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喧嘩じゃ喧嘩!!北①〜嗚呼、ヒスイ様の背中♡〜

4つのスクアーダに対してエルドナスが行った宣戦布告。

北に向かうことになったヒスイとカミラは作戦会議(?)をするんでしょうか?

ミナの家から少し歩いたところにあった木々が開けたところでヒスイは足を止める。

「そろそろいいかな?」

「そうですわね。ここからならば騒ぎも起きないのではないでしょうか」

ヒスイの言葉でカミラも同時に足を止めて肯定をする。

「エルくんに言われて一回やってみたことあるんだよねー」

「やってみたかったことですか?」

ヒスイはクルッとカミラの方を向いて両手を空に掲げる。

その様子を見てカミラは頭にはてなを浮かべる。

「へ〜んし〜ん!」

言葉とともにヒスイの体は光に包まれながら少しずつ元のドラゴンの姿に戻っていく。

「ヒスイ!完☆全☆体!」

ドラゴンの姿に戻ってドヤ顔をかます。

唐突な出来事で動揺しているのかと思われたカミラだが、プルプルと体を震わせていた。

「素晴らしいですわ!ヒスイ様!」

「そうでしょそうでしょ?エルくん曰くラスボス感が出るから元の姿に戻ったときに低い声で喋る法が良いらしいよ」

「ラスボス感ですか?」

どうやらこの場にはツッコミ役は不在のようで、好きなことをするドラゴンとドラゴンがすることをすべて肯定する吸血鬼しか存在しなかった。

「ラスボスってのは最後の敵らしいよ?よくわかんないけど、強いから強そうなふりしてたほうが良いんだって」

「私としてはどのヒスイ様でも愛おしく感じますわ」

「僕としては何でも良いんだけど、せっかく戻るんだったら楽しんだほうが良いかなって」

「そうですわね」

「それじゃ、そろそろ行こうか。どうするカミラも飛んでいく?」

吸血鬼族は基本的に翼を持っており、飛行することも可能な種族なのだ。

「いえ、私はあまり得意ではないので…」

「あれ?そうだっけ?でも、確かにカミラが飛んでるところ見たこと無いかも」

一般的な吸血鬼であれば、飛ぶこと自体に抵抗を持っているものは少なく、基本的には飛べることを良いことに夜になれば皆嬉々として飛び回っているものなのだが、カミラはそうではないらしい。

「それじゃ、僕の背中に乗って移動しようか」

「はい!」

カミラ今日イチの声がこの返事で出る。

トンっと軽く飛んでヒスイの背中にかっこよく着地したかと思えば、パタンと倒れ込みヒスイの背中を擦りはじめる。

「嗚呼、ヒスイ様の背中♡久しぶりですわ」

「カミラ…やめて!?なんかゾワゾワする」

ヒスイが小さく身震いするが、そんなことにはお構い無しでカミラは背中を擦り続ける。

「ほら、そろそろ行くよ〜?移動する時その格好だと危ないんじゃない?」

「問題ありませんわ。どのようなことが起きてもしがみついていられる自信がありますわ」

カミラはヒスイ関連のことであれば有言実行しかしてこなかったので、本当に背中を擦りながらでも問題なくしがみついていられるのであろう。吸血鬼の謎である。

「それじゃ、しゅっぱーつ!」

ブワッと周りに落ちていた木の葉などを巻き上げてヒスイはカミラを乗せたまま空へ飛び立つ。

『飛んでる時は声が聞こえづらくなるからこっちで作戦会議しよっか』

ヒスイは飛びながらカミラに念話を飛ばす。

「ヒスイ様の言葉であればいつでも聞き逃しませんわ!!」

しばしの沈黙…

「ヒスイ様?私は念話などなくともヒスイ様のお言葉を聞き逃すことなどしませんわ!!」

再び沈黙…

『あれ?カミラもしかしてなにか言ってた?』

どうやらカミラの言葉は風の音にかき消され聞き取れておらず、ヒスイが反応できなかっただけのようだった。

『届かない思いというのもまた…良いですわ』

『さっきから何いってんの?ほら、まったりしすぎてるとなんにも準備してない状態で行っちゃうのはさすがにまずいと思うんだよね〜』

『それもそうですわね。あの2人もそうですが、ヒスイ様は何かお考えがあるのですか?』

割とノリと勢いで決まった今回の作戦。ぶっちゃけエルドナス達も何も考えてなどいなかったのが、ヒスイは何か作戦を考えているのだろうか…?

『まずね、とりあえず言われたから北に行くんだけど、そもそも誰が居るのかすらも知らないからねー』

『そうですわね…おそらく彼らであれば、街に入って情報を集めてと行動するでしょうね』

エルくん達ならおそらく街の人達に情報を聞いてから悪知恵を働かせるだろうとヒスイは思った。

『カミラもなんだかんだ言って馴染んできたよね』

『あの2人が特殊なんだと思いますね。私は他の人間たちとはうまくやってこれませんでしたから』

『確かにあの2人は特別かもね。種族のことなんて気にしたことなさそうだからね〜』

『そもそもあの2人も元異世界人と元王族なので、人間にしても特殊な方だと思いますけど』

『あはは!確かにそうだね!』

「笑い声も愛おしいですわ…」

ひとりヒスイの笑い声に感動しながらプルプル震えるカミラは、はたから見れば推しの反応に悶えているオタクである。

実際、カミラは推しであるヒスイの背中に乗って会話をしているのだからこれ以上彼女にとって幸せなことは無いのであろう。聞こえないとわかっていてわざわざ言葉にするあたり…わかってるなぁとしか言えない。

『ヒスイ様話が脱線しておりますが、作戦はどうされますか?』

『あーそーだった。そ~だった。だめだねーすぐにこうやって脱線しちゃうや。んーどうしよっか。僕らも情報を集めるために街に潜る?』

それをするとなると、街から見えないくらいの距離でこの変身を解いて歩いて向かわなければならない。

『えー…歩くのだるそうだなぁ…』

『そうですわね。あまり時間がかかりすぎるのも良くないでしょうし、私達の容姿はそれほど人間には受け入れられうるものではないですし』

『そだねー。いつもはエルくんたちが居るから仲間だとわかるかもしれないけど、今回は僕らだけだもんね。目立っちゃうからね〜』

1人は白髪で頭からは角が生えていて、もうひとりは常に日傘をさしている色白ゴスロリ。どう頑張っても目立つのである。

『情報を僕ら2人だけで集めるのってのは厳しそうだね』

『では、いかがされるのですか?』

しばしの沈黙。

『めんどくさいからこのままんま2人で突っ込んでみる?』

『それは…ヒスイ様らしいといえばヒスイ様らしいです!』

やはりこの場にはツッコミ役など居ないのかもしれない。

…もし、この場にエルドナスが居た場合は何と言うだろうか?きっとおそらくたぶんだが、止めないね。「いいねそれ!面白そう!」って言い始めるだろう。

『ってことで、このまんま飛んでくけど大丈夫?』

『大丈夫ですわ。いつまでも、どこまでもヒスイ様に着いていきますわ』

『実際、今背中にくっついてるから着いてくるしか無いんだけどね〜』

作戦会議は方向性は決まったが、まったくもって具体性はない状態で終わったが、彼らは満足しているので問題は…無いのだろう。

『さーて、北には誰の一族が居るとカミラは思う?』

『トーポ、カヴァッロ、コニーニョ、ウッチェロでしたわね…私としてはトーポの一族は嫌ですわ』

『えー?なんでー?面白そうじゃん罠だらけの魔法って』

カミラが嫌だって言っているのに全く逆のことを言いはじめるヒスイ。なぜ、カミラはこんなヒスイのことをそれほど慕っているのか…不思議でやまない。

『罠があると思うと、自由に行動ができないように思えてしまって嫌なのですわ。埃っぽくなってしまうのも嫌ですわ』

『その服洗濯するのめんどくさそうだもんね〜。というか、カミラその服以外見たこと無い気がするんだけど…』

『そのあたりは秘密ですわ。女には秘密がつきものですから』

ヒスイはなぜだかそれ以上聞くのが怖くなってきたのでそれ以上聞くことをやめた。

『もし…もし、ヒスイ様が選んでくれるということであれば…』

『そ、それは、時間ができたらね?』

再び震えはじめるカミラ。ついには立ち上がって大きくガッツポーズをし始める。

「よっしゃー!約束ですよヒスイ様!!!」

『うん。今のはめっちゃはっきり聞こえた。危ないから立たないでね?』

日程は未定だが、ヒスイとのデートができるかもしれない権利を獲得できたことでついにカミラのキャラが崩壊し始めてしまったのであった。クールキャラのはずだったのに…いや、時々?結構すでに壊れていたかもしれない。

『んーと、あともうちょっとするとたぶん街が見えてくるんだけど、ほんとにそのまま突っ込んで良いの?』

『その予定では?』

自分から言いだしたこととはいえ、あまりにも作戦が作戦でないことに焦ったヒスイだったが、カミラが全行程をしてくるため更に困惑する。

『ほんとにそれでいいのかな…ちょっと迷うけど、考えるのもめんどくさいからなぁ…ちなみに最初はどうする?』

『やはり、最初の印象は大事ですわ。思いっきり攻撃を仕掛けるのはどうでしょうか?』

『それでも良いけど…どう攻撃する?咆哮?』

『それですわ!咆哮をぶちかましましょう!』

ずっとヒスイといることによりカミラの口調も少しずつだが壊れ始めていく。

ところで、咆哮を使っても良いのだが咆哮を使うとおそらくは現当主の居る館は木っ端微塵になるだろう。それをエルドナスがよしとするのかは怪しいところだ。

『咆哮使っても良いんだけど、それ、もう一発で終わっちゃわないかな?』

『さすがにそれは無いと思いますわ。もし、それで終わってしまうようでしたらそれこそ拍子抜けですもの』

一緒に居る吸血鬼の殺意が高い件についてヒスイは再び頭を悩ませた。

『敵の本拠地を木っ端微塵にするのはちょっと気が引けるから、近くにぶつけよう。何も被害が無いように』

少し前にみんなの家を失ったときの痛みはヒスイの中でずっと残っていた。

拠点を失う。そんな経験をしたのは長い時間を生きてきたヒスイも初めてだった。

ヒスイとしては過ごした時間は短かったかもしれないが、それでもエルドナスとエーシェと一緒に居たあの時間があった場所が無くなったことは彼に何かしらを感じていた。

洞窟などで暮らしていた時には感じていなかった何かを確かに感じていた。それがどんな感情なのかはヒスイもよくわかっていない。

ただ、過ごした時間は関係なく場所に思い出が残るのはわかっていた。それがどんな場所であろうと、それを壊すことはなんとなくだが、避けたくなったのだった。

『ヒスイ様がそのようにおっしゃるのでしたら、私はそれで構いませんわ』

『よーし。じゃ、そろそろ着くから準備してね。とりあえず、最初に出てくるのは下っ端たちだろうから、現当主が出てくるまではそれの露払いだろうね』

『わかりましたわ。何が起きても私はヒスイ様をお守りいたしますわ』

『自分の身は自分で守るよ。カミラも油断はしないようにね』

それからすぐにヒスイは街に到着してとりあえず様子を見る。

さて、どこに咆哮をぶつけるのが一番無難だろうか…

奥にあるいかにもな屋敷の脇に庭があるのを見つけてヒスイは準備をする。

『行くよカミラ』

「【緑竜の咆哮】」

ヒスイの咆哮が街中に響き渡り、狙った通りの場所から砂煙が上がった。


【喧嘩じゃ喧嘩!!北①〜嗚呼、ヒスイ様の背中♡〜】最後までありがとうございました!

プロットもっとちゃんとやっておけばよかった!!めちゃくちゃ難しかった!困った困った。

とりあえず、エルドナスを基準にしたときの話し方で今まで構成をしていたのでヒスイ基準にするとなかなか難しいことがわかったのは今回の収穫ですかね。

そんなわけでちょっとごちゃごちゃダラダラとなってしまった今回の話でした。ごめんなさい…

それじゃ、次回はエルドナス組に戻りますね。

【喧嘩じゃ喧嘩!!南②〜トラップハウス〜】

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