっさりとし、穏やかなものでした


『どうぞご随意に』


死がじっと顔を見つめると老人は骨ばった掌を己の胸にやりました


『この世でなすべきことは、全て終わりました

私の時間を生まれ来る子に与えましょう』


死は小さく小さく何かを呟き

老人の胸に灯る小さな灯火を取り去りました

老人はまるで眠りに着く様に静かに目を閉じ

その目が開くことはもうありませんでした


その手には小さな灯火

小さく、か弱い生命の光

一吹きすれば掻き消える脆弱な魂


それでも確かな命の輝きでした。

ちいさくとも たしかなひかり

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