喧嘩じゃ喧嘩!!①〜宣戦布告してみました〜
ユールスニアを裏側から牛耳るため東西南北に散った4人の歴史を知ったエルドナスたち。
この話を聞いてエルドナスたちは何を思うのだろうか。
「ふ〜ん?」
レオンハルガの話を聞いてエルドナスは一言そう言った。
「ちょっと?エル君感想それだけ?」
エーシェがエルドナスのあまりの反応の悪さにツッコミを入れるほど異様な自体だった。
「あーっと、別に話がつまらなかったとかそういうのじゃないけど…なんかねー…異様に腹が立つんだわ」
エルドナスがそう言うと建物がビリビリと静かに震え始めた。
「この国の中で悪さをして居るのは奴らの子孫であって、大元を辿れば国を取る為だったってのは理解したよ。でも、それでミナみたいな小さな子が誘拐されて奴隷にされて良いわけじゃないよね。結局の所僕が思ってるのは…いつの時代もこの国は狂ってしかいないってことだね」
「エルくん落ち着きなよ。魔力ダダ漏れだよ?怖いから」
ドラゴンも恐れる魔力とはこれいかに。
「それで、レオンハルガさんは話しぶりとか、異様にこの件に詳しいところから推測するに、さっきのレオンって人の子孫なんですよね?」
レオンハルガは静かにうなずく。
「それじゃ、僕らは部外者なんで当事者の人に聞いておきたいんですけど。この国の今の現状というか、レオンさんの友人だった人たちの子孫が暴れまわっているこの国の現状についてはどう思ってるんです?」
レオンハルガはその言葉にピクリと体を震わせ考え込みはじめる。
「そう…ですね。私個人とは直接的なつながりは無いですが、やはりこの話を親から聞いたときには、悲しい気持ちになりました」
「それで?どうなってくれたら嬉しいかな?」
「それは…もし、願うことならば、彼らには【五匹の獣】ができた当初のように笑顔を守るための人たちで居てほしいとは思います」
「オッケー。じゃあ、これから僕たちがやることはただの八つ当たりだからってことで目をつぶっててね。あと、皆僕が外に出たら耳を塞いでね。じゃないとたぶん大変なことになるから」
全員がエルドナスの言っている事がわからず、キョトンとしているがそんな彼らを尻目にエルドナスは1人立ち上がり家の外に出ていった。それを見て全員が彼に言われたとおり耳を塞ぐ。
家から出て、クルッと首都の方を向き深呼吸をする。
《エル君何するつもり?》
あらら、急に出てきたと思ったらこのタイミングですか。
《だって気になるじゃない。》
宣戦布告して見るだけだよ?ムカついたから。
《うわ〜…でもどうやって?》
音は空気を揺らす振動だからね。振動を大きくすれば音は自然と大きくなる。
こうやって手に魔力を集めて振動を増幅するイメージを固めれば…
新魔法【拡声器】の完成。
《普通はそんな簡単に新魔法を作れないはずなんだけど…じゃ、楽しみにしてるわね。ばいばい》
ふぅ〜と大きく息を吸い込んで口元に手を当てる。
「あーテステス!聞こえますかー!」
周りの木々が揺れるほどの爆音があたり一面に響き渡る。
オッケーオッケー。予想通り。
「あー。えーっと。この国にいる狂った4匹の獣の関係者の方聞こえますかー?宣戦布告でーす!お前らちょっと調子乗ってるみたいだから痛い目見たほうが良いんじゃないかと僕は思ってるわけですよー。どーせ、誰にも何も言われてきてなかっただけのイキリヤンキーみたいなもんでしょお前ら。つーわけで、これからお前らん所殴り込みに行くんでそこんところよろしく!」
ふースッキリした。
さて、これからのことを皆と話さないとね。
がちゃっと扉を開けて家に入ると、3人が飛びかかってきた。
「何考えてるの!?」
「何考えてるんだよ!!」
「何考えてるんですの!?」
どうどう。落ち着きなさい君たち。
「何って。宣戦布告してきた」
「そんなの聞いていればわかるわよ」
だよねー。途中で宣戦布告でーすって言ってたもんね〜。
「僕めんどくさいことしたくないんだけど?」
君がそんなことを言うなんて珍しいじゃないかヒスイくん。
「私もヒスイ様に同感ですわ」
君ならそう言うと思ってたよカミラ。
「まーまー落ち着いて」
「「「落ち着けるわけない!!」」」
おぉー!すごいシンクロ率!
「とりあえず僕の話を聞いてほしいなぁ〜って思ってるんだけど、良いかな」
3人は「はぁ〜」とこれもまた見事にシンクロため息をつきながら諦めたように離れていく。
「わかってくれてありがと…いや、そんな感じでも無いかな?」
3人からの視線を受けて途中で言葉を変えてしまうくらいにはなかなか厳しい視線を送ってくれた3人であった。
「とりあえず、やっちゃったもんはしょうがない。今回の目的は…僕らの憂さ晴らしってことで。で、目標は…現当主の4人をこの家の前に集めること」
「どうしてですの?憂さ晴らしをするだけでしたら壊滅させれば済むではないですか」
珍しくカミラが意見してきたな。
「あーそれね。普通に考えたらそれでも良いんだけど、ぶっ壊してその後知りませーんってのはちょっと後味悪いなって気がしてね。あと、気になることもあるんだ」
「気になること?」
「そう。明らかにあの話の最後…つまり、レオンの死の部分に違和感があるんだ。基本的にあの話の最後の方はカヴァッロの視点で伝えられたものだった。だから、実際のその場面は見れてないってことになる。カヴァッロ以外に誰か裏切り者が居たんじゃないかなって睨んでるんだ」
「エル君にしては珍しく良い推理じゃない」
なんで僕このタイミングで馬鹿にされなきゃいけないのかしら?
「そのへんは私も気になったの。入ってくるはずの無い王国兵だったり、黒いなにかで貫かれるってところも気がかりよね」
そうそう!その部分だよ!黒い何かが何なのかすごく気にな…
あのーアティさん?ちょっと良いでしょうか?
《はいはーい?何かしら?》
僕過去に1度だけ黒い魔力ってのを見たことあるんですけど…今回のってもしかして…
《んーまだ確証は無いけど、黒い魔力が扱えるのはごく一部の存在ね。エル君もわかってるでしょ?》
あぁ…できればわかりたくなんか無かったんだけど、わかっちゃったもんは仕方ないか。答え合わせありがとうございました…
「エルくんどうしたの急に黙って顔色コロコロ変えて」
変わってましたか…そりゃ顔色も変わるわ!
「あー…えーっと。すっごく言いにくいことなんだけど、たぶんその黒いやつの正体がわかっちゃったかもしれないんだよね…」
「エルくんがすごく嫌そうな顔してるってことは…やっぱりあれ?」
どうやらヒスイも同様の推理をしていたようで、二人で嫌な顔をする。
「なんですの?その黒い何かの正体というのは」
「きっとたぶん何だけどね?まだ確証は無いと言うか…なんというか…」
「はっきりしないわね。合ってなくても可能性の話で良いわよ」
エーシェに急かされたので、諦めることに…
「たぶんその黒い何かってのは…神が関わってくる可能性が高いんだよね…」
「神…ですの?」
「この世界に居る神の魔力は人間のものとは全くの別種みたいになっててさ。ほら、僕とヒスイは思いっきり目の前で見てたからわかるんだよ」
すっと視線をヒスイに向けるとヒスイも頷く。
「僕らの魔力って基本的にあまり目に見えることは無いよね?でも、神の魔力は違う。基本的に黒いんだ。属性が無いからって説が濃厚だけど、地上の生物とは違うと一瞬でわかる」
僕らの話を聞いていたレオンハルガさんが急に立ち上がる。
「そ、それでは、私の祖先は…レオンは神に殺されたということになるのでしょうか!?」
「いえ、それは違うと思います。おそらくは、何者かが神の力の一部を借りてそれを実行したためではないかと僕は思っています。実際のところ、神様たちってあんまり人とかこの世界の生き物にそこまでの執着は無いんですよ。なんで、あの話の中で使われたのはおそらく神の力を使った何かというのが正しいんだと思います」
「そ、そうですか」
エルドナスの言葉を聞いて、レオンハルガはゆっくりと席につく。
「それじゃ、こっから会議というかこれからについて相談しようと思うんだけど。今回は4人じゃなくて2人ずつで行動しようと思ってんだけど、どうかな?」
「どうしてかしら?」
「4人で行動しようとすると、あまり効率が良くないと思ってね」
「本音は?」
僕の言葉を聞いてニヤッと不敵な笑みを浮かべながらヒスイが聞いてくる。
バレてたか…
「4箇所もこの広い国を回るのだるいからです。なんかそれっぽいこと言おうとしてごめんなさい」
「そういうことだと思いましたわ」
ほんと僕って信用ないよね!!自分で言ってて悲しくなるけど!!
「そんなわけで、僕とエーシェ、ヒスイとカミラでそれぞれの拠点を攻め落としてきてほしいんだ。前も言ってた僕らの成長のためにね。今後もいつも4人で動けるわけじゃないと思うからさ」
「わかったわ」
「りょーかーい」
「ヒスイ様とご一緒できるのでしたらどこへでも…」
ま、こーなることはなんとなくわかってたんだけどね。
「それじゃ、それぞれが攻め込む場所なんだけど、僕たちは南から、ヒスイたちは北から。それで終わったら今度は僕達が東、ヒスイたちは西を攻めてほしいんだけど、異論ある人いる?」
「無いわね」
「無いよー!」
「無いですわ」
こういうところだけは聞き分けが良くて好きだよ君たち。
「あと、それぞれ最後に現当主と戦うことになると思うから気を抜かないこと。それで勝ったら、初代の思い出の地で待つ者が居るって伝えてね。そうすれば彼らも流石にここに来ると思うから」
「それで、エルくんいつからはじめるの?」
「ん?この後すぐに行くよ?あ、そーだ。レオンハルガさんに1つお願いがあるんですけど良いですか?」
話を振られることも無いと思っていたのか、レオンハルガはビクッとする。
「きっと半月後くらいにここに4人が集まると思うんで、その時はさっきの話を聞かせてあげてほしいんです。お願いできますか?」
「それくらいなら。それより、本当に行くんですか?」
すごく心配そうにこちらを見てくるからちょっと悪い子とした気分になるなぁ。
「もう行くって言っちゃいましたからね。みんなーいくよー?」
僕の掛け声で3人が立ち上がり、外に出る。
「じゃ、ミナ。また半月後に会おうね」
「うん!」
ミナが笑顔で手を振ってくれるのを確認して僕とエーシェは馬車に、ヒスイたちは北に向かって歩きはじめ他タイミングでミナの母親に話しかけられる。
「あの…エーシェさん。少しお話があるのですが…よろしいでしょうか?」
エーシェは僕の方を見て許可を取ろうとしたので僕は無言で頷いた。同時に足を止めたヒスイとカミラにもアイコンタクトで行っちゃって大丈夫と送っといた。
「大丈夫ですよ。いかがされましたか?」
「あの…エーシェさんが先程使っていた魔法についてなのですが、あれは魔力のみで作られているのですか?」
ミナの母の言葉をエーシェは完全に理解をすることができなかった。
「それはどういう意味でしょうか?」
「あの、おそらくエーシェさんは私達エルフの特徴を強く受け継いで居ます。なので、もしかしたらエルフと同じような魔法を使うことができるのではないかと思いまして」
ほほう?エルフの魔法とな?それは興味深い!!
「その話僕も混ぜてください!!」
僕がダッシュで向かうと、そこには若干引いてるミナの母が居た。ご、ごめんなさい。
「えっと、エルフの魔法についてなのですが、どの程度ご存知ですか?」
「僕は知りません!!」
「私もあまり詳しくは…」
こういうときだけめっちゃ正直な二人である。
「エルフが単に魔法が得意というのでは無いのです。個人で発動している事が少ないからこそ他の種族の魔法よりも優れているというだけで」
「個人で発動していないってどういうことですか?」
「私達は精霊と呼ばれる世界の元素と密接に関わっている存在と一緒になって魔法を発動しているのです。例えば、先程使っていた火の魔法であれば火の精霊の力を借りれば、もっと楽に魔法を使うことができるはずです」
へぇ〜居るんだ精霊って。見たこと無いからわかんないや。
「精霊の話は聞いたことがありますが、私は認知もできないので、力を借りるのは難しいと思いますけど…」
おやおや、珍しく弱気じゃないですかエーシェさん。
「私も精霊が見えるわけではないのです。そもそも精霊は目に見える存在ではないと聞いています。中には上位精霊といって人のような姿をしたものも居ると聞いたことはありますが、それも本当に存在するかどうかが怪しいです」
へー上位精霊とかゲームみたい。僕も力借りてみたいなー。
「それなら、どうやって…」
「私達は願いを聞き届けてもらっているだけに過ぎません。強く思えば精霊はそれに答えてくれるそうです。皆さんの少しでもお役に立てばと思って」
「ありがとうございます。必要な時が来ないことを祈りますが、参考にさせていただきます」
ペコリとエーシェは頭を下げて再び馬車に向かった。
「よーし。それじゃとりあえず目指すは南だ!行くよエーシェ!」
「ふふっ。なんかエル君と二人でって久しぶりね。行きましょ」
僕らは南へ、ヒスイたちは北へとそれぞれ移動を開始したのだった。
【喧嘩じゃ喧嘩!!①〜宣戦布告してみました〜】最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
そんなわけで新展開です〜!
東西南北に別れた4匹の獣たちの子孫たちに宣戦布告をしてみました♪
さてさて、どーなるんでしょうかね〜?
エルくんは短気で仕方がないですね〜。うんうん。よくない。
そんなわけで次回からはカチコミに行きます!さーさー楽しくなって来ましたよ!
次回からエルくんチームとヒスイチームで別れてお話をやっていきますので、いつもと違うテイストでお送りできればと思ってます。
というわけで次回はエルくんチームからです!
次回!【喧嘩じゃ喧嘩!!南①〜やっぱりガス欠〜】お楽しみに!




